« 足はくちほどにものいう? | トップページ | モーニング・グローリー »

2016年9月 4日 (日)

The Entertainer

まつこです。

今回はケンブリッジにひっこんでしまい、あまり芝居を見に行っておらず、1ヶ月滞在して4本だけ。4本目はジョン・オズボーンのThe Entertainer、主演はケネス・ブラナーです。

Theentertainer
[ケネス・ブラナーのタップダンスがたっぷり見られます]

1956年のスエズ危機は、イギリス人にとって歴史の転換を直視せざるをえない出来事でした。中東での利権確保をめぐって、フランス、イスラエルと密約を結び、エジプトのスエズ運河国有化に軍事介入。結果、国際世論から非難され、アメリカからは見捨てられ、ポンドは急落。大きな夕日が海に沈むように、大英帝国は世界史から消えていきました。

そんな時代に、もうひとつ消えていったのがミュージック・ホールです。陽気な歌や踊りに、観客も加わり、にぎやかで楽しい時間をすごす大衆娯楽施設でしたが、映画やラジオ、テレビの普及とともにさびれていきました。

時代に取り残されたミュージック・ホールのさえない芸人が、ブラナー演じるアーチー・ライス。金はなく、女にだらしない、二流芸人です。人生を直視しようとせず、自分でも「俺は死んでる」と言い切るダメ男の破滅ぶりと、大英帝国の終焉を重ね合わせようとする戯曲なのですが・・・

二流芸人にしてはブラナーの芸がうますぎる!スタイル良くてゴージャスなダンサーたちに囲まれて、自在に歌い踊るアーチーを見ていると、場末感が感じられないのです。カナダに移住してホテル業に転じて生計を立て直そうという話が出てくるのですが、「いやいや、この人、ラスベガスあたりで適当な仕事があるんじゃないの」と思ってしまった。

Entertainersecondlarge_trans8jwdqz1
[デイジー・・・じゃなかった、娘ジーンに、気持ちをぶちまけるダメな父親]

ミュージック・ホールにやってくる大衆を楽しませるのは、「イギリス最高!イギリス万歳!」みたいな単純な愛国歌。けれどアーチーの娘ジーンは、スエズへの軍事介入に反対する集会に参加し、新しい社会を希求する知的な女性です。おじいちゃん、おとうさん世代の時代遅れのジンゴイズムと、次の世代の違いも描かれるのですが・・・

ジーンを演じたのが『ダウントン・アビー』でヨークシャー訛りのキッチン・メイド、デイジーを演じていたソフィー・マックシェラ。あまりに見慣れているせいで、どうしてもデイジーに見えちゃう。

そういうわけで、若干、納得できない面もありましたが、いざ長いセリフを語り始めるとブラナーの本領発揮。緩急自在なセリフまわしで、アーチーの心の内側の深淵をかいま見せていました。最近は映画監督としての活動が多いブラナーですが、これからもぜひときどき舞台に戻ってきてもらいたいものです。

« 足はくちほどにものいう? | トップページ | モーニング・グローリー »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: The Entertainer:

« 足はくちほどにものいう? | トップページ | モーニング・グローリー »