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2015年8月 5日 (水)

Universal Threat

まつこです。

8月から9月にかけてはケンブリッジで過ごす予定だったのですが、昨日、JALに電話をして、フライトをキャンセル。この夏は健康回復がまずは先決です。

というわけで、老眼鏡かけて、エアコンの効いた部屋に閉じこもる夏です。読みたくないものを無理して読むとストレスがかかって身体に悪そうなので、読みたいものだけを読むことにしました。

[『日本語が亡びるとき』(2008)は小林秀雄賞受賞の話題作でした。今年1月にコロンビア大学出版会から英訳が出版されました]

6月19日付の「タイムズ文芸付録」に水村美苗『日本語が亡びるとき』の英訳The Fall of Language in the Age of Englishの書評が掲載されていました。水村美苗ファンとしては読まないわけにはいきません。

書評者は村上春樹の英訳で知られているハーバードのジェイ・ルービン。タイトルは"Universal threat: The sturugglesof Japanese literature against its own internal handicaps and the advance of English."

『日本語が亡びるとき』はこのブログでも取り上げたことがありますが(「古い机」2008年12月30日)、英語も日本語もひっくるめて日本の言語教育の無為無策ぶりを痛烈に批判する鋭さが痛快でした。ファンタジー文学がハリウッド映画などを通してグローバルな市場で売れているのは、善悪が戦う大きな物語の枠は言語不要だから、という説にも納得しました。

日本語と日本文学を守るために日本人に向けて檄を飛ばした本でしたが、これが英訳されると、いわゆる「英語帝国主義」への挑戦と受け止められたようです。評者ジェイ・ルービンは水村が日本語の特殊性だけをことさら強調しすぎているのではないかと保留をつけながらも、英語のみを使ってナイーブな自己満足にひたっている人々のには見えないものがあるという点では、共感を示しています。

ただ、世界共通語としての英語による帝国主義的支配というと、英語そのものが持つ複雑な豊かさが見落とされてしまうきらいもあります。英語だけしか使わない人々にも他言語話者には簡単に理解できない文化や文学の蓄積はあるわけで、その点では日本語であれ、英語であれ、同じ問題に直面しているように思います。インターネットによる書き言葉の質の変化とか、テクノロジー万能の時代の思考スパンの短さとか、"Universal threat"に脅かされているのは、日本文学だけじゃなくて、英語文学だって同じじゃないでしょうか。

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