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2016年8月

2016年8月31日 (水)

上野桜木rutschの靴

まつこです。

うめぞうから「できた!」といううれしそうなメールが届きました。

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[とりあえずスタンダードなデザインの黒い靴にしました]

67歳の誕生日のプレゼントはセミ・オーダーの靴でした。1ヶ月半ほどかかって完成しました。

紐をゆるめても簡単には足は入らず、靴ベラを使って慎重に入れます。いったん足が入ると靴全体がぴったりと足に密着して「気持ちいい」そうです。うめぞうは片方の足だけ外反母趾です。外から見るとわかりませんが、その外反母趾のところは内側がえぐれていて全然痛くないそうです。

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[足にぴったりだそうです]

取り外して他の靴に入れることもできるインソールも、足のに合わせてあわせて作ってあり、使っている間にこのインソールに合わせて立ち方や歩き方の癖が補正されるのだそうです。

上野桜木のrutschは靴とインソールの学校(塾)もやっています。店主の村山孝太郎さんは柔和な笑顔の職人さんです。職人さんらしい淡々とした話し方の中に、お客さんの足に合う靴を作る楽しさが伝わってきます。本当に好きな仕事をしているという喜びが感じられて、その様子を拝見するだけでもこちらまでちょっと幸せな気分になってきます。

手作りしてもらったものだと大切に履こうという気持ちにもなります。セミオーダーなので、普通の靴の2倍くらいなお値段でしたが、できあがってくるまでのワクワク感も経験でき、良い買い物ができました。

2016年8月29日 (月)

サウスウォルド

まつこです。

トムとジュディから「木曜日にビーチ行こう!」と誘われました。しかし前の晩から雨。朝になっても雨まじりの曇り空。

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[ケンブリッジから東に行ったサウスウォルド。午前中はまだこんな曇り空・・・]

「いったん計画を立てたら天気にかかわらず実行するのよ。天気に左右されて計画を変更していたらイギリスでは何にもできないわ」とジュディ。今にも雨が降りそうな曇り空を見上げて、私は内心ため息をつくものの、トムとジュディは「ビーチは久しぶり」となにやら嬉しそう。

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[フィッシュ&チップスと地元のエールのアドナムズ]

友人から扱っている犬を散歩させ、ブライス川をフェリー(と言ってもバイトのお兄さんが手で漕ぐボート)で渡ったり、パブでフィッシュ&チップスのお昼を食べる頃にはすっかり良いお天気。

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[色とりどりのビーチハウスが並んでいました。お昼過ぎにはすっかり青空]

潮風をあびて心地よくくたびれたところで、帰宅。庭で軽い夕食を食べたあと、トムが「まつこにお気に入りのコメディを見せたい」と言い出しました。1986年の映画Clockwiseです。

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[モンティ・パイソンのメンバーの一人ジョン・クリーズが主演]

時間厳守がモットーの校長先生が、ノリッジで開かれる会議にロンドンから向かったところ、アクシデントに巻き込まれ続け、すっかり遅刻してしまうという内容。"In the wrong place at the wrong time"という間の悪い状況を、これでもかというほどくりかえすナンセンスなコメディです。

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[若き日のペネロピー・ウィルトンも登場]

大真面目な顔でばかばかしいコメディを演じるジョン・クリーズは確かに可笑しいんだけど、こういうエキセントリックなものを面白がるのはイギリス人独特の感覚かもしれません。

「雨天決行」、「食事はシンプル」、「ナンセンスが一番面白い」というイギリスらしさをたっぷりと楽しませてもらった一日でした。

2016年8月27日 (土)

ブライトンでピンター

まつこです。

イギリスの夏だって、たまにはこんな日があります。

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[気温30度近くまで上がりました]

ここはブライトンです。

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[外観はインド風。中は中国風のロイアル・パビリオン]

ジョージ四世が摂政だった時代に作った宮殿など見学し・・・

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[タラの料理と白ワイン]

海を眺めながら遅めのランチを優雅に食べ・・・

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[1984年、保守党の党大会が開かれたときにIRAの爆弾テロがあったホテル]

豪華なグランド・ホテルに投宿し・・・

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[ブライトンのシアター・ロイアル]

ニースにしてもブライトンにしても19世紀に高級リゾート地だったところは、豪勢な建物が潮風と太陽にさらされて古びて、厚化粧が剥げかけたような倦怠感が漂うように感じられます。

ブライトンまで出かけてきたのは、ハロルド・ピンターのNo Man's Landを見るため。9月になるとロンドンでも見れるのですが、ブライトンには来たことがなかったので、観光もかねてやってきました。主演はイアン・マッケランとパトリック・ステュアート。

酒を飲み続ける老人二人のやりとりなのですが、酔いと高齢による記憶の不確かさで、言っていることがぜんぜんあてにならない。言葉のやりとりの端々は面白いんだけど、いつまでたっても状況はあいまいなまま。過ぎ去った時間も終わりかけた人生もが手探りの記憶でしかない。イライラと笑いの間の無人地帯という感じの芝居です。

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[イギリス演劇界の大御所二人]

パトリック・ステュアート演じるハーストの方が、ときに弱々しく、ときに攻撃的に、ときに紳士的にと会話の内容によって立場と表情を変えるのに、一方のイアン・マッケラン演じるスプーナーは終始自分の立場を守ろうとするフーテン老人の闖入者。二人ともうまいのは伝わるんだけど、でも言葉のやりとりのおかしみが、残念ながら理解できず、周りの観客がドッと笑うのに「え、今、何がおかしかったの?」と焦ることがたびたび。

ブライトンくんだりまできて、古めかしい劇場で、爆笑に包まれ、なんとなく虚しい作り笑いを浮かべている私の方が、ステージの上の二人より、よほど不条理な状況に置かれているんじゃあるまいか、とも感じた一夜でした。(ピンターでこういう経験するの初めてじゃないんで、ある程度覚悟していたんですけどね。コンテクストを奪い、言葉だけで笑いを起こすという手法は、外国人にはハードルが高いと改めて確認した気がします。)

2016年8月25日 (木)

エレン・テリーとスモールハイス

まつこです。

昨日から一泊二日で出かけていました。今日、行ったのはケントのスモールハイス(Smallhythe)という小さな村です。

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[Ellen Terryの愛したコテッジ]

ここにあるSmallhythe Placeと呼ばれる15世紀に建てられた家に、19世紀の大女優エレン・テリーが晩年を送った家があります。今はナショナル・トラストが管理していて、エレン・テリーの博物館にもなっています。

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[Ellen Terry16歳の時のポートレート]

エレン・テリーはヴィクトリア朝の大女優。でも建築家エドワード・ゴドウィンやシェイクスピア俳優ヘンリー・アーヴィングとのパートナー関係、2人の婚外子、3度の結婚(3度目は30歳以上年下のアメリカ人)、バーナード・ショーとの交友など、とにかく人間関係がど派手。

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[最初の夫ワットが描いた15歳のEllen Terry]

そんなエレン・テリーが成功の頂点でこのコテッジを購入し、30年近く住み、ここで亡くなりました。華やかな女優と、古い小さなコテッジのイメージが結びつかず気になっていて、前から行ってみたかったのです。

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[左の納屋は今は小さな劇場になっています。現地のボランティアさんが案内してくれるツアーに参加しました]

ガイドさんに案内されてよくわかりました。小さなコテッジじゃなくて、広大な自然に囲まれた広い敷地に納屋や小屋など6つの建物が点在。リンゴやナッツの果樹園、緑濃い池など、古い井戸など、自然の中で動植物と一体化する暮らしだったようです。

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[びっしりと藻が広がる池。でも地下で川につながっていて水はきれいなのだそうです。いろんな動物が住んでいます]

エレン・テリーはたいへん寛容な人で、この村に引っ越してくる前は、もう少し海岸沿いのウィンチェルシーに住んでいたそうですが、貧しい村で靴を満足に買えない子供がたくさんいるのを見て、村の子供全員に靴を買ってあげたそうです。何人目かの夫のには愛人がいて、その愛人や子供にもお金の提供を惜しまなかったそうです。

「太っ腹で、楽天家で、生命力が強い。」

これがスキャンダルにも関わらず、ヴィクトリア朝のスター女優として人気を博し、数々の男性を惹きつけた魅力のようです。ロンドンの石造りの街には収まりきらず、大空のもと、風の音と、太陽の光と、緑の匂いと、四季の折々の花々に囲まれ、その自然の力を吸収するような女性だったのでしょう。

付き合う男が、女ったらしだったり、生活破綻者だったり、アル中だったり、次々とダメな男ばかりだったのも、有り余る生命力のゆえかもね・・・と思いながら、気持ちの良い木陰で、「あっぱれ、エレン・テリー!」と内心喝采をあげました。

2016年8月21日 (日)

東西お茶談義

まつこです。

「お茶に来ない?」と、イギリスで誘われると、伝統的なアフタヌーン・ティを期待してしまうかもしれませんが、家によって雰囲気もさまざま。

万事、おおらかなジュディなどは、「どれにする?」とマグカップにそれぞれの好みのティーバッグをポンポン入れて、「さあ、さあ、庭に行って飲みましょ」とお気楽です。別の老夫婦は、旦那さんがお茶を入れ、お盆にのせてうやうやしく持ってきてくれます。

アンティークっぽいカップ&ソーサーを使っていても、お茶は庶民的なテトリーのティバッグで、お菓子はマークス&スペンサーのビスケットというのが、ごく一般的なところでしょう。

しかし友人のセアラ(シュールな大家さんのお姉さん)は、先日、張り切って、「伝統的なティーパーティをするから来て」と誘ってくれました。

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[このテーブルに乗り切れていないケーキもありました。全部手作り!]

エッグ・スプレッド・ブリッジ・ロール、キューカンバ・サンドイッチ、ウォルナッツ・ブラウン・サンドイッチ、スコーン、ハニー・ケーキ、クルジェット・レモン・ケーキ、リッチ・フルーツ・ケーキ、シード・ケーキ、ブランディ・スナップス、カラント・バンズ、アーモンド・スライス・・・

セアラ自身はカナダやアメリカで育っているのですが、おじいちゃんがイギリス人で、おじいちゃんの家での伝統的なティー・パーティを再現してみたそうです。もちろんお茶もリーフティ。おいしいアッサムをいただきました。

呼ばれたのはイギリス人の2人のほか、バングラデッシュ人、香港チャイニーズ、ポーランド人、そして私の6名。博識のセアラは、イギリスのお茶の歴史をチャールズ二世時代に遡って話してくれるのですが、お茶に関してはインド、中国にも豊富なヴァリエーションと長い歴史があります。(そもそもそこから簒奪輸入してきているんだし。)それぞれお国のお茶自慢。

もちろん日本も・・・と言いたいところなのですが、あいにくと無作法な私は茶道の知識がゼロ。私に代わって博識なセアラが「日本のティ・セレモニーは4時間もかかって、ひとつひとつの動作が決まっていて」と講義してくれました。皆の頭の中に「ミステリアスで奥深い国」という日本の紋切り型のイメージが浮かんだところで、つい言ってしまいました。

「大丈夫よ、そんなに正式にやらなくても。カップにパウダー入れて泡立てれば、それで飲めるわよ!」

そこからしばらく日本茶談義。「パウダーは葉を挽いたものなの?」「お湯に溶けるの?」「高価なの?」などなど、茶道を知らなくても答えられるプラクティカルな質問が出ましたが、私は内心、「やっぱりちょっとだけでも茶道やっておけばよかった・・・」と、反省していました。

ちなみに百均で買ったミルク泡だて用の小さなクリーマーでやってみたことがあるのですが、お茶があっちこっちに飛び散って大変でした。やはり茶筅を使うべし。

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[ケム川に白鳥もいる]

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[牛もいるグランチェスター・メドウズ]

お茶会が7時過ぎに終わった時には、「この摂取カロリーをなんとかせねば」と、隣のグランチェスター村までウォーキングしてきました。片道20分、これじゃあ、あのお菓子の分のカロリーにはおよそ及びません。夜遅くまでぜんぜんお腹が空きませんでした。イギリスの伝統的アフタヌーン・ティの迫力を感じた午後でした。

2016年8月20日 (土)

気楽な独身生活

ひさびさにうめぞうです。

まつこも含めてうめぞうのことはすっかり忘れている読者がほとんどだと思うが、ときどき、ひとりじゃ不便でしょ、まつこさんがいないとうめぞうさん、寂しくて病気になるんじゃないの、と心配してくれる方もいる。よほど女房頼りの情けない男と思われているらしい。まあ事実としては否定もできないが、一人暮らしにはそれなりの気楽さと楽しさもある。

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[鬼の居ぬ間に・・・(イラストはネットから拝借)]
まつこの話だと、仲の良い夫婦ほど、配偶者に先立たれてから再婚までの期間が短いそうだ。あんなにおしどり夫婦だったのに、奥さんが亡くなられて一年もしない間に若い奥さんをもらって、と非難がましいことを言う人をときどき見かける。しかし、リベラリストのうめぞうから見ると、こんな非難は的外れだ。まつこを愛しているうめぞうなどは、自分がいなくなったあと、ひとりで寂しい思いをさせるのはしのびないから、次の日からでも慰めてくれるボーイフレンドが近くにいてくれて、できればさっさと再婚してほしいと、素直に思う。いや、次の日と言わず、ちょっと前からでもいいかもしれない。愛しているがゆえに離別が悲しいという面があることは否定しないが、深く愛している方がじつは離別には強い。むしろ、離別後に、もっと優しくしておけばよかったと後悔することの方が、人を弱くし、孤独を耐え難くする。愛情生活を心の底から楽しむことと、孤独を心の底から楽しむこととは矛盾しない。むしろ片方は、もう片方のための必須の条件といっていい。
さて、そんなことで、うめぞうの一人暮らしは、囲碁と卓球、オリンピック観戦に映画鑑賞と、たまっている仕事をそっちのけで趣味三昧の毎日。オリンピックについては、いろいろ書きたいことがあるが、おきまりの国威発揚風トーンを感じさせない若い世代が少しずつ増えてきているのがよかった。楊逸さんが東京新聞のコラムに書いていたが、100メートル女子背泳ぎで銅メダルをとった傳園慧選手は、準決勝を通過して決勝に進むことになったとき、「全力を尽くして満足している、決勝戦に期待することは何もない」とインタビューで言い放ったそうだ。無邪気で明るいこの選手が使った「全力を尽くした」という表現、「我已用了洪荒之力」という表現は、今、中国メディアで大流行しているそうだ。

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[中国にも新しい世代のオリンピアン登場]
五輪憲章の第一条6項を見ると、「オリンピック競技大会は、個人種目または団体種目での選手間の競争であり、国家間の競争ではない」と明確に書いてある。国歌を大声で歌えないような選手には五輪出場の資格はない、みたいなことを言った政治家には、まずはこの憲章を読んでもらいたいものだ。銀メダルをとった400メートルリレーにも、柔道にも、ハーフの選手がいた。オリンピックの女子卓球選手は多くが中国出身の帰化選手だ。オリンピックが国籍の違いを強化するのではなく、相対化する方向に向かうなら、こうしたイベントにも意義はある。普遍主義のもとでの多様性を尊重し、少数者の権利を守りぬく国こそが21世紀には、経済的にも文化的にも豊かになっていく。

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[「あの日の声を探して」より]
映画鑑賞の方は、昨日、ミシェル・アザナヴィシウス監督の「あの日の声を探して」を見た。ソファーの前に、自分で作ったつまみをならべて、映画を見ながら夕食をするというようなことは、まつこがいたら、絶対に許可されない。これも一人暮らしの贅沢な楽しみだ。映画はロシアのチェチェン侵攻のさいの悲劇を、静かに、抑制された言葉と映像で、しかし容赦なく、リアルに描いた名作だった。戦争孤児となる少年役を演じたママツィエフの抑制された悲しみの表情や演技はまさに圧巻で、これが演技だとはとても思えない。監督の奥さんでもあるベレニス・ベジョも素敵だ。
というわけで、まつこさん、どうぞご安心を。うめぞうも、夏休みを十分楽しんでいるので、ケンブリッジではお気兼ねなく、思い切り羽根を伸ばしてきてください。

2016年8月19日 (金)

お土産

まつこです。

一昨年1年の在外研究でアカデミックなネットワークはろくに作れなかったのに、地元には妙に馴染んでしまった私・・・。日曜日にここに来てからほぼ毎日、ティーだ、ディナーだ、なんだかんだと、お呼ばれ続き。

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[「マリーゴールド・クラブ」と密かに名付けている熟年夫婦3組]

そのためケンブリッジに来るときのスーツケース半分はお土産ということになっています。これまでの私の経験で比較的喜ばれるお土産は・・・

1.ウェストの「リーフパイ」
2.抹茶風味のカステラ
3.麻布十番の「たぬきせんべい」、小倉山荘の「おかき」

ウェストの「リーフパイ」はイギリス人にとっての「パイ」のどっしりとしたイメージを裏切る軽さ。「まあ、繊細!やっぱり日本のお菓子だわ〜」と感心されます。抹茶風味のカステラは「緑のケーキ」というのが驚きみたいです。「ピスタチオ?え、グリーンティー!やっぱり日本のお菓子だわ〜」と感心されます。小さめのおせんべいやおかきの類は、食前酒のおつまみにちょうど良いようです。「ひとつひとつ袋にはいっているのね。やっぱり日本のお菓子だわ〜」と感心されます。

ほかにはヨックモックの「シガール」とか、抹茶風味のキットカットもウケました。以外とダメなのが京都の老舗の高級和菓子みたいな、本格的なもの。甘いとしか感じないようです。またグリーンティーが流行っているとはいえ、お茶といえばティーバッグしか念頭にないので、一保堂のお茶などはありがたみがわかってもらえません。

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[キングズ・カレッジのガーデンが『お気に召すまま』の舞台。みんなピクニック気分]

昨晩はケンブリッジの夏恒例のシェイクスピア・フェスティバルの出し物のひとつ、『お気に召すまま』に誘ってもらいました。トムとジュディの友人たち、いつもの仲良し3組の夫婦に囲まれて、ワイン、サンドイッチ、お菓子持参で、ピクニック気分の気楽な観劇です。

途中の休憩で抹茶カステラを食べ、大いに盛り上がっていました。芝居が終わる頃には満月が、煌々と照らす夜道を、またワイワイおしゃべりしながら帰ります。「まつこ、いつまでいるの?え、9月までいられるの?それは良かったわ!」と嬉しそうに言ってくれます。この人たちがいる限り、ケンブリッジに来るときはいつも「帰省土産」をどっさりもってきたい、とあらためて思った夜でした。

2016年8月17日 (水)

下宿生活

まつこです。

日曜日からケンブリッジに滞在しています。

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[いつも変わらぬ風景]

今回は友人の弟の家に下宿しています。

一昨年までお母さんと二人暮らしだったのですが、お母さんが亡くなって一人暮らしになりました。仕事していないし、年金をもらうにはまだ早いので、下宿人を置いて生活の足しにしたいと聞いていました。「まつこ、誰か日本人研究者で単身でケンブリッジに滞在する人がいたら紹介して」と、お姉さんから何回か頼まれていたのですが・・・。

この大家さん、心優しい人なのですが、人とのコミュニケーションがあまり得意じゃありません。こちらから話しかければ応えてくれるのですが、自分からはほとんど話しをしないタイプです。

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[ごく典型的の住宅街のごく典型的な家の一軒に下宿しています]

そのため彼との二人暮らしは、ちょっとぎこちない感じです。掃除もあまり得意じゃないので、キッチンとか居間も散らかっているんだけど、私が片づけようとすると、大家さんがうろたえ始めちゃうのです。お姉さんが一軒はさんで隣に住んでいるからあまり心配はないのですが。

美術、特にシュール・リアリズムに興味を持っていて、人名、地名、年号などについては驚異的な記憶力を見せるという面も持ち合わせた、超個性派です。

『ノッティングヒルの恋人』はヒュー・グラント演じる主人公が、離婚後、お金がなくてヘンテコな下宿人をおいているという設定でした。状況はぜんぜん違うんだけど、あのエキセントリックな雰囲気をちょっと思い出しています。

2016年8月15日 (月)

アフリカの『ハムレット』

まつこです。

「めっちゃ、おもしろかったっすっ! おれ、シェイクスピア、はまったかも。先生もぜったい見に行ってくさだいよ」と学生に言われたのが、今回の『ハムレット』。いまどきの若者はどういうシェイクスピア上演を面白がるのだろう、それが知りたくてストラットフォードまで日帰りで出かけました。

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[アフリカン・アートみたいなハムレット]

キャストはほとんどが黒人、鮮烈な色彩と弾けるリズム。ガーナあたりに設定された、アフリカンな『ハムレット』でした。

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[カメレオンのように表情がくるくると変わる複雑なハムレット]

主人公を演じたPaapa Essieduがうまい。ウィッテンバーグ大学で学位授与式に出たところで、突然、故国から悲報が届き、急遽、帰国したハムレット。ヨーロッパで自由な大学生活を送っていた若者は、軍事独裁政権化で国王暗殺が起きた故国で強烈な異文化体験をすることになります。戸惑い、怒り、愛憎、皮肉・・・と、複雑な思いがさまざまに混じり合う主人公を軽妙に演じていました。

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[アフリカンの『ハムレット』は極彩色の世界]

この濃厚な異文化の世界に呼ばれた学友は、男女の白人二人。ヒースロー空港の売店で買ったようなショートブレッドと紅茶をお土産に、お気楽にやってきた二人は、異国情緒を楽しもうとする上から目線の観光客気分まるだし。

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[アフリカっぽいファッションも楽しむ観光客気分のお二人様]

ギルデンスターンを女性にし、いかにも如才なく立ち回ろうとする小狡さをうまく演出していました。イングランドで殺されちゃったという知らせを聞いても、ぜんぜん同情する気になれません。黒人に対する白人のぬぐいがたい優越感をうまく利用した演出です。

という具合で、大胆な設定がほぼうまくいった演出なのですが、セリフの中に「デンマーク」という言葉が出てくるたびに、やっぱり違和感があるのはいたしかたなし。そんなズレを無視して、激しいリズムと極彩色のエキサイティングな空気に素直に身を委ねるのが、いまどきの若者の感性なのかもしれません。

2016年8月14日 (日)

クイズ(続編)

まつこです。

久々のストラットフォード・アポン・エイヴォンです。

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[いつものこの景色、やっぱりきれい]

ではここで久々のシェイクスピア・クイズ。

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[幕開けのセット]

今日、見に行ったのは『ハムレット』。今回の演出は、大学の学位授与式でハムレットが学位を受ける場面で始まりました。舞台中央に天井から垂らされた布に、大学名が記されていました。

第1問目はこれ。ハムレットが出たのは何大学でしょうか。

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[これもいつもの景色。土曜日だったので、のんびりくつろぐ人たちが劇場前の芝生にたくさんいました]

第2問です。

現在のロイアル・シェイクスピア劇場は2007年から大規模な改修がされ、2010年にオープンしました。けれど、この写真に見える部分の外壁は古い劇場のファサードを残して利用しています。

1926年にメモリアル・シアターが火事で焼失したため、新しい劇場が建てられました。その1932年の劇場の外壁が今日も使われているわけですが、作られた当初は「ぶっきらぼうな見た目で工場のようだ」と評判が悪かったそうです。

その1932年の劇場の設計者は男性でしょうか、それとも女性でしょうか。

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[Hide not thy poison(毒を隠すな)と書いてあるコースターを使って何を飲む?]

第3問です。

劇場内のお土産屋で、シェイクスピアの戯曲からの引用が印字されているコースターを買いました。

Hide not thy poison with such sugar'd words.
甘言では毒の苦さは隠せぬぞ

何の芝居、誰のセリフでしょうか。

2016年8月12日 (金)

『ディープ・ブルー・シー』

まつこです。

芝居を次々見に行く気力体力にややかけるので、今年はあまりチケットも買っていないのですが、昨晩はナショナル・シアターに。20世紀のモダン・クラシック、テレンス・ラティガンの『ディープ・ブルー・シー』です。

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[ヘレン・マックロリーの演じるヘスター]

立派な優しい旦那さんがいるのに、若い元パイロットに腕を触れられたらビビっときちゃって、かけおち。でも一緒に暮らしてみたら、自分が相手を愛するほどの愛で報われることはなかった・・・

という極めて通俗小説風な設定を、ラティガンは第二次世界大戦後の保守性と時代の変化がせめぎ合う時代を背景に細やかに描いています。「サー」の肩書き通りの夫と、「RAF」(英国空軍)での青春をひきずる愛人の間で、深い海の底に引きずり込まれるような絶望を抱えているヒロイン。

ヘレン・マックロリーのヘスターはうまいし、青っぽい紗で作った共同住宅が深い海の底のように見えるステージもきれいなんだけど、やっぱり古いわ、この芝居。だって、21世紀の女性にとって、愛は「自己責任」。(男性にとっても同様か。)自分が愛するほど愛してもらえない?だったらさっさと捨てちゃえば、そんな男・・・と思いながら、見てしまった。

女性の「性」がまだタブー視されていた時代、因習と欲望の軋轢を、ゲイだったラティガンが女性に仮託して描いている芝居です。そうした屈折や緊張感がもはや過去のものになったのは、この半世紀の歴史の成果なのでしょう。

今回の演出家はキャリー・クラックネルというまだ30代の若い女性です。絶望のどん底のヒロインが、最後は目玉焼き作って食べるという演出でした。この終幕で劇がようやく時代に追いついた感じ。トーストにのせてむしゃむしゃ食べるヒロインを眺めて、やれやれと安堵しました。

2016年8月11日 (木)

旅のワードローブ

まつこです。

いつものロンドン。いつもの曇天。

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[いつものテムズ川]

先日、読んだ『大人のおしゃれDo&Don't』に、旅に持って行く服のことも書いてありました。旅の間は、毎日、同じ人に会うわけじゃないから、毎日同じものを着ていても構わない、念のためのワンピースなんか持たなくてよい・・・というような趣旨です。

先達のアドバイスは素直に聞く方なので、そのとおり最小限度の服だけ持ってきました。

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[出発時に着たものも含めて全部でこれだけ。デニムはスリムとボーイフレンド、ストリングのイージーパンツ、カットソーのワンピース、Tシャツ3枚、カーディガン2枚、薄手セーター1枚、長袖カットソー2枚、ライダース・ジャケット、ストール3枚。これだけで1ヶ月過ごせるか?]

確かにこのくらいカジュアルな服装の方が浮かないと実感。世界どこでも女性たちの服装がカジュアル志向。サウスケンジントン、チェルシー界隈も、若い女性たちはもちろんのこと、マダムたちもデニムにペタンコサンダルかスニーカーで軽快に歩いています。

今日のロンドンの最高気温は19度くらい。9月になるとそろそろ肌寒い日もあるからと持ってきたレザーのジャケットがすでに活躍しています。予測のつかないイギリスの夏の天候ですが、暑くなってジャケット脱げばTシャツ。ちょっと涼しければカーディガンを羽織るだけ。こりゃラクチンでいいわ〜。

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[こういうきれいな住宅街をカジュアルな服装で軽快に歩くのがチェルシー流マダム]

上述の『大人のおしゃれDo&Don't」によれば、旅に持って行った服だけ残して、あとは捨ててもよい、そのくらいな気持ちでワードローブを絞り込めとのこと。帰国したら、あれも、これも、潔く捨ててみようかな・・・と、思い巡らしています。

2016年8月10日 (水)

フランクフルト・エアポート・ヒルトンの蛇口

まつこです。

昨日、フランクフルトで一泊しました。フランクフルト・エアポートのヒルトン・ホテルです。

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[ポストモダンな建物のフランクフルト・エアポート・ヒルトン]

去年の12月にもここを使って、空港から歩いてチェックインできるし、まだ新しいからきれいで気持ち良いのですが、デザインがちょっと凝りすぎ。

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[これがThe Squarireの外観。スペルミスにあらず。Squareとairを一緒にした造語だそうな]

オフィス、ホテル、駅が一緒になった複合施設のThe SquaireはちょっとSFっぽい雰囲気の建物です。ゲルマン的潔癖さをもって、あらゆるところに、近未来的なデザインが使われています。

洗面所もこのとおり。

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「鏡の中に鏡が浮かんでいるように見える洗面所]

蛇口まで徹底的にそぎ落としたデザインになっていますが、しかし、この蛇口のつかいにくいこと。指でつまんで回すのですが、突起もデコボコもないすっきりしたデザインのせいで、まわしにくいのです。

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[こんな使いにくい蛇口は他にはないでしょう]

手や顔をあらって指に石鹸がついていたらぜったいに回せません。ドイツのものづくりって、機能美が持ち味だったはず。それが見た目がカッコよければ、使い勝手は二の次なんて、ドイツらしくない!

妥協を許さぬゲルマン魂が間違った方向に進むとロクなことはない・・・と思いながら、ツルツルピカピカの部屋で一泊してから、ロンドンにやってきました。

2016年8月 2日 (火)

大人のおしゃれ

まつこです。

「オバサンでおしゃれに見える人、見えない人」という帯の惹句につられて買ってしまった、『大人のおしゃれDo!&Don't』。スタイリスト地曵いく子と漫画家の槙村さとるの対談です。「ババア上等!余計なルールの捨て方」という、辛口の副題が示すように、60歳を迎えた二人が堂々の開き直りっぷりで、ズバズバとオバサンのおしゃれについて語っています。

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[マニュアル世代。読んだらすぐ実践。この本ですすめられていたJames PerseのTシャツ、さっそく買ってきてしまった]

確かに50歳を超えると何を着たらよいのかわからない。ファッション雑誌をパラパラとめくってみると、元JJモデル賀来千香子や黒田千永子が活躍していますが(二人とも私と同い年)、そのまま参考にはならない。黒田千永子は鎌倉あたりのギャラリーでアート観賞していそうな服装だし、賀来千香子はカルティエとかエルメスのお得意様向け展示会にで微笑んでいそう。二人とも労働している気配がないのです。

こちとら重いバッグに本やらPCやら詰め込み出勤し、会議だ、書類だ、講義だ、セミナーだ、なんだかんだ・・・で化粧直しの余裕すらないまま矢のように過ぎる日々。50代用ファッション雑誌といっても、HERSもeclatも心(と財布と時間)にゆとりのあるマダム向けで参考にならない気がします。かといって、無難なスーツを着れば地味にくすみ、ちょっとエッジの効いた服を着れば若作りで浮き、ああ、私何を着たらよいのと、途方にくれるのが50代半ばの働く女。

そんな迷えるオバサンの心にストンとくるアドバイスが、この『大人のおしゃれDo & Don't』にはいくつもありました。そのひとつが「お金の使い方を変えろ」というもの。

ブランド物やここぞという時のためのドレスなんて、人生の残った時間を考えれば着る機会なんてそれほどない。それだったら毎日着るTシャツやストッキングを上質なものにすべし。肌触りが良いものを着ていると、自尊心が上がる。この年になると誰もほめてくれないんだから、自分で気分をあげよう。下着もいいものを身につけよう。すっかり大人の女性にとって、男性に見せるための勝負下着ではなく、救急隊員に見られて恥ずかしくないものを身につけるのが、「いざというとき」のための心得。

フムフム・・・と納得しながら一気に読んだ私は、「これだわ!今はやっぱり洗練されたカジュアルよね!上質なTシャツ一枚でぐっと気分があがるんだわ!」と、さっそく丸の内のジェームズ・パースに行ってTシャツをまとめ買いしてきました。ついでにゆったりしたイージーパンツも合わせて購入。気分はすっかりサンタモニカあたりのマダムです。

しかし・・・

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[やっぱりアジア人のおばさんが着るとイージーパンツはモンペ風になる・・・]

「余計なものはもりこまない」というアドバイスに従ってあっさりコーディネートしてみたところ、うめぞうに「ベトコンか?帝国主義粉砕って感じだな」と言われてしまいました。確かにそっけないTシャツにモンペ風イージーパンツにペタンコ靴だと、モンスーン亜熱帯で農耕するおばちゃんに見える。

うーん、大人のおしゃれは難しい。

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