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2013年8月29日 (木)

ヴァカンス用の1冊:The Unlikely Pilgrimage of Harold Fry

まつこです。

ヴァカンスには仕事を持ってきてほしくない!

これは世の多くの妻たちの本音でしょう。しかし「締め切り」があれば仕方がない・・・ということで、うめぞうは遥々フランスはロワールの地まで来て、仕事をしていました。

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[このコーナーは本来、化粧台として使われるものだと思いますが、私たちが滞在した1週間はうめぞうのワーク・スペースとなりました]

わたしの方もするべき仕事がないわけではないけれど、それらはすべて後回しにし、ロワールへはペーパーバック一冊だけを携えて行きました。

このホリデー用の本の選択は、シャンブル・ドットの選択と同じくらい、大切です。貴重なヴァカンスの時間を十分に楽しめる一冊を選びたいものです。わたしはこんな時には、朝日新聞別冊Globeの連載「世界の書店から」でイギリスの担当をしている園部哲さんの記事を、多いに参考にさせてもらっています。

で、今年のホリデーのために選んだのがこの1冊ーー

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[ゆっくりと、心を解きほぐしていく小説でした]

 Rachael Joyceの長編小説The Unlikely Pilgrimage of Harold Fryです。古い友人から突然届いた手紙をきっかけに、イングランドの南の端から北の端まで巡礼(pilgrimage)をしていく60代半ばの男の物語です。

長い日時をかけて歩いていく道のりは、自らの人生を振り返る時間でもあります。人生とは振り返れば、後悔と失意の連続であることが浮かび上がっていきます。一人、家に残された妻も、過去と直面せざるをえません。夫への嘘や自分への偽りが積み重ねられてきた長い時間がそこには横たわっています。

イングランドの小さな町や村の景色、そこで出会う人々、彼ら一人一人にも取り返しのつかない過去の物語があります。各地にはそれぞれの地域色があり、歴史的な遺産もあります。世界がネットワークで瞬時につながり、どこも同じようになってしまったように見えて、イングランドという小さな国の中にも地域の多様性が残っていることを、主人公のゆっくりとした足取りとともに確かめていくことができる小説です。

家族、老い、生、死、信仰、愛情、孤独・・・様々なテーマが浮かび上がるたび、すこし立ち止まって考え込み、そしてまた先に進んで行く。ただただ愚直に進むだけではなく、予想通ににはいかない逸脱や、大きなどんでん返しも組み込まれています。

ヴァカンスのようなゆっくりした時間に、丁寧に読むことができて良かったと思える物語でした。ただイングランドの細かい地名が出てくるので、ちょっと注意が必要です。わたしはしょっちゅうGoogle mapで小さな村や町の名前を確認しながら読みましたが、実は最後のほうにイングランドの地図がのっています。物語の結末を読んでしまわないように気をつけながら、巻末のこの地図を参照すると読みやすいでしょう。

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コメント

まつこさま こんにちは

面白そうな本ですね。最近小説にご無沙汰なので、読みたくなりました。
行ったことのない土地を想像しながらヴァーチャル・トリップをするのは楽しそうですし、本当にその地を訪れてみたくなるのも良いですね。

ショウガネコさま、コメントありがとうございます。

この小説、ショウガネコさまにあいそうです。主人公は各地を旅しながら、聖堂や遺跡でちょこちょこお土産も買います。絵はがき書いて、電話ボックスで電話して、こういうアナログ・コミュニケーションもいいなあ、と懐かしく思い出しました。

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