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2017年8月21日 (月)

『ジュリアス・シーザー』『アントニーとクレオパトラ』

まつこです。

ストラットフォードはもう秋でした。冷たい風にエイヴォン川の水面にさざ波がたちます。長袖のセーターに革ジャンで、肩をすくめて劇場へ向かいました。

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[秋風にススキも揺れる季節です]

今回は『ジュリアス・シーザー』と『アントニーとクレオパトラ』の二本立て。大理石の彫刻に古代ローマの衣装のトーガという、いかにも歴史スペクタクルの舞台装置ですが、意外と現代的なメッセージが込められています。いずれも政治に対するシニカルな幻滅感を反映した演出でした。

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[全員がトーガを着ていると、誰が誰だかわかりにくくなるのが難点・・・]

『ジュリアス•シーザー』の一番の見せ場は、アントニーの演説。政敵のブルータスを讃える言葉を挟みながら、巧みに世論を操り、大衆のブルータスに対する憎悪をかきたてます。「印象操作」そのものです。

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[言葉巧みに大衆を煽るアントニー]

 

シーザーの遺書を読み上げて、シーザーは人民を愛していた指導者で、決して独裁者ではなかったと熱く語るものの、それは実は「フェイクニュース」。手にしているのはただの白紙で、遺書なんて口から先の出まかせです。

シーザーも暗殺すべきほどの巨悪でもなければ、礼賛するほどの人格者でもない。それなのに、なんとなく雰囲気で暴走してしまう大衆は「ポピュリズム」そのものの。独裁者を駆逐しようと反乱を起こした人たちも、すぐさま内部分裂して政治変革なんて掛け声倒れ。

面白かったけれど、政治なんて所詮パブリシティの問題よね、と古代ローマまでシラケちゃってっていいのかな?

政治が無力なら、せめて恋愛にロマンは見出せるのか・・・と思いながら、2本目は『ジュリアス・シーザー』から数年後の出来事を描く『アントニーとクレオパトラ』です。

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[黒人の俳優Josette Simonが演じるクレオパトラ]

 

自己中心的で、享楽的で、衝動的で、超セクシーで、エキゾチックで、ヒステリックで、嘘つきで、高慢で・・・とことん度し難い女性がクレオパトラ。そんな女にはまっちゃったアントニーも、お気の毒さま。

ローマに戻れば男たちの薄汚いパワーゲームの世界だし、エジプトにくればクレオパトラに精力を吸い尽くされる。アントニーが活力の輝きを見せるのは戦場だけ。それなのに戦争までクレオパトラに邪魔されてしまいます。ほんとお気の毒。

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[こんな女性に捕まったら絶対に逃げられない]

このウルトラわがまま女王クレオパトラの見せ場が、最後の自害の場面。覚悟を決めた女王が、おもむろに手を頭に置いた・・・と思ったそのとたん、カツラを外してスキンヘッドに。おおー、スキンヘッドってかっこいい!と思わせる瞬間です。

さらに次の瞬間、侍女に衣装の着替えを命じ、するりと着ていたローブをぬぎます。スキンヘッドにオールヌード。なにひとつ飾りのない肉体が神々しく輝きました。ああ、かっこいい!!

このすっくと立つ黒い肉体に、装束をひとつずつつけ、超越的な不滅の存在へと変貌していきます。「私は炎と風になる。卑しきものは捨てていく」という決め台詞。ううう、かっこいい!!!

恋愛ってやっぱり自己演出よね、と思った恋愛悲劇の終幕でした。

というわけで、古代ローマの時代劇でありながら現代的なところが面白い演出でした。

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コメント

もう10年以上前ですけど、私もスキンヘッドにカツラのクレオパトラを観たことがあります。たしか、フランシス・デ・ラ・トゥア。その時は老いを強調したクレオパトラで、なんかちょっと痛々しいものがあったのですが、定番の趣向なのでしょうか?!

Pukiさん、コメントありがとうございます。

カツラが虚栄の象徴として使われる演出は以前から時々ありますね。先日、ラジオを聞いていたら、自己表現や自己主張の手段としてスキンヘッドにする女性が増えているのだそうです。今回の演出はそのトレンドも取り込んでいるのかな、と思いながら見ていました。

今回のクレオパトラは、私にはちょっと若すぎるように思えました。「"My salad days"とか言うけど、あなたまだ若いじゃない!」と(ちょっとひがみっぽく)思ってしまった。クレオパトラはおばさんじゃないと!

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