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2014年4月19日 (土)

ISDのあやうさ

うめぞうです。

明日から、フランスでまつことひさびさの休暇旅行。最近はスカイプでテレビ電話ができるので、互いの近況はだいたいわかってはいるが、やはり、再会は楽しみだ。
しかし、近年はどこに行ってもグローバル化の影響を強く感じる。フランスやイタリアの片田舎でも英語は通じるし、食事の種類も似たり寄ったりだ。うめぞうはイギリスに行くと、「ぼくはなにか典型的なイギリス料理を食べてみたい。西洋わさびとミントソースのかかったローストビーフとか、ヨークシャー・プディングなるもの、油や塩にまみれていない美味しいフィッシュ&チップス、昔風のパブランチ、Ploughman's Lunchとかいうのも食べてみたい」という。すると、うーん、そういう、ずれてるおじさん教養的なリクエストが一番難しいんだよね、とまつこはいう。なにしろ、最初にまつこにイギリスに連れて行ってもらったとき、どこ行きたい、といわれて、とっさに出てきた言葉が、ワーズワースの湖水地方と、トマス・モアが処刑されたロンドン塔。しかし、現実には、どんどんうめぞうの頭のなかの固定観念とグローバル時代との格差が拡大しているようだ。

そんな昨今、気になるのはTPP。みんな牛肉や豚肉の関税に気をとられているようだが、うめぞうがずっと気にしているのは、貿易協定になにげに書き込まれる可能性のあるISD条項。投資家(Investor)と国家(State)が紛争(Dispute)になったときの解決(Settlement)のルールを定めた取り決めだ。

2001年にアルゼンチンで財政危機が起こったとき、燃料費の高騰を抑えるために、政府は燃料価格の凍結を行った。アメリカのCMSエナジーやフランスのスエズ、ヴィヴェンディなどの多国籍企業がISD条項を使って、この措置の損害賠償訴訟を国外で起こし、政府は1000億円以上の金を払わされた。とんでもないことだ。

カナダ、ケベック州では、水圧破砕でシェールガスを採掘すると環境破壊が生じる可能性があるので、禁止命令を出した。これに対して石油ガス企業が北米自由貿易協定(NAFTA)のISD条項を盾に、200億円を超える賠償請求をしている。

エルサルバドルやコスタリカで、鉱山の採掘が水資源を破壊するとして政府が採掘制限を法律で決めると、これがISDで訴えられている。ウルグアイやオーストラリアでタバコの害を少なくするため厳しい保険法を導入しようとすると、タバコ産業がISDを使って損害賠償をしようとする。エクアドルがオクシデンタル石油との契約を人権環境関連の法律をたてに破棄したといって、エクアドルの社会保障費の15年分にあたる1800億円を支払わされた。審理は国外の非公開法廷でおこなわれ、多国籍企業にやとわれた凄腕の弁護士たちのまたとない檜舞台になる。国内法でグローバル化を抑制する国民国家を、今やグローバル企業が国際的な投資仲裁を義務付けることによって逆抑制しようとしている。独立した司法制度と成熟した民主主義をもつ国家には独自に法を制定し、行使する能力が備わっているのだから、先進諸国間のとりきめに、こんな条項は不要だろう。

日本政府はTPPにこの条項を盛り込むことにはいちおう反対しているが、はたしてそれを貫けるか。牛肉や豚肉の妥協の取引材料として、これが使われる可能性がないか、これに目を光らせるべきだろう。

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