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2018年12月16日 (日)

Middle England

まつこです。

EU離脱をめぐって国民がバラバラになりもはや収拾がつかない状態になっているイギリス。でもその分断はもっとずっと前から始まっていたようです。そんな現在のイギリスを理解するのに恰好の一冊はこちら。

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[今年読んだ本のなかで一番おもしろかった]

Jonathan Coeの最新作Middle Englandは、2010年4月から2018年9月までのイギリス社会の変化を、複数の登場人物の人生の変化に重ね合わせて描いた小説です。

表紙は美しいイングランドの風景画が、真ん中で引き裂かれているデザインです。タイトルの「ミドル」は、主人公ベンジャミンが暮らすバーミンガム周辺のイングランド中部地方(The Midlands)とイギリスの中産階級(Middle Class)を指しています。イギリス社会の中核ともいえるこの「ミドル」が大きく引き裂かれてしまっているのです。

リーマンショック以降の緊縮政策の影響を受けたのは、貧困層だけではありませんでした。中産階級もまた疲弊し、多文化共生や政治的正しさといった理念を受け入れる余裕のなくなった人々は、移民や知識人に敵意を向けるようになります。

過ぎ去っていった青春の日々と古い恋愛への追想に埋没していた小説家ベンジャミンも、このイギリスの政治風土の地滑り的変化に無関心ではいられません。2010年の総選挙、2011年の暴動、2012年のオリンピックと節目節目で、家族や友人の間に亀裂が走り、その裂け目は2016年のEU離脱をめぐる国民投票で決定的なものとなる・・・。

この深刻な状況を、イギリス人特有の自嘲的な笑いで突き放しつつ描いたこの長編小説はまさに「ブレグジット悲喜劇」です。ときおりニヤリと笑いながら、イギリスだけでなく、ポスト・グローバル時代をむかえつつある社会の病理の深刻さを考えることのできる一冊です。

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コメント

職業柄今めちゃくちゃお忙しい時期じゃないかと思うのですが、仕事以外の本を英語で読んでいて、さすがだなあとしみじみ感心しています。私ときたらもう!ヅカ浸りの日々を送っています。ポスト・グローバルの困難は根が深く、パンドラの箱のようです。

Pukiさん、コメントありがとうございます。

私の場合は忙しさから逃避するように、仕事と関係のない本を読んでしまうことが問題です。もはや「趣味の英文学」です。

宝塚、一度も見たことないんです・・・。ぜひご案内ください!

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