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2014年6月17日 (火)

金ぴか猫が招いたブラック・コメディ:『フェヴァシャムのアーデン』

まつこです。

週末にストラットフォードで見たもう一本のお芝居の主人公はこんな人物です。

女:40代半ば。プラチナ・ブロンドをゆるやかに束ねるヘア・スタイル。ヒップラインを目立たせるストレッチの効いたタイト・スカートと大柄のプリント・ブラウスを組み合わせ、太めのベルトでウェストを強調。黒いストッキングに、ベージュと黒の二色使いの10センチ・ヒールのアンクル・ブーツ。アクセサリーは思い切っておおぶりなものを。リップスティックとマニキュアは深紅、アイシャドウは80年代風の鮮やかなブルーをまぶた一面に。夫は、通販ビジネスで成功し、不動産取得も順調。

いかにも金満マダムというファッションでしょう?このマダムが愛人と共謀して夫殺害をはかる・・・女性読者の多い大衆紙デイリー・メールが派手に書き立てそうな、色と金にまみれたスキャンダルです。

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[スキャンダラスなマダムとその愛人]

実はこれが今回もう一本見た16世紀末の作者不詳の劇『フェヴァシャムのアーデン』です。16世紀半ばに実際に起きた殺人をもとにしています。今年のRSCのスワン座では強烈な個性を放つ女性を主人公にしたドラマを連続で上演していますが、そのうちの一本です。

16世紀の家庭悲劇を現代のブラック・コメディとして解釈し、欲望のグロテスクで滑稽な姿をむき出しにしてみせた面白い演出でした(演出はPolly Findlay)。

その金と色への欲のシンボルとして使われていたのがこれー

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[え?招き猫・・・]

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[1匹や2匹ではない。最後は無数の招き猫に見つめられて流血の殺害が繰り広げられます]

金ぴかの招き猫です。主人公アリスの夫は、この招き猫を通販で売って富を増やしました。しかしネット・ビジネスは24時間労働の劣悪な労働環境で酷使される従業員の上に成り立っています。慈悲心のない無愛想なこの実業家が殺されても、あまり気の毒に思えません。死体を入れた通販用の段ボールから血がにじみ出し舞台を汚します。

古い戯曲を使って、マテリアリズムという現代社会の病理を描きだした演出家の意欲を高く買いたい。そして10センチヒールで派手に立ち回り続けた主人公アリス(Sharon Small)にも拍手を送りたい。現代の演劇界の女性たちの力を実感した一夜でした。

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