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2016年1月 6日 (水)

ウエスト・エンド

まつこです。

昨日と今日は二晩続けてウエスト・エンドで観劇。今回は比較的ぎりぎりにイギリス滞在のスケジュールを決めたので、ジュディ・デンチの『冬物語』やドミニク・ウエストの『危険な関係』などはチケットが取れなくて残念だったのですが、それでもイギリスらしい芝居を十分に楽しめました。

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[古き良き時代の名残のヘイマーケット劇場]

昨日、見たのはMr. Foote's Other Leg。18世紀の劇作家、役者、劇場経営者サミュエル・フットという実在の人物の強烈な個性を、アメリカ独立、ジョージ三世の即位、奴隷の解放、シェイクスピア人気の盛り上がりなど、歴史背景に絡めながら描いています。

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[シェイクスピア俳優ギャリック、女優ペグ・ウォフィントン、近代外科学の父ジョン・ハンターなど周りも個性派ぞろい]

女装好きで、ゲイで、進取の気性に富む経営者、乗馬の事故で片足を切断してもなお舞台で乾いた笑いを呼び起こし続けた喜劇役者・・・こんな複雑な人物を演じたのはサイモン・ラッセル・ビールです。

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[インパクトの強いビールの女装]

ずんぐりとした体躯とギョロリとした目で登場するだけで滑稽なのですが、それが一瞬にして心の内側にある絶望をかいまみせる。狂気とすれすれの笑いがグロテスクな魅力になっています。

フットはヘイマーケット劇場の経営者でした。政治的な規制や社会的な批判をかわしながら劇場を経営し続けたフットのしたたかさを描くことで、この劇は芝居に対するオマージュにもなっています。

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[こちらはギャリック劇場のケネス・ブラナー率いるHarlequinade]

同じように演劇にとりつかれた男を演じたのがケネス・ブラナー。ギャリック劇場は今シーズンケネス・ブラナーが主演・演出をするケネス・ブラナー・シアター・カンパニーの拠点になっています。「芝居のことしか考えられない世間知らずの俳優兼マネージャー」が主役の笑劇テレンス・ラティガンのHarlequinadeを、この特別シーズンのレパートリーに入れたのは、ブラナーのサービス精神旺盛な遊び心でしょう。

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[何を言われても上の空。芝居のことしか考えられない役者バカを演じるブラナー]

 

中年俳優夫婦が若作りをして『ロミオとジュリエット』を上演しようとしているところに、主演俳優の娘だと名乗る女性が現れ、孫までいることが判明。自分が離婚したものとばかり思い込み、重婚の罪を犯していたことさえ気づかなかった役者バカ・・・

このように笑止千万な筋書きなのですが、こういう笑劇は戯曲の内容ではなく、役者の「芸」を見るもの。タイミングの巧みさ、笑わせる手加減など、ブラナーの喜劇役者としての勘の良さが引き立ちます。

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[All On Her Ownで中年女性の孤独を演じ、直後にダブル・ビルの笑劇でたっぷり笑わせてくれたゾーイ・ワナメイカー]

周りの役者もみなうまい。老女優役のゾーイ・ワナメイカーはHarlequinadeの前に、一人芝居のAll On Her Ownをやりました。死んだ夫に話しかける未亡人の役なのですが、誇り高い妻と北部出身の実直な夫というズレのある夫婦の対話をモノローグでやって、中年女のヒリヒリするような孤独を浮かび上がらせていました。

昔ながらの古い小さな劇場で、役者たちがカーテン・コールで手をつないで挨拶するのを見て、古き良き時代のイギリスに遡った気分になったひと時でした。

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