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2019年1月 3日 (木)

『クリスマス・キャロル』

まつこです。

ロンドンで二日目の観劇はオールド・ヴィック劇場の『クリスマス・キャロル』。劇場に入るとヴィクトリア朝の衣装の役者たちがミンスパイを配ってくれます。劇中ではおなじみのクリスマス・キャロルが生演奏で次々と流れ、本物そっくりの雪が客席にふりそそげば、いやがおうでも感傷的なクリスマス気分が劇場を満たします。

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[マシュー・ウォーカス演出で2年目の上演。主役は交代してスティーヴン・トンプキンソン]

しかしこの『クリスマス・キャロル』は原作に、より現実的な心理的説明や倫理的主張を加えたものでした。

最初の亡霊にうながされスクルージが自分の過去を省みるという展開は同じですが、この上演ではスクルージの父親の冷酷さが強調されます。借金まみれで愛情の薄い父親、過酷な学校生活、結ばれなかった恋・・・そうした辛い過去ゆえに、スクルージの心は閉ざされてしまったのだと背景が浮かび上がる趣向です。

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[愛すること、分かち合うことを思い出そうとうったえる結末]

貧困という社会問題に金融業者が責任を感じるべきかどうかという倫理を、亡霊とスクルージが意見を交わす場面もあります。

人間味のない守銭奴の改悛物語ではなく、トラウマのゆえに人を愛することができない男が自分の弱さを克服する物語へと書き直したところがこの21世紀版『クリスマス・キャロル』の特徴です。

喜びに満ちた結末のあと、最後にもう一曲クリスマス・キャロルが流れます。ハンドベルと弦楽器の静かで美しいの音色で『きよしこの夜』が演奏され、観客の心がしっとりと落ち着いたところで、「イギリスでは今日も貧困の中で満足な食事の取れない子供達がおおぜいいます・・・」と寄付を訴えるメッセージを、スクルージが読み上げます。劇場を出る観客たちは次々と募金バケツを持ったスタッフにお金を渡していきました。(私たちも少しだけ寄付しました。)

クリスマス気分をたっぷりと味わいながらも、内心、「貧困問題は緊縮財政の結果でしょう。人々の慈悲心だけじゃなく、政府の責任を問わないとダメでしょう!」とちょっと思ってしまいました。

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