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2014年11月 6日 (木)

クリスマスのLove's Labour's Won

まつこです。

先週末にストラットフォードでもうひとつ見た芝居は『恋の骨折り甲斐』(Love's Labour's Won)。聞き慣れないタイトルですが、シェイクスピアと同時代のフランシス・ミアズという人が著書の中で、シェイクスピアの喜劇として『恋の骨折り損』と並べてこのタイトルをあげています。失われてしまった作品なのか、あるいは他の喜劇の別の題名なのか、研究者の間でも議論が続いています。

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[プログラムのデザインも合わせてあって楽しい!]

今シーズンのRSCの上演は、Love's Labour's Wonは『空騒ぎ』の別名という想定のもと、『恋の骨折り損』と『恋の骨折り甲斐』を二本立てで上演するという企画です。舞台は両方ともストラットフォードの近隣のカントリー・ハウスであるチャールコート。『恋の骨折り損』の時代は第一次世界大戦前夜。せっかくの恋も戦争でハッピーエンディングがお預けになるという設定でした。

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[会うやいなや口論のたえないベネディックとベアトリス。舞台写真はすべてRSCのHPより]

今回の『恋の骨折り甲斐』は第一次世界大戦直後。幕開け、チャールコートの大広間はまだ負傷兵のための病院として使われています。『空騒ぎ』の幕開けも戦争の後ということになっているから台詞もぴったり符合します。

第一世界大戦の休戦の休戦記念日は11月11日です。戦争が終わり、久々に平和の中で人々はクリスマスを迎えます。今回の『空騒ぎ』は、クリスマスの祝祭気分に恋の騒動を重ね合わせた楽しい演出でした。

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[人々の幸福をそねむドン・ジョン]

けれどこの喜劇には人々の喜びの輪に加わろうとしないドン・ジョンという悪人が登場します。今回の演出ではドン・ジョンを第一世界大戦で負傷した将校にしていました。松葉杖をつき、足を引きずりながら帰還したドン・ジョンは、身体だけでなく心も病んでいるのかもしれない。観客にそんな想像をうながす巧みな演出です。

『恋の骨折り損』でビルーンとロザライン演じた二人(エドワード・ベネットとミッシェル・テリー)が、今回はベネディックとベアトリス。こうして並べてみると、丁々発止の舌戦を繰り広げる意地っ張りな男女の組み合わせの系譜がうまく浮かび上がってきます。

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[大きなクリスマスツリーが飾られたチャールコートの大広間]

ときどき悪ふざけし過ぎかな・・・と思うようなコミカルな演出もあるのですが、クリスマスのお祭り気分の中でなら気になりません。ベネディックが巨大なクリスマス・ツリーの中に身を隠して恋の噂を立ち聞きしていると、「知性と同様、見た目もきらめいている男だよ」(He doth indeed show some sparks that are like wit)というお世辞が耳に入り、そのとたんツリーの電飾がスパークするといった調子です。

でもクリスマスは楽しく騒ぐだけではなく、感謝と祈りの季節でもあります。しんしんと冷え込む夜に静かにキャロルが流れ、平安な時を分かち合う厳かな気分も混じり合う演出でした。暗い舞台に『木枯らし寒く吹きすさび』(In the Bleak Midwinter)が静かに聞こえてくると、ああ、今年もそろそろ終わりだなという感慨がわきます。

おおいに笑い、少しだけしんみりした気分にもなった一日でした。

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コメント

う~ん、これはRSCならではの端正な舞台ですね。あー、なんか無性にイギリスに行きたくなりました。夏もいいけど、秋が深まり、クリスマスに向かうこの季節も格別ですよね。

Pukiさん、コメントありがとうございます。

ハロウィーン、ガイ・フォークス、リメンバランス・デー、クリスマスと行事が立て続けの時期は寒くても気分が昂揚するのですが、新年を迎えたあとに続く寒くて暗〜い冬に季節性ウツになる人が多いとか。日本の「海の日」みたいに強引に祝日、作れないものですかね、1月末あたりに。

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