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2013年9月 1日 (日)

The Drowned Man

まつこです。

今回のロンドン滞在の最後の芝居はPunchdrunkという劇団のThe Drowned Manでした。パディントン駅近くの古い大きな建物をまるごと使って、演劇空間に作りかえたところで上演されます。観客は全員、マスクをかぶり、その演劇空間の中を自由に動けけるという趣向の上演です。

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[観客も仮面(マスク)をかぶると演技者の一人になります。写真はNTのHPより]

荷物を持たず楽な靴でくるようにという指定がなされていました。4階だての巨大な建物が、いくつもの空間に分けられいます。真っ暗なところや狭い通路を通って、観客は3時間の間、自由にどこにでも行くことができます。

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[愛憎や暴力の断片が暗闇の中で幻影のように浮かび上がります。写真はNTのHPより]

仮面をかぶることで、観客はただ眺める人ではなく、同じ空間を共有する演技者になります。古い映画の撮影スタジオという設定の空間には、楽屋や衣装部屋があって、いたるところにひび割れたり、曇ったりした鏡があります。不気味な仮面をかぶった自分の姿がしばしば鏡にうつります。虚と実の区分ももはやはっきりしません。

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[古い鏡に自分の姿もうつります]

1960年代の古い色あせた映画スタジが、幻影のようによみがえり、自分もまたその中に吸収されてしまったという感じになります。

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[嫉妬ゆえに愛する女を殺す。この場面も怪しく美しい]

この幻想的な空間で二つの物語が同時に進行しています。愛情と嫉妬と精神的病理の物語です。観客は自由に歩き回るので、必ずしもその物語の展開を順序良く追うことはできません。巨大な空間の中に物語の断片がちりばめられていて、観客はその破片にランダムにまきこまれます。

とてもスリリング!

ちょっと怖くて、不気味で、そう、お化け屋敷に入った感覚に似ています。ただしきわめて洗練された芸術的なお化け屋敷です。

シュールな3時間を過ごした後、外に出てみるとロンドンの遅い夕暮れの空が広がっていました。現実に戻れてほっと安堵したような、同時に幻影の空間から外に出てしまったことが惜しまれるような、くれなずむ空の下で不思議な感覚に包まれました。

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コメント

まつこさま

昨日はまたしてもお疲れさまでした。
おかげさまで念願の Punchdrunk を見ることができて大感謝です!

この劇団のそもそもは、芸術監督の Felix Barrett (現在35歳という若さ)が『ヴォイツェック』を大学卒業作品として作ったのがきっかけだったそうです。The Drowned Man はそういう思い入れも大きかったのでしょうね。

今日は東京へ発たれる日ですね。どうぞお気をつけて。

今夏もまつこさまの劇評で楽しませてもらいました。イギリスはそろそろ秋風が吹く頃でしょうか。お帰りになる頃には日本もちょっと涼しくなっていることでしょう。お気をつけて。

ショウガネコさま、コメントありがとうございました。

わたし一人ならぜったいにいかなかった芝居です。おかげさまで得難い経験ができました。

帰宅後、パラレルの物語の説明を読みました。女性が男性を殺すというもう一方の物語の方も見たかった気がします。こうやってリピーターになっていくんでしょうね。

またロンドンで芝居見物をご一緒できる機会を楽しみしています。

Pukiさん、コメントありがとうございます。

読んでくださる方がいるので、はげみになりました。ミドルトンの芝居のことなんて書いても、あまり興味のある人いないでしょうし、Pukiさんは貴重な数少ない読者です。読んでくださってありがとうございました。

今日、これから帰国です。こちら現在20度くらい。時差よりも気温差を覚悟して帰ります。

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