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2020年3月21日 (土)

歴史のひとこま

まつこです。

「知り合いが感染者と接触したため、私まで隔離措置の対象になって、家から出てはいけないと保健所職員に命じられ、出かけられなかったんです・・・」

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[シェイクスピアの時代のロンドン]

これは最近の新型コロナウイルスの話題ではありません。シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』に登場する修道僧ジョンのセリフです。ペストの流行のせいでロミオのもとに連絡が届けられず、ロミオはジュリエットが死んでしまったと思い込んで毒をあおって死んでしまいます。

シェイクスピアの時代には、ペストは何年かごとに繰り返し流行していました。シェイクスピアが生まれた1564年も、ストラットフォードの町では7人に一人が亡くなったそうです。しかし生まれたばかりのシェイクスピアは運良く生き延び、そのおかげで数々の作品がやがて世に残されることになりました。

現在、世界中で猛威をふるっている新型コロナウイルスですが、「隔離」や「イベント会場の閉鎖」はシェイクスピアの時代のペストへの対応と同じだなあと、あらためて思います。『ロミオとジュリエット』が書かれた少し前の1592年から1593年もロンドンではペストが大流行し、人口の14%もが命を落としました。もちろん人々が密集する劇場は感染リスクが高いので、閉鎖されました。役者たちは仕事がなくなり、劇団員もバラバラになってしまいます。

でもシェイクスピアはこの劇場閉鎖の期間もムダにはしませんでした。『ヴィーナスとアドーニス』、『ルークリース凌辱』という長い物語詩を書いて、パトロンの青年貴族に捧げています。数々のソネットもおそらくこの時期に書いたものと推測されています。ペストが流行ったせいで、劇作家としてだけでなく、詩人としてもシェイクスピアは大きな足跡を残せたと言えます。

黒死病、ペスト、天然痘、コレラ、結核、スペイン風邪・・・。人類の歴史は感染症との戦いの歴史でもあります。これまでも様々な「新型」の感染症を、人類は乗り越えてきました。感染症が流行ると、パニックや差別が起きてしまうのも、人間が繰り返してきた歴史です。今回の騒ぎもやがて、人類史のひとこまになるのだろうと、超然とした視点を持つことも必要でしょう。

卒業式も入学式も中止、新学期開始は延期、旅行も中止。あれこれ計画が狂ってしまった春ですが、詩人シェイクスピアを見習って、イベント自粛でできた時間をなんとか有効に使いたいものです。

 

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コメント

『ロミオとジュリエット』にもこのようなシーンがあったとは。(映画や舞台などで胡麻化してちゃんとテキストを読んでいない証拠ですね。)今回は(今回も?)文学に見る経験知に学ぶ良い機会と思います。カミュの『ペスト』も書店店頭では品切れとか。
一方、会議やイベントが減って時間があるはずなのに、全く生産性がない自分はどうしたものやら・・・?? まつこさんのご指摘通り、むやみに不安がらず、全体と遠くを見据えて、うまく過ごしたいです。

Mochaさん、コメントありがとうございます。

わざと現代風に訳しましたが、接触者は隔離するという対応も今と同じですね。十字軍、コロンブス、第1次世界大戦など、人々が遠距離を移動すると新型感染症が広まるわけで、グローバル化と感染症は連動しています。今回もヒト、モノ、カネが地球全体を縦横無尽に移動する現代のグローバル化の副産物でしょうね。まあ、経験知があっても、同じようにうろたえる、というのが人類のサガかもしれませんが・・・。ボチボチ、新学期の準備でもしましょう。

人間の反応や思考パターンは本当に驚くほど似ているのですが、決定的な違いは、ペストと新型コロナウィルスの致死率の歴然とした違い。そこに現代の病とも言うべき、いびつなものを感じる今日この頃です。。。

Pukiさん、コメントありがとうございます。

そうですね、情報に振り回されていることこそ、現代の病ですね。スーザン・ソンタグにならえば、「コロナ」というメタファーが、やたらと恐怖感を肥大させているということでしょう。しっかり食べて、しっかり眠って、免疫力高めて、平常心で暮らすことこそ肝要ですね。

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