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2014年9月30日 (火)

開戦前夜のLove's Labour's Lost

まつこです。

RSCの『恋の骨折り損』を見るのはこれで3度目です。1991年、テリー・ハンズの演出はフランス印象派の絵画をそのまま立体にしたような典雅な舞台でした。1993年のイアン・ジャッジの演出はオックスフォードの学寮に設定していました。

今回の舞台は、ウォリックシャーの治安判事サー・トマス・ルーシーの邸宅チャールコート・パークに設定されていました。(クイズの第2問の答えです。)シェイクスピアが鹿を盗んだといわれている庭園で、恋の狩人たちが遊ぶという、なかなかうまい設定です。

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[プログラムの写真]

音楽を多用した演出で、ノエル・カワード風の甘いメロディや、エルガー調の壮麗な曲がたくさん流れて、エドワード朝かそのあとのジョージ五世の時代の洗練された雰囲気がかもし出されます。劇中劇の『九人の偉人』はギルバート&サリバンのオペラ風でたっぷり楽しませてくれました。

20世紀初頭の貴族の邸宅・・・そう、まさに『ダウントン・アビー』の世界です。貴族たちは優雅に恋をし、学者や聖職者は芝生の上で難しげな議論をし、召使いは一糸乱れぬ働きぶり、そして純朴な村人たち。

階級社会をノスタルジックに描いて、なかなかうまくまとまった舞台だな・・・と思いながら見ていたら、思いがけぬ終幕となりました。

ここから先、ネタバレです。

劇の終わりをしめくくる「カッコーとフクロウ」の歌をどう演出するかが、この劇のポイントのひとつ。前半のカッコーの歌の部分はあま〜いロマンティックな歌でしたが、後半のフクロウの歌になると曲調がだんだんと変化し、『ルール・ブリタニア』や『威風堂々』のようなイギリスの栄光を讃える国威発揚調の曲になりました。

第一次世界大戦の開戦です・・・。

先ほどまで恋に恋して、優雅なソネットなど綴っていた貴族の若者たちが、軍服姿で出征していきます。貴婦人たちと召使いと村人は邸宅の前に整列し声を合わせて歌を歌い、勝利を祈りながら彼らを見送るという結末でした。

甘い言葉をつらね、贈り物を送り、ぶざまな変装までして恋にうつつをぬかしていた貴族の若者たちも、戦争という過酷な現実に巻き込まれていきます。彼らを待ち受けるのは塹壕と火薬。この4人の貴族のうち、誰が無傷で帰ってこれるのかー。

「厳しい生活を1年間耐えることができたら愛する人と結ばれる」と若者たちは約束してもらいましたが、この戦争は4年以上の年月と、900万人を超える戦死者を出すことを、観客は知っています。今年は第1次世界大戦勃発から100年目。さまざまに語り継がれてきた戦争の記憶が、この結末に重なりあい、鼻の奥がツーンとする切ない幕切れとなりました。

ちょうどこの日、イギリス議会はイラクへの空爆参加を決定。苦く複雑な思いも混じりあう夜でした。

クイズの答え

1)ベン・ジョンソン

2)チャールコート、サー・トマス・ルーシー

3)『ウィンザーの陽気な女房たち』第2幕第2場のフォードの台詞

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コメント

まつこさま こんにちは

『恋の骨折り損』、まつこさまのレポートを読ませていただいただけで、見たくなります! 秀逸な演出ですねー。軽妙かつ深刻なカラーが上手く対照的に取り込まれているようですね。こういうところの手腕のすごさと、それを受け止められるシェイクスピア台本の度量の広さ、唸ってしまいます。
学生が9月に『ヘンリー4世』を見てきて、大感激したという話をたっぷり聞かせられました。またひとり英国&シェイクスピアファン創出に成功したようです。

ショウガネコさん、コメントありがとうございます。

Berowneがあんまりハンサムじゃない・・・と、いささか不満に思いながら見始めたのですが、おもしろかったです。最後はウルっときちゃいました。映像配信もあるようですが、日本では見られないのでしょうか。

今シーズンはLove's Labour's Won(=Much Ado About Nothing)を第一次世界大戦終了後に設定して、シリーズで上演するのだそうです。そちらも楽しみです。

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