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2015年3月13日 (金)

レイフ・ファインズの『人と超人』

まつこです。

休憩を含めて上演時間3時間半の長丁場。その半分以上を一人の男が思想信条をベラベラ、ベラベラしゃべり続ける・・・。いかにもうんざりしそうな芝居ですが、でもレイフ・ファインズ主演となれば、見に行かないわけにはいきません!

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[バーナード・ショー『人と超人』(1905)はめったに上演されることのない戯曲です]

3月10日にはうめぞうも誘って、ナショナル・シアターで、ジョージ・バーナード・ショーの『人と超人』を見ました。3時間半で確信したのは3つのこと。

その1、レイフ・ファインズは「おしゃべり男」も流麗に演じる

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[劇の冒頭、BBCラジオの長寿番組Desert Island Discsのナレーションが流れ、ジャック・タナーは作家・思想家として紹介されます。進歩的知識人としての自負があるジャックは、誰に対しても自分の信念を滔々としゃべり続けます]

あのなめらかな声と口調であれば、くどいおしゃべりも耳に心地よく聞こえてきます。第1幕、第2幕、第4幕では、女がいかに欲深い生き物であるか、そこからいかにして逃れるかを、延々しゃべり続けるのですが、バーナード・ショーの台詞の理屈っぽさを、レイフ・ファインズは流麗に聞かせてくれます。(そういえば25年ほど前に初めてレイフ・ファインズを見たときも、『恋の骨折り損』のビルーンというおしゃべり男の役でした。一見、無口な役が似合いそうなレイフ・ファインズですが、意外とおしゃべり男の役がはまります。)

その2、レイフ・ファインズは意外と「コミカル」

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[女の欲深さを見抜いていたつもりでも・・・]

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[どこまでいっても女の発する力から逃れられないのが定め]

レイフ・ファインズが演じたジャック・タナーは、女の生命力の過剰さを冷ややかに分析し、イギリスの社会道徳の偽善をあざ笑う男です。自らの知性に絶大な自信を持っている男が、実際は女の心理をまったく理解しておらず、結局は女の手のひらの上で踊らされているだけ・・・。レイフ・ファインズは、こういう男の幼児性を真面目な顔で演じます。ちょっと神経質な表情と身体の動きが、妙にコミカル。(『グランド・ブダペスト・ホテル』で、レイフ・ファインズ、コメディではじける快感をおぼえたのかも。でもまたロマンティックな役もやってほしい・・・。)

その3、レイフ・ファインズはやっぱり「コスチューム」が似合う

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[夢の中でドン・ジョバンニとして登場するレイフ・ファインズ。地獄で悪魔と議論をするという展開ですが、すっきりとしたガラス張りの舞台で、色の変化だけで地獄を表現するスタイリッシュなデザインでした]

今回のナショナル・シアターの『人と超人』は時代設定を現代に変えていました。レイフ・ファインズ演じるタナーも現代服でスマホを手にし、ジャガーのスポーツ・カーで女から逃げ出します。しかし第3幕で眠りに落ちると、夢の中ではドン・ジョバンニになっています。女から逃げ出したタナーが夢の中で、女ったらしのドン・ファンになるというアイロニカルな展開です。モーツァルトのオペラのように18世紀の服装です。レイフ・ファインズは時代劇の服装の方がずっと似合います。逆に現代服のデニムが妙に似合わない。レイフ・ファインズの演技スタイルは、虚構性の高い戯曲に合っているのでしょう。(いくら虚構性が高いとはいえ『ハリー・ポッター』のヴォルデモートみたいなのはもうやらないでほしい・・・。)

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[久しぶりにレイフ・ファインズの舞台を見れて興奮気味の私]

というわけで、3時間半、たっぷりとレイフ・ファインズの演技を堪能でき、ファンとしてはご機嫌な一夜でした。

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[時代を超えてバーナード・ショーと意気投合した気分になり興奮気味のうめぞう。テムズはやっぱりいいなあ・・・と感慨にふける]

観劇後、うめぞうは「やっぱり女の人からは逃げられないんだね!無駄な抵抗はしないほうがいいね!」と妙に興奮した口調で語っていました。

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コメント

まつこさま

お久しぶりです。
『人と超人』私も先週見ました。例年の出張が丁度良い時期に重なったので、とてもラッキーでした。ついでにストッパードの新作も見られました。
例年気が重い出張ですが、今回ばかりは大きなエサにつられました。

ショウガネコさま、コメントありがとうございます。

タイミング良く、両方ともご覧になれてよかったですね!そういえば2年近く前にご一緒した『エドワード二世』の演出家がケンブリッジの講義にゲスト・スピーカーとしてやってきました。「時代設定」から入る演出はナンセンスだ!と言っていましたが、今回の『人と超人』の現代版は、ちょっと辻褄が合わないところもあるけれど、これはこれで楽しめると私には思えました。いかがでしたか?

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