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2015年1月14日 (水)

The Shoemaker's Holiday

まつこです。

今回、ストラットフォードで見たもう一つの芝居はThe Shoemaker's Holiday(『靴屋の祭日』)という喜劇です。陽気でおしゃべりな靴屋の親方がが、トントン拍子に出世してロンドン市長になり、Shrove Tuesday(ざんげ火曜日)を職人たちの祭日にしたという明るい喜劇、

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[急に財産は増えるし、出世はするし、良いことづくめ。奥さんと抱き合って喜びあう靴屋の親方(写真はすべてRSCのHPより)]

・・・のはずが、見はじめてしばらくすると、あれ、この劇って意外と深刻な内容だったのね、と認識を新たにしました。

生き生きとした職人たちのたくましさや、大人の反対をかわして結ばれる若い恋人たちを描きながらも、その背景にあるのは「戦争」と「階級制度」の残酷さ。シェイクスピアの同時代の作家トマス・デッカー(Thomas Dekker)の原作を書き変えることなく、社会の不公正や権力の横暴といった時代を超えた問題をうまく浮かび上がらせた演出でした。

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[無理やり徴兵され、片足を失い、顔も傷ですっかり変わってしまった職人。ようやく再会できた妻は別の紳士と結婚しようとしていた・・・]

でももちろん笑いもたっぷり満載。貴族の跡取りは、他人は戦場に送り出しておきながら、本人はこっそり軍隊から抜け出して、オランダ人の靴職人に変装し恋愛を成就します。おぼっちゃま君がヘンテコなオランダ語をしゃべるたびに、「調子のいいやつめ・・・」と思いながらついつい笑っちゃう。

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[調子のいいおぼっちゃまはオランダ人靴職人に変装して戦争忌避し、花嫁もゲット]

夫がどんどん出世し市長夫人になった妻は、おばちゃんキャラのまま、衣装だけ女王様のよう。転がりこんできた幸運に、オロオロする一挙手一投足が観客の爆笑を呼びます。

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[馬子にも衣装・・・とはなかなかいかない。着慣れぬ衣装で笑いを呼ぶおかみさん]

笑いと深刻さ、その明暗コントラストのはっきりした喜劇でした。古い時代の衣装と古い時代の言葉をそのまま使いながら、時代を超えた問題性を新しく浮かび上がらせたところにおもしろさがあります。安定感と刺激のある、いかにもRSCらしい舞台でした。

今回でこの1年のストラットフォードでの観劇も終了です。全部で11本。好き嫌いはありますが、どれもしっかりとしたプロダクションでした。

RSCのホームページを見ると1年毎の収支状況が円グラフでわかりやすく表示されています。RSCはアーツ・カウンシルを通して、年間1570万ポンド(30億円弱)の補助金を受けています。補助金が収入全体の26%です。イギリスも国家財政が厳しい折、芸術分野の補助金も大きくカットされており、RSCへの配分も6〜7%の削減がすでに決定されています。

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[アンサンブルの良さもRSCの魅力のひとつ]

それでもなお、RSCはコヴェント・ガーデンのオペラハウスやナショナル・シアターなどとともに、もっとも厚い補助金に支えられて活動をしています。決してラクな財政ではないと思うのですが、今年見た11本はどれも装置、衣装、音楽、役者の数など、ケチケチしていない印象でした。

ただそのせいなのか、スリルはあまり感じられませんでした。最初から最後まで、安心して見ていられる芝居ばかり。欲を言えば、もうちょっととんがった批判精神があってもいいのではないかと・・・。不透明な時代にあって、伝統の中から、ラディカルなものを生み出す、そんな鋭い創造力のある次世代の演出家や役者を、この箱庭のようにきれいな観光地ストラットフォードで見てみたい。ないものねだりではあるけれど。そんなふうに思いながら、5回目の帰路につきました。

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