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2014年9月17日 (水)

スコットランドの行方

ひさびさにうめぞうです。

いよいよスコットランドの投票が明日にせまってきた。

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[どうなる、スコットランド?写真は9月17日オンライン版Guardianより]

結果はまったく予想できないが、政界とマスコミを総動員して、双方がなりふり構わぬキャンペーン合戦を展開しているようだ。

ここまできてしまうと感情的にもつれてくる。独立なんかされたら、ポンドも株価も下がってしまう。どうしてくれるんだ。ほんとに困ったことだ。いやいや、身の程知らずのわがままな子はいちど独立してみればいい。どうせろくなことにはならない。なんであんなにぺこぺこして慰留するんだ、等々。離婚であれ、家庭内別居であれ、どちらの結果に転んでも、もうこれまで通りの関係は続けられない。

・・・どうもこれが、まつこの知り合いたちの間での一般的意見のようだ。

しかし、うめぞうの意見は少し違う。今回の投票はひさびさにイギリスが民主主義国家であることを思い出させてくれた。人民は公論と投票を通じて平和裏に新国家を設立しうる。これが近代市民革命の第一歩、アメリカ合衆国の建国理念だったはずだ。

この原点に立ち返ること。Another world is possible. この政治感覚を市民がとりもどすことこそが、今回の選挙の歴史的意義だ。これはイギリス人にとっても、スコットランド人にとっても、政治文化を再活性化させるまたとないチャンスだ。にもかかわらず、北海油田がどれくらいもつか、独立したほうが得か損か、ポンドは使えるのか、などということが主要な争点になるのはじつにもったいない。

振り返ってみると、石油危機以来の数十年、国民国家は金融権力や軍産複合体の利益追求のために徹底的に道具化されてきた。これをもう一度、国民の手にとりもどすための挑戦と捉えれば、この投票には絶大な意義がある。失敗してもよい。一時的に混乱し、生活水準が下がってもよい。それでもこの投票には意義がある。国民こそが国家の主権者であるということを国民が思い出し、そのための法的可能性を積極的に利用すれば、いつかは人民による人民のための人民の政治が実現しうる。

1968年の苦い体験から学習した政治経済権力は、数十年をかけてパンとサーカスによる大衆の慰撫に成功した。対外的には石油危機、対内的には福祉国家の成熟によって収益率を抑えられた資本は、政治を動かし、金融や通貨政策を利用して反転攻勢にでた。まずは紙幣増発によってインフレを作り出し、成長の幻想と実質賃金の引き下げを図った。しかしインフレは資本にとっても副作用がある。そこで次は金利をあげてインフレを抑え、その代わりに将来の納税者からの借金、つまり国債によって国庫収入を確保した。こうして企業及び富裕層の減税が可能になり、国営企業の民営化、規制緩和による資本の収益増を実現した。国家債務が政治問題化し始めた90年代後半からは、国の借金を世帯の借金に組み替えるために低所得者層の持ち家政策を進め、民間銀行にリスクを取らせて、低所得者層に高金利で返済不能な借金をさせた。それが2008年に破綻した。すると今度は税金で銀行を救済し、社会保障費のカットと大衆課税の強化で穴埋めをした。その間に民衆の不満を抑えたのは消費文化の拡大とそれがもたらす解放感だった。犠牲になったのは社会的弱者の生活基盤と、国民の政治文化だった。

道は遠いが、こうした国家の道具化にはどこかで歯止めをかける必要がある。今回の選挙の核心は、イングランドに対するスコットランドの挑戦ではなく、金融破綻の穴埋めを大衆課税と教育福祉予算のカットで解決しようとしたイギリス政府に対する国民の挑戦にある。独立が成功しようが失敗しようが、不公正の是正こそが唯一の解決の道だ。ナショナリズムの再活性化では、この問題はとうてい解決しえない。

しかし真の悲劇は、その事実にひそかに気付いているのが、イングランドの市民でもスコットランドの市民でもなく、当の政治権力、経済権力の側だということだろう。それはキャメロンの眉間のしわの深さからもうかがえる。

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コメント

うめぞうさんの見方はもっともと思うものの、今の民主主義は、もはや化け物と化したメディアに愚かしく翻弄される大衆的民主主義。ここのところ名ばかりの民主主義に絶望しているので、イギリスの行く末がホント心配です。

現実にはpukiちゃんの言う通りですね。
ポピュリズムで既成の制度を解体すると思いもよらぬ弊害が出てきますからね。
ただ連合王国はウクライナとは違います。その弊害を含めて国民が選択をするというチャレンジは、この国では民主主義を鍛えていくきっかけになるのではないかと見ています。
やはり、甘い書生論ですかねえ。

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