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2020年9月 9日 (水)

映画『オフィシャル・シークレット』

まつこです。

退職以来、たいてい自宅にひきこもっているうめぞうですが、2週に1本ほどのペースで私と一緒に映画を見に行っています。先週見たのは『オフィシャル・シークレット』(Official Secrets)。2004年、イラク戦争直前に起きた国家機密の漏洩をめぐる事件をもとにしたドキュメンタリドラマです。

イギリス情報機関GCHQの職員で、イラク戦争を阻止するために機密をリークした主人公を演じたのはキーラ・ナイトリー。ナイーブな正義感と弱さをあわせ持つ等身大の女性の葛藤を演じていて、なかなかよかったです。

でも私のお目当ては人権派弁護士ベン・エマーソンを演じるレイフ・ファインズ。

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[人権派弁護士というまっとうな役のレイフ・ファインズ]

近年、コメディやアクション映画でのエキセントリックな役柄が多いので、正義のために闘う法律家というまっとうな役柄がファンとしてはうれしい限りです。

この映画を見てあらためて感じたのは、イギリスのエスタブリッシュメントの持つジェントルマンズ・クラブ的雰囲気です。政治、司法、メディアが互いに規制や監視しあう関係でありながら、同時にその内部の人たちはエリートとしての同族意識や信頼関係を共有しています。

映画の中では内部告白者キャサリンの逮捕後、公訴局長官が弁護士エマーソンの別荘を訪ね、一緒に釣りをするという場面が出てきます。公訴する側と弁護する側が、海に向かって並んで釣りをしていていいのか?そのな原則的な疑問は、イギリスのエリートたちにとっては、キャサリンの正義感と同じようにナイーブなのかもしれません。

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[ノーフォークの地味な景色がまたいかにもイングランドらしい]

私邸のリビングのソファで、クラブの皮張りの椅子で、ウィスキーを片手に、政治家、ジャーナリスト、法律家が、くつろいだ表情で必要な情報を交換したり、秘密を引き出したりする。そうやってエリートたちが社会を動かしていることを偽善と感じる一方で、人権を保護し大義のために専門知識を駆使して戦う側もまた、そのエリートのサークルの中にいるのです。

ファインズ演じるエマーソンは人権団体リバティに属しています。リバティは1934年に設立された団体で、初代代表は小説家のE. M. フォースター。映画の中にも出てくる2004年当時の代表はシャミ・チャクラバティでしたが、彼女は40歳代でエセックス大学の総長、貴族院議員にもなっています。日本では人権団体、すなわち反エリートという図式でとらえられがちですが、権威も反権威も抱合する懐の深さがイギリスのエリート社会なのだろうと思います。

そのあたりのイギリス社会のあざとさやしぶとさを表現するには、やっぱりレイフ・ファインズはぴったりでしょう。

 

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コメント

いろいろ見逃して、「シェイクスピアの庭」しか見られなかったのですが、この時期に映画を見ると、風景一つで感情が押し寄せます。「シンドラーのリスト」のような悪役も似合いますが、きっと本当はいい人なんだろうなと思わせてくれるような(知らんけど)こんな役が見てみたい。最初の写真は、ケビン・コスナーかと思ってしまいました。いい感じで歳を重ねている俳優さんですよね。

Pukiさん、コメントありがとうございます。

初めて舞台で見たときには20代のハンサム。まさかこんなにあっけなく髪が薄くなるとは思いませんでした(涙)。今回は弁護士の役なので、裁判ではかつらをかぶっていましたが、かつらかぶっても若くは見えませんでした(再び涙)。自作ははちゃめちゃなアクション映画The King's Manです。あーあ、またヘンテコな役です(さらに涙)。

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