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2019年8月

2019年8月29日 (木)

レオナルド没後500年

まつこです。

今回、ミラノに立ち寄った理由は、うめぞうに『最後の晩餐』を見てもらいたかったから。私は修復中に一度、見ていますが、今年はレオナルド没後500年でもあり、もう一度見てみたいと思いました。

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[一度に25名15分と限定されているのでゆっくり静かに眺められます。]

出発前にオンラインで予約を入れようとしたのですがうまくいかず、現地発のオプショナル・ツアーに申し込みました。日本人のガイドさんつきで、ドゥオーモやスカラ座の見学も含まれている半日ツアーです。100ユーロくらいしたのですが、ガイドさんの説明がすばらしく、満足度充分でした。

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[もともとは修道院の食堂の壁に描かれたものです]

数学的に計算し尽くされた構図の絵が、壁一面に描かれています。キリストの背後から注ぎ込むように描かれた光と、実際の窓から差し込む光が交錯して、現実と虚構が一体化した空間が完成します。この食堂にテーブルを並べ、静かに食事をした修道士たちの気配まで再現されるような気分になります。

絵の中に埋め込まれたさまざまな記号や象徴の意味をガイドさんがわかりやすく説明してくれました。「そんな値段を払ってまで見なくてもいいよ・・・」と言っていたうめぞうも、素晴らしい経験だったと興奮気味でした。

ちょっと大阪弁まじりの女性ガイドさんで、「レオナルドさん」とか「ナポレオンさん」というふうに歴史上の人物にすべて「さん」をつけます。話し方もうまいのですが、歴史上の人物がぐっと生き生きとして感じられます。(私も講義でやってみようかな。「シェイクスピアさん」とか「サッチャーさん」とか。)

『最後の晩餐』だけでなく、レオナルド没後500年のイベントは各地で行われています。たまたま泊まっているホテルの隣がアンブロージアナ図書館・絵画館で、ここにはレオナルドの手稿のコレクションがあります。図書館の一室でその手稿とともに絵画『音楽家の肖像』も展示されていました。

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[レオナルド自身も音楽家だったそうです]

身につけている服は比較的べったりと塗りつぶされている一方、顔の表情や指先や楽譜はきわめて精緻に描きこまれています。

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[眼球が動き出しそう]

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[指のしわまで描かれている]

アンブロージアナ絵画館はとても空いていてこちらもゆっくり鑑賞できます。他にもカラヴァッジオやティツィアーノなどがコレクションの中にあります。ミラノというと、ファッションの街というイメージですが、美術や歴史についての知識を深めることもできる場所だと再認識しました。

2019年8月28日 (水)

ミラノ再訪

まつこです。

ミラノに来ています。私は1997年以来なので22年ぶりの再訪です。

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[ドゥオモ前には鳩がたくさん]

古めかしい市電がたくさん走っていて、20年以上たってもあまり変わらない印象です。ドゥオモの近くにあった以前泊まったホテルの場所もすぐに思い出しました。

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[ガレリアの中は観光客でいっぱい]

ガレリアではプラダやグッチがドーンと大きな店を構えていますが、昔はもっと小さなお店がたくさん並んでいたような気がします。旅の途中でサングラスを紛失してしまって、ガレリアの中の眼鏡屋さんで見つけたD&Gのサングラスを買ったのですが、その眼鏡屋さんは無くなっていました。

22年前はひとり旅のイタリアでした。36歳・・・若かったなと、遠い記憶の中の自分が少しまぶしく思い出されました。

2019年8月27日 (火)

オルタ・サン・ジューリオでの夏休み

まつこです。

楽しかったオルタ滞在も終わりました。

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[湖を眺めるプール]

いつも夏休みの旅行はシャンブル・ドットとかB&Bみたいなところに泊まるのですが、今回はちゃんとしたホテルだったのでやっぱり快適。プールも付いていました。

よく遊び・・・

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[定期船に乗ってオルタ湖の北端オメーニャにも行ってみました]

よく食べ・・・

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[料理は想像していたよりずっと洗練されていました]

うめぞうは仕事のノルマもこなし・・・

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[湖に背を向けせっせと翻訳に精を出すうめぞう]

締め切りを抱えた夫をホテルに残して、私はちょっとお買い物も楽しみ・・・Img_28121

[英語がよく通じない店でも欲しいものはしっかり買った!]

たまたま村では3夜連続のジャズ・フェスティヴァルも開かれていて・・・

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[Niklas Winterというフィンランドのジャズ・ギタリストが来ていました]

たっぷり楽しんだので、4泊5日しかしていませんが、もっと長く滞在した気がしています。

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[夕日に輝く湖を眺めながら旅情にひたる]

人生の残された時間やほかにも行きたい数々の土地を思えば、このオルタ・サン・ジューリオを再訪することはたぶんないでしょう。名残を惜しみつつその地を離れていく切なさも旅の味わいのひとつです。

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[夜の湖に浮かぶイゾラ・サン・ジューリオ]

このあと少しだけミラノに寄ってからケンブリッジに戻ります。

2019年8月26日 (月)

オルタ・サン・ジューリオの日曜日

まつこです。

オルタ・サン・ジューリオは石と坂の村です。

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[湖側から見たオルタ・サン・ジューリオの村。小高い山がサクロ・モンテ]

古い石造りの家並みの間の細い道はぎりぎり小型車が通れる程度の幅です。

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[道も細い、空も細い]

村の中心には広場があり、そこから石の坂道を登ると聖母被昇天教会があります。日曜の朝、この教会の鐘が村に鳴り響いていたので、ミサに参加してみました。

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[サンタ・マリア・アスンタ教会]

広場からまっすぐに教会に向かう石の坂道はけっこうな勾配です。私は途中で息が切れてしまいました。立ち止まって振り向くと・・・

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[坂道の向こうにキラキラと光る湖]

登ってきた道ん向こうに朝の光を浴びてキラキラと輝く湖が見えます。坂道を登った疲れが吹き飛ぶ気分です。

ミサは当然ながらイタリア語だけなので、内容は何もわかりませんが、ひんやりとした教会の中で異国の言葉で語られる祈りの言葉に耳を傾けるだけでおのずと敬虔な気持ちになります。

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[別の日に撮影していた教会内部。強い日差しが差し込む明るい教会です]

 

 

 

2019年8月25日 (日)

オルタのサクロ・モンテ

まつこです。

例によってあまり予習をせずにヴァカンス先を選んだので知らなかったのですが、オルタ・サン・ジューリオには小高い山があり、そこはオルタのサクロ・モンテとして世界遺産に登録されている文化遺産でした。

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[小高い山の上にこのような礼拝堂が点在しています]

オルタだけではなく、北イタリアの山や湖の間にはこのような巡礼のための聖地がいくつも作られたのだそうです。そのうちの9つのサクロ・モンテがまとめてピエモンテ州とロンバルディア州のサクリ・モンティとして世界遺産登録されているそうです。

オルタのサクロ・モンテは聖フランチェスコに捧げるために16世紀から17世紀にかけて建設されたものです。ひとつひとつは小さな礼拝堂ですが、それぞれの礼拝堂のの中にさまざまなフレスコ画や彫刻が飾られています。

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[悪魔を退けるミカエル]

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[フランチェスコに教えを授けるイエス]

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[教皇の戴冠式]

どれもなかなか迫力があります。16、17世紀の人々にとっては、巡礼はこうしたドラマティックな芸術作品に触れる喜びを与えてくれるものでもあったのでしょう。

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[木漏れ日が美しく、気持ちの良い丘です]

1日目は歩いて登ったのですが、なかなか良い運動になりました。2日目は町外れからミニ・トレイン型のバスが出ていることを知り、それに乗って行きました。

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[これに乗ると10分ほどで到着。乗客は私たち二人だけでした]

遊園地の乗り物みたいなのに乗って、聖なる山に登る楽しい経験でした。

2019年8月24日 (土)

オルタ・サン・ジューリオ

まつこです。

イタリアのオルタ・サン・ジューリオという小さな村に来ています。

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[オルタ湖に浮かぶ小さなサン・ジューリオ島]

『ある天文学者の恋文』という映画の中に出てきた美しい島を見て、ぜひ行きたいと思ったのが3年ほど前。とうとうやってきました。ミラノの空港から車で45分ほどで来れます。

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[20分おきに出発すると教えられたけれど、人が集まると適当に運行している渡し船]

私たちはこの小さな島の対岸にあるオルタ・サン・ジューリオという村に泊まっています。水泳の得意な人なら泳いで渡れるところに島が浮かんでいます。

到着早々に島まで行ってみました。

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[高い石壁の向こうに修道女たちがいます。頭上のサインは観光客に静粛を求めています]

島の大半を占めるのは修道院で今も修道女たちが祈りの日々を過ごしているようです。細い道には静粛を促す標識があります。歩いて10分もあれば1周できる小ささです。

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[1日目はホテルのテラスでディナー]

この聖なる美しい島を眺めながら、1日目の晩はホテルのレストランのテラスで食事しました。地元のおいしいワインを飲みながら湖を眺めている間に、次第に日が暮れていきます。

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[夕暮れどきの湖]

美しい夕焼けが湖に映るのを眺めているうち、腰痛のことなど忘れてしまいました。

2019年8月23日 (金)

ケンブリッジできっくら腰

まつこです。

やってしまいました。ぎっくり腰・・・。動けないほどひどくはないので、うめぞうからは「きっくら腰」と呼ばれています。

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[サーモンとアボカドのオードブルは私が用意しました]

優雅なパーティのように見えますが、私は腰痛でおっかなびっくり座っています。

しかし腰痛ごときでめげてはいられない。この翌日からヴァカンスに出発です。

向かった先はこちら・・・

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[ため息が出るほど美しい]

映画で見て一度来てみたかったところです。この湖の景色を眺めながらのんびりバカンスします。

2019年8月20日 (火)

ケンブリッジ囲碁クラブ

まつこです。

囲碁は世界中で楽しまれているゲームです。ケンブリッジにも卒業生や地元の人たちがやっている囲碁クラブがあり、うめぞうと二人で行ってみました。あまりお客さんがいない、さえないパブが会場です。日曜の夜に7、8名の若者が参加していました。

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[この青年は2級と言っていましたが、日本なら3段くらいの実力]

このケンブリッジ囲碁クラブのレベルが非常に高くて度肝を抜かれました。3局ずつ対局したのですが、うめぞうはまさかの1勝2敗、私は1勝1敗1持碁(ドロー)でした。

うめぞうは4段、私は2級と自己申告したのですが、こちらの1級は日本なら4段くらいの力はあります。彼らはネット碁の国際基準の段級を使っているようです。私たちの段級はいちおう日本棋院に認定してもらっているのですが、ネット上のグローバルの基準と日本のローカルな基準の間にはだいぶ差があることを実感しました。

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[うめぞう、この対局はかなり追いつめられながらもなんとか辛勝]

写真に写っている青年は2級というので、私が最初に互先(ハンディがゼロ)でやったのですが、ぜんぜん歯が立ちませんでした。そのあとうめぞうが2子のハンディをつけて対局し、うめぞうは手こずりながらもなんとか僅差で勝ちました。うめぞうの実感では日本でなら3段は確実な実力だとのこと。

彼はGoogle Deep Mindが開発した囲碁プログラムの「アルファ碁」のニュースで興味を持って囲碁をやり始め、たった1年でここまで強くなったんだそうです。そりゃ、すごい!もの静かな青年でしたが、私が撮った写真をメールで送ったら、すぐさま礼儀正しいお礼の返信メールがありました。また来年、対局しましょう、と言ってもらいましたが、1年後には彼はさらに強くなっていることでしょう。

言葉や国籍の違いを超えて、こんな交流ができるところも囲碁の面白さのひとつです。

 

 

2019年8月19日 (月)

とてもイギリス的な

まつこです。

きれいに晴れ渡った日曜日の朝、「さあ、みんなでウォーキングに行きましょう」とジュディに誘われました。

日差しのまぶしさにサングラスまでして歩き始めたのですが・・・

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[ケム川に雨が降る]

歩き始めて5分。あれ、空模様があやしいなと思ったら、あっというまに雨が降ってきました。

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[足元はぬかるみ、行く手は牛に阻まれ]

見渡す限り緑が広がるグランチェスター・メドウズの真ん中あたりまで歩いたところで、雨は激しくなるばかり。

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[ジュディの後ろを必死についていくうめぞう]

となり村のグランチェスターにたどりついたときには、三人ともずぶ濡れでした。

ブルブル震えながら家にたどり着いたら、あれよあれよというまに晴れ上がるという皮肉な空模様。

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[変わりやすいのがイギリスのお天気]

「夜のうちに雨が降って昼は晴れたらいいのにねえ。でもそれじゃイギリス人の話題がなくなっちゃうわね」とジュディは言っていました。髪から雨をしたたらせながら、おもわず笑ってしまったた日曜日でした。

 

2019年8月17日 (土)

ストラットフォードの休日

まつこです。

こんな絵葉書みたいな風景を見ると、何度来ていても観光客の気分になります。

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[エイヴォン川に白鳥]

俗っぽい観光地になって、まるでテーマ・パークのようだと言う人もいますが、テーマ・パークに入り込んだら、あまりシニカルにならず楽しむべし。

シェイクスピアの記念碑の前で写真を撮ったり・・・

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[フォルスタッフの真似をしているうめぞう]

シェイクスピアのお墓まいりをしたり・・・

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[数十年ぶりのお墓まいり]

シェイクスピアの墓石のあるところは有料化されて以来、来たことがなかったのですが、今回は久しぶりにここまで進んで、墓碑を読んだり胸像を見上げたりしてみました。

食事も観光客風に・・・

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[懐かしさを感じるイングリッシュ・ブレックファスト]

一人だとスタバかM&Sで買ったもので済ます朝ごはんですが、今回はうめぞうと一緒にホテルでイングリッシュ・ブレックファスト。

そうなると午後はやはりクリーム・ティーです。

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[シェイクスピア・ホテルのスコーン]

アフタヌーン・ティーでカロリー摂取して、昼夜2本の観劇に備えます。

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[うめぞうはクリームが先かジャムが先か?]

夜もイギリス人の国民食です。

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[イギリス人の国民食はチキン・ティカ・マサラ]

ストラットフォードも新しいお店がいろいろ増えましたが、大昔からあるインド料理店に行きました。古めかしい20世紀っぽいお店です。

20年前とまったく同じ過ごしかたをして懐かしい気分になったストラットフォードの休日でした。

2019年8月16日 (金)

シェイクスピア3作品

まつこです。

女性の積極的活用、性的少数者および障害者の包摂・・・これはどこかの政党のマニフェストではなく、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーが今シーズン掲げたテーマです。この方針にそって演出には意欲的な試みが取り込まれていました。

まずは『お気に召すまま』。何人かの登場人物が男性から女性に変えられています。

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[終幕に突如現れた巨大なハイメンの前で踊る人々]

羊飼いの青年シルヴィアスは女性羊飼いシルヴィアになっているという具合です。そうなると美青年ギャニミードをあきらめたフィービーが結ばれるのは同性のシルヴィア。男だと思いこんで恋していた相手が男装した女だったとわかったあとで、別の同性愛者の女性と結ばれるわけです。もともとこの喜劇の特徴である男女の境目のあやうさとが強調されるのですが、うーん、ちょっとややこし過ぎるかも・・・。

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[若い頃になにかあったのかな?と思わせる暗いジェイクイズ]

人々の喜怒哀楽を離れたところから冷ややかに眺めているジェイクイズも、この演出では中年女性です。シニカルなジェイクイズも終幕の公爵との別れでは涙を流していたけど、ひょっとしてこの二人の過去には何かあったのかしら・・・?これも演出の意図がちょっとわかりかねるところでした。

お次は『じゃじゃ馬ならし』。

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[力づくで夫をならそうとするペトルーキア]

こちらは大胆に主要登場人物の性別をぜんぶまとめてひっくり返した演出です。ペトルーキオはペトルーキア、ルーチェンチオはルーチェンチアに。この二人の女性がお目当の夫をゲットするまでを描く喜劇になっています。

男が心理的および肉体的暴力で女を従わせるという展開のため、『じゃじゃ馬ならし』は「けしからん」作品と非難されることも多いのですが、母親たちに支配された母系社会に舞台設定することによって、その問題を解消しようという意図でしょう。しかしこの演出を見ていると、女から男への暴力なら許されるってものでもないのよね・・・と、あらためて疑問がわいてきました。かえってこの戯曲の問題点があらわになった気がします。

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[堂々たるコスチューム劇]

クリストファー・スライの出てくる外枠のインダクションはいさぎよく削除し、その代わりにチューダー朝に設定したコスチューム劇にすることで、物語との距離感を出していました。遠い時代の、非現実的なおとぎ話であれば、DV妻もマザコン坊やも許せる・・・かなあ?

あれこれ疑義は感じる演出でしたが、豪華な衣装に身を包んだ女性俳優陣の堂々たる演技は、さすがの出来栄え。数十年前にキャタリーナ役で見たアマンダ・ハリスが、バプティスタ役でどっしりした存在感を見せているのも嬉しかったです。

3本目は『尺には尺を』。

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[抑圧されていた性的衝動がむき出しになるアンジェロ]

もともと「問題劇」とされている劇ですが、緊張感がはりつめた暗い演出でした。なにもかも仕切ろうとする公爵はひとりよがりの権力マニアだし、欲望を抑え込んでいたアンジェロは屈折した偽善者だし、おしゃれと女にしか関心のないルーチオはヘラヘラした薄っぺらだし。ロクな男が一人もいない!

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[しっかり者のエスカラスに支えられるアンジェロ]

そんな呆れ返るしかない男性社会を支えるのはしっかり者の女。この演出ではエスカラスや典獄は女性で、良識ある職業人として描かれています。そうそう、こういう信頼できるワーキング・ウーマンがいるからなんとか社会がもっているのよね。1900年代のウィーンに舞台は設定されていますが、これは現代社会にも通じそうな真理です。

女性たちの活躍以外にも、『お気に召すまま』のおしゃべり男タッチストーンが尻をおいかけるオードリーは聾唖者で、ウィリアムが手話通訳をするとか、『尺には尺を』で婚前交渉して身ごもっちゃったジュリエットが車椅子姿で赤ちゃんを抱いて登場するとか、障害を持った俳優たちも堂々と舞台に登場していました。

シェイクスピア劇を「政治的に正しく上演」する試みを全面的に打ち出しているのが今シーズンのRSCです。その意気やよし。しかし、シェイクスピアの戯曲にはそもそもが虐げられた立場からあがる声が書きこまれている部分もあれば、ひどく差別的な言葉が吐き散らされる部分もあるわけで、そういう問題性を言葉の中から拾い上げる努力と、障害者を直接舞台に上げる意欲は、別次元のものであるとも感じました。車椅子の女優が巧みに舞台を動き回り、手話とセリフがうまくかみあうやりとりを見ていると、そこにドラマ性はあるのですが、それはシェイクスピアの戯曲の中から抽出されたドラマではない。障害を持った俳優たちが劇中の役を担うことに、何の違いも区別も感じなく日はくるのかどうか。それは今後の課題なのでしょう。

というわけで、あれこれ考えることも多いシェイクスピア3作品でした。

2019年8月15日 (木)

王政復古期の2作品

まつこです。

芝居を観にストラットフォードに来ています。まずは王政復古期の2作品から。

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[愛のない結婚でも離婚はできない時代]

ジョン・ヴァンブラは劇作家としてより、ブレナム宮殿の建築家としての方が知名度は高いかもしれません。ホイッグ党員として政治活動もし、フランスで政治犯として投獄されたことまであります。そんな多才なヴァンブラの喜劇『Provoked Wife』は愛のない結婚生活にうんざりした妻を描いています。

大酒は飲むは、暴力沙汰は起こすは、娼婦は買うは、愛情なんてまるでないケダモノのような夫。そんな夫でも別れられない時代には、若い愛人でも作るしかない。こんなグロテスクな状況を笑えるコメディにしてしまうのが王政復古期。ですが21世紀にこの喜劇を上演すると、笑ってばかりはいられない。モラハラ夫に抵抗しながら、次第 にしたたかになっていく女性の強さを強調する問題劇になっていました。

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[私が世界の中心という勘違いオバさん]

グロテスクな笑いなら任せておいてと、脇役のはずなのに存在感が際立つのは、自意識過剰、自己愛過剰、虚栄心とうぬぼれの塊のようなご婦人。ヤキモチ焼きかつ覗き見趣味で、筋の展開に絡んできます。さすがイギリス俳優の芸達者ぶりを発揮し、あっぱれな笑われぶりでした。

同じ日に見た2本目はうってかわって悲劇。トマス・オトウェイの『Venice Preserved』です。同じ王政復古期の作品でもこちらの上演は現代に舞台を設定しています。

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[サイバーパンクっぽい演出]

腐りきった権力者たちを倒そうと画策する革命家たち。しかしその革命組織も腐敗している。その絶望感をブレードランナー風のシャープな舞台で表現しようという上演でした。暴力とセックスが支配する暗い舞台でした。

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[革命に不向きな柔和な夫]

原作での主人公は愛と友情と正義の狭間に立たされる男なのですが、この上演ではその主人公が意志薄弱な坊やになっていました。その夫を叱咤したり、なだめたり、泣き落としたりして、なんとか動乱の時代を生き延びようとする妻がこの上演のヒロインです。最後はたった一人で死んでいく女の悲劇でした。

王政復古期の劇を2本見て、やっぱり21世紀は喜劇も悲劇も主人公は女なのね、と改めて認識した1日でした。

2019年8月14日 (水)

映画『イエスタデイ』

まつこです。

監督がダニー・ボイルで、脚本がリチャード・カーティス、題材はビートルズの音楽となれば、楽しめることはほぼ確実。日本でも秋には公開されるようですが、一足先に見に行ってきました。映画『イエスタデイ』です。

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[主演はヒメーシュ・パテル。相手役はリリー・ジェイムズ]

全世界いっせいに12秒間の停電。売れないミュージシャンの主人公ジャックはその暗闇の中で交通事故にあってしまう。電気が回復すると、世界の歴史が少しだけ書き換えられていて、ビートルズもコカコーラもハリー・ポッターも存在していない!昏睡状態から目が覚めたジャックだけが、あのビートルズの数々の名曲を覚えている・・・

というような奇想天外な設定でも、最後はお定まりのハッピー・エンディング、これぞロマンティック・コメディの王道です。エド・シーランが「エド・シーラン役」で登場し、主人公とソング・ライティングのコンテストを行うエピソードがあったり、ジョン・レノンのそっくりさんが登場したりして、サービス精神満載の娯楽作品。主人公がインド系の移民家庭の息子だったり、さえないサフォークの海岸の田舎町が舞台だったりというあたりが、イギリスのリアルを鮮やかに切り取るダニー・ボイルらしさが感じられるところですが、でも言われなければダニー・ボイルの作品だとは気がつかないほどの甘口映画です。

いいじゃない、ロマンティック・コメディなんだから甘口で。いいじゃない、ビートルズへのオマージュなんだからセンチメンタルで。しちめんどくさいことは言わず、エンターテインメントと割り切って、存分に楽しめばそれでいいのよ・・・と、思いながらも、「どうした、ダニー・ボイル? もうとんがった映画は撮れないのか?」と、少しだけ物足りなさも感じた映画でした。

2019年8月13日 (火)

いつもどおり2

まつこです。

どんよりとした雲のすきまにのぞくはかなげな青空。夏枯れした茶色い草木をゆらす風はすでに秋。いつもどおりのケンブリッジの8月です。

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[いつもどおりの場所で今年も記念撮影を一枚]

いつもどおりにトムとジュディの家に寄宿し、朝ごはんが終わるとカレッジの庭を通り抜けながら図書館へ。

うめぞうは翻訳の仕事をやり、私は今週観る予定の王政復古期の喜劇を読んで予習。学生がおらず人の少ない8月の図書館はしーんと静まりかえっています。学生気分に戻れる貴重なひとときです。

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[たまには中庭でストレッチ]

いつもどおりティールームで昼食をとりますが、ぼんやりした味でカロリー高めの料理も変わっていません。食事の楽しみがたいしてないので、そそくさと仕事に戻ります。おかげで仕事がはかどります。

年々歳々、訪れる人は変わっても、ケム川と同様、同じ空気がケンブリッジには流れています。

 

2019年8月12日 (月)

シュテーデル美術館

まつこです。

フランクフルトではシュテーデル美術館に行ってみました。以前、訪れたときは人気のある特別展をやっていて、長蛇の列に入館を諦めたのですが、今回はガラガラに空いていました。

入るとまず目にはいるのがゲーテの肖像画。

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[ゲーテはフランクフルト出身です]

よく知られている肖像画ですが、足が両方とも左脚に見えて絵としての評価は???

というような説明をオーディオ・ガイドで聞きながらゆっくり眺めることができます。

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[ルッカの聖母]

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[ヴィーナス]

ファン・エイクもクラーナハも至近距離でひとりじめして見ることができます。

ボッティチェリもコレクションにあると聞いていたのですが場所がわからなかったので、男性係員に尋ねたところ、「ボッティチェリ?あれ、あまり良い絵だとは思えないけどね。君があそこに立っていた方がいいよ。どこから来たの?いつまでいるの?この並びにある彫刻美術館もいいよ。案内しようか?え、夫も一緒?それは残念・・・」というような軽口たたいていました。そのくらい空いていて係員がヒマな美術館です。

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[メディチ家の誰かの愛人]

そのボッティチェリの描いた女性の肖像はうんと近づいて見た方が面白いです。

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[ペンダントに注目]

アポロンとマルシャスが音楽の腕を競っている場面を刻み込んだカメオのペンダント。

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[ゴージャスな袖]

衣装のレースや刺繍の細かさが丹念に描き込まれていてため息が出るほどです。

ほかにもレンブラントやフェルメールなどたくさんの逸品が収蔵されています。美術好きの人にはおすすめの穴場美術館です。

 

2019年8月 9日 (金)

いつもどおり

まつこです。

いつもどおり、かわりばえのしないワードローブを用意して出発。

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[4週間、ほぼこれだけでのりきります]

いつもどおり、フランクフルト空港に隣接したヒルトン・ホテルに投宿しています。

我が家は都内にありますが、羽田より成田の方がずっとアクセスが簡単。成田発のJALでヨーロッパに来ようと思うと、フランクフルトになるのです。フランクフルトからだとスタンステッドかロンドン・シティに飛ぶと、あの大混雑のヒースローを回避することができます。さらにスタンステッドからケンブリッジは車で30分ほど。日本からケンブリッジに行くには、「成田→フランクフルト→スタンステッド」というルートがおすすめです。

いつもどおり、うめぞうも一緒。

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[量が多いドイツの料理]

いつもどおり、白ワインのリースリンクとシュニッツェルがドイツでの定番夕食です。とりあえず白ワインで乾杯して旅の無事を祈念しました。

 

 

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