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2014年5月27日 (火)

文字を覚えた日

まつこです。

ケンブリッジのキングズ・カレッジの前の目抜き通りにローソン・ギャラリーという美術商があります。美術商といっても大げさではなく、お土産用の絵はがきやカード、手頃なポスターなども売っています。

ケンブリッジに到着した直後、そこのウィンドウで目を引いた一枚の絵がありました。

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[ロアルド・ダール『マチルダ』の挿絵です。絵を描いたのはケンブリッジ大学出身のイラストレーター、クェンティン・ブレイク]

『マチルダ』は親から愛されなかった孤独な少女の物語なので、あまり好きな話ではないのですが、この絵の下に添えられていた『マチルダ』からの引用に心ひかれたのです。

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[横に数字が添えられていますが、いちおうオフィシャル・コレクションということでナンバーがついています。これは595枚のうちの380番]

'who taught you to read, Matilda?' Miss Honey asked. 'I sort of taught myself, Miss Honey.'
「誰が字を教えてくれたの?」とハニー先生がたずねました。「自分でおぼえたんです」

これを読んだとき、私が文字の覚えたときの記憶がよみがえってきました。

あと2ヶ月ほどで4歳になるという年のお正月、母方の祖母の家に遊びに行き、私は「オバQ」のかるたで遊んでもらいました。オバQが大好きだった私は、夢中になって遊びました。

子供の記憶力というのは、水を吸収する綿のようなものです。かるたで遊んだその数時間後、私は絵本を読むようになっていました。あの日の「本が読めるようになった!」という喜びは、今も覚えています。

両親とも働いていたので、日頃ベビーシッターさんに預けられていた私は、あまり大人に遊んでもらう機会が多くありませんでした。祖母や母に何度もかるたを読み上げてもらって遊んでもらうのが、うれしくてたまらなかったこともよく覚えています。

その後、働く母に育てられた私の寂しさを解消してくれたのは本でした。やがて、本を読むことが今の職業に結びついたわけですが、あの本を読めるようになった日や、時間を忘れて物語の中に入り込んでいた小学生の頃の、「のめりこむように夢中になる」という感覚は、だんだん記憶の中で遠ざかってしまいました。

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[今、自宅の机の前にかけられている『マチルダ』]

もう一度、あんなふうに本のおもしろさを感じてみたい、読まなければいけない本ではなく、読みたい本を読もう。イギリスの古い大学街の真ん中で、そんなふうに考えて買うことにしたこの絵は、今、宿舎のお勉強コーナーに飾ってあります。

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コメント

いいお買い物しましたね~。まつこさまはさすがに優秀です。超落ちこぼれだった私が最初に覚えた文字は、自分の名前。幼稚園の寄せ書きのために何度も家で練習させられたのに、「る」を逆向きに書いてしまいました。そのまま卒園アルバムに残っていますが、間違えている園児は私一人。ほろ苦い思い出です。これが小学校入学直前なのですから、母の心配はいかほどだったか。それを思えば、アンタよく頑張ったよ、と自分をよしよししてやりたくなります。

Pukiさん、コメントありがとうございます。

いやいや、私はスタートダッシュだけ良かったのですが、その後が続かず、以後はずっとマイペースで・・・。アンタもPukiちゃんみたいに頑張ればよかったのに、と我が生涯を悔いております。

実は「いいお買い物」はこれだけじゃないんです。まだ頑張っていないのにすでに自分にご褒美もしてしまいました。おいおいご披露申し上げます!

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