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2016年8月12日 (金)

『ディープ・ブルー・シー』

まつこです。

芝居を次々見に行く気力体力にややかけるので、今年はあまりチケットも買っていないのですが、昨晩はナショナル・シアターに。20世紀のモダン・クラシック、テレンス・ラティガンの『ディープ・ブルー・シー』です。

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[ヘレン・マックロリーの演じるヘスター]

立派な優しい旦那さんがいるのに、若い元パイロットに腕を触れられたらビビっときちゃって、かけおち。でも一緒に暮らしてみたら、自分が相手を愛するほどの愛で報われることはなかった・・・

という極めて通俗小説風な設定を、ラティガンは第二次世界大戦後の保守性と時代の変化がせめぎ合う時代を背景に細やかに描いています。「サー」の肩書き通りの夫と、「RAF」(英国空軍)での青春をひきずる愛人の間で、深い海の底に引きずり込まれるような絶望を抱えているヒロイン。

ヘレン・マックロリーのヘスターはうまいし、青っぽい紗で作った共同住宅が深い海の底のように見えるステージもきれいなんだけど、やっぱり古いわ、この芝居。だって、21世紀の女性にとって、愛は「自己責任」。(男性にとっても同様か。)自分が愛するほど愛してもらえない?だったらさっさと捨てちゃえば、そんな男・・・と思いながら、見てしまった。

女性の「性」がまだタブー視されていた時代、因習と欲望の軋轢を、ゲイだったラティガンが女性に仮託して描いている芝居です。そうした屈折や緊張感がもはや過去のものになったのは、この半世紀の歴史の成果なのでしょう。

今回の演出家はキャリー・クラックネルというまだ30代の若い女性です。絶望のどん底のヒロインが、最後は目玉焼き作って食べるという演出でした。この終幕で劇がようやく時代に追いついた感じ。トーストにのせてむしゃむしゃ食べるヒロインを眺めて、やれやれと安堵しました。

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