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2013年8月25日 (日)

『オセロー』と『ハムレット』

まつこです。

正直に告白しましょう。わたしはシェイクスピアの悲劇がちょっと苦手です。密度の濃い言葉を真剣に3時間くらい聞き続けることを考えると、「重いし暗いし・・・」と劇場に向かう足どりもやや重くなります。

でも行ってみると、「やっぱりおもしろかった」と再認識して帰路につく、ということもあります。今回のナショナル・シアターの『オセロー』はそんな上演でした。

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[写真はGuardianから]

ニコラス・ハイトナー演出の設定は現代の戦場です。女性兵士もいれば、黒人兵士もいます。休憩時間にサッカーやったり、ときどきビールを飲んで気晴らししたり、普通の若者たちが迷彩服を着て、コンクリートの基地で生活しています。

そんなところに、上官が一人、天真爛漫なお嬢様を新婚の妻として連れてくれば、火種のもと。どんな立派な将軍でも、若者たちの抑圧されたエネルギー(すなわち性欲)が飽和状態になっている基地に、一人だけ新妻を連れてきたらまずいじゃない・・・と懸念していると、やはりあっという間に悲劇が起きてしまいます。

エイドリアン・レスター演じる黒人の将軍オセローは、堂々とした態度と朗々とした声と明瞭な発音でいかにもエリート軍人。一方のロリー・キニア演じるイアーゴは、エスチュアリーと呼ばれるような労働者っぽい英語を話し、パブで飲んだくれているあんちゃん。保守系タブロイドのThe Sunを読んでいそうな感じ。

こうした社会的枠組みを設定した中で、二人の実力派俳優が、真正面からぶつかりあいます。あっけなく人格を崩して転落してしまうヒーローと、冷ややかな憎悪に突き動かされるニヒルなアンチ・ヒーロー。その対立が一瞬の緊張感のゆるみもなく演じられました。

やっぱりシェイクスピアの悲劇もおもしろいわ!

久しぶりにロンドンのナショナル・シアターで、スタンディング・オベーションで役者たちに熱い賛辞を送る観客に囲まれながら、軽い興奮を感じて帰路につきました。

で、その2日後が『ハムレット』。

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[曇りときどき雨、はかない薄い青い空が時々のぞくという、イギリス的なお天気の中、ストラットフォードまで出かけました]

『ハムレット』やるなら、いちおう見ておこうかな・・・、と思ってストラットフォードまで出かけました。

こちらは残念ながら、何をやりたい演出なのかよくわからない、という舞台でした。舞台は1960年代あたりに設定されているようなのですが、その時代設定の意図がまずわからない。フェンシングのマスクが繰り返しモチーフとしてつかわれていて、紳士淑女がマスクをしてダンスをする場面もあるのですが、「素顔を見せない偽善性の表現かな?」と思いながらも確信が持てず、クローディアスと殺されたハムレットの父親の亡霊を同じ人が演じているのですが、この一人二役の意図もわたしにはよくわからなかった・・・。

ただし役者さんがすごくうまいことはわかりました。

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[写真はGuardianから]

母親との関係では、ハムレットの愛着が過剰に強い一方で、きわめて冷酷にもなる。おどけていたかと思うと、あっというまに絶望的な暗い気分に沈み込む。ハムレットはひょっとして統合失調症で、ハムレットの頭の中で起きていることを全部見せられているのではないか、という気分になってきます。制御できない気分の激しい変化を、身体も映し出すように、体も動かし続ける様子に圧倒されます。

ハムレットを演じたのはジョナサン・スリンガー。髪もちょっと薄くなりかけていて、背も高くなく、決して二枚目俳優ではないのですが、また見てみたいと思う役者でした。

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コメント

まつこさま こんにちは

『オセロー』ご覧になったんですね! 良かったですよねっ!!
私、Adrian Lester が好きで、楽しみにしてたんです。ちょっとお太りになったかしら?と思いつつ、見とれてしまいました。
Vicki Mortimer の舞台美術も素晴らしかった。Hytner の演出と共に、現代の軍に本当に無理なくするりと置き換えられていましたね。

『ハムレット』、わざわざストラトフォードまでいらしたのに、残念でした。。。

『エドワード2世』さっぱり予習していないのでちょっと不安ですが、楽しみにしています。

ショウガネコさま、コメントありがとうございます。

Adrian Lesterは軍人用に筋肉つけたのかな、とわたしは思ってみていましたが、ひょっとして中年太り?Othelloって、他の悲劇に比べてもより苦手だったのですが、今回ので若干、苦手意識が払拭できました。演出、装置とも手堅いですね。安心感があります。トイレの場面に関心しました。

Hamletは、まあ、演出家の思い入れが多すぎたんでしょうね。こういうの見るのも仕事のうちかな、と納得しています。

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