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2018年11月17日 (土)

小説Pachinko

まつこです。

ある日、BBCのラジオ番組を聴いていたら、韓国系アメリカ人作家Min Jin Leeのインタビューをやっていました。『ニューヨーク・タイムズ』で30週以上にわたりベスト・セラーになっているという話題作、そののタイトルは『パチンコ』です。

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[Min Jin Leeは1968年生まれ。7歳の時に一家でニューヨークに移り住み、イェールを卒業して弁護士をした後に作家に転身。日本には2007年から2011年まで在住]

そのタイトルからうかがえるように舞台の大半は日本。植民地時代の韓国から始まり、大阪、横浜、長野、東京と場所を移しながら、4代にわたる韓国人一家の物語が語られる長大なサーガです。

BBCの番組司会者が「日本と韓国の間にこんな歴史があったなんて知らなかったわ・・・。えっ、日本に住む韓国人は韓国人であることを隠している人もいるの?なんで?えっ、今でも差別がある?なんで?」と仰天しながらインタビューするのを聞くと、なんとも居心地が悪くなってきます。

で、読んでみました。Pachinko。500ページを超える大長編ですが、ぐいぐい読めます。英語も難しくないので、日本人にもぜひ読んでほしい作品です。

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[文藝春秋から日本語訳が出る予定だそうです。でも英語は平易なので普通の大学生くらいな英語力でも読めます]

植民地時代、戦前、戦後、復興期、バブル経済と異なった時代を背景に、ひとりひとりそれぞれの困難を抱えて生きる様が大きなタペストリーを織りなしていきます。そこに在日コミュニティの多様性と複雑さが見えてきます。

その中でも、一世として来日し、異国でひたすら実直に黙々と働きながら二人の子供を育てたスンジャという一人の女性の生き方が、悲しみをたたえながらも力強い物語としてひときわ大きな印象を残します。もっとも無力で無口な一人の女性の人生が、この長大なサーガをつらぬく一本の心棒です。

歴史という抽象的なレベルで理解していたつもりのものが、ひとりひとりの人生という具体的な物語として語られるとき、体温や匂いや手触りをもった現実として感じられるようになる。差別とは構造の問題であると同時に、個別の痛切な経験なのだと認識できる。文学の力とは、そのようなものだと、あらためて感じました。

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