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2013年8月15日 (木)

モンソロー城の物語

まつこです。

数多くの古城が建つロワール川流域はユネスコの世界遺産に指定されています。フランス史にも城の建築様式にも詳しくないないので、せめて滞在する村のモンソロー城については、その由来くらい知っておこうと予習してみました。

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[川べりに建つ小さな城モンソロー城。手前にはHotel Bussyというのが見えます]

この城を舞台にしたデュマ作の『モンソローの奥方』が有名なのだそうです。アンリ三世の宮廷で繰り広げられる陰謀と恋愛の大長編小説。美しいディアーヌは誘拐され、モンソロー伯爵との強引な結婚のあと幽閉されてしまうが、実は彼女には若く勇敢な恋人がいた。その名もビュッシー・・・。

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[見学してみましょう。泊まっている宿からお城まで徒歩1分。なにせ小さな村ですから]

ここまで調べて、このデュマの小説に出てくるヒーローのビュッシーが、17世紀のイングランドの作家ジョージ・チャップマンの悲劇『ビュッシー・ダンボア』の主人公と同一人物であることに気づきました。チャップマンの戯曲に登場するビュッシーは、プライドが高く、欲望にまみれた宮廷文化を軽蔑しながら、野心にかられてやがて破滅するアンチ・ヒーローです。一方のデュマの小説では愛する女性のために命をかける高潔なヒーローに作り上げられているようです。

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[ロワール川の流れを見下ろしながら若き恋人に思いを馳せる人妻の気分にひたってみる]

フィクションは史実に忠実とは限りません。歴史をそれぞれに脚色して独自の個性を持った人物を造形していくのが文学です。

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[城の窓辺で妻の恋に悶々と悩む伯爵の気分を想像してみるうめぞう]

私のこうした説明を聞いて、「君はそのチャップマンの戯曲を読んでいたからモンソロー村に来ることに決めたんだね」とうめぞうは納得していましたが、それは全くの誤解です。チャップマンの戯曲ではビュッシーが密通する夫人は「モンサリー伯爵」の奥方となっています。私はこのモンソロー村がチャップマンの悲劇に関係しているとは、つゆ知りませんでした。

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[モンソロー伯爵夫人の本当の名前はフランソワーズ。この伯爵夫人の名を冠した通りもあります]

美しい静かな村でロワール・ワインがたくさん飲める。それだけを期待してやって来たら、ビュッシー・ダンボアの恋物語がおまけについてきたみたいな感じです。

この村には「ビュッシー・ホテル」とか「ビュッシー小路」とか、いろんなところにビュッシーの名前が使われています。美しい村で過ごすうちに、ビュッシー・ダンボアのイメージは、イギリス文学史の中の血なまぐさい悲劇に登場するマッチョな主人公から、一途な恋に身を投じる勇気ある剣士に変わりました。

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[ビュッシー小路とフランソワーズ通りの二つの小道が出会う三叉路]

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[この三叉路は、「愛の象徴」とされているとのことです]

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[この愛の出会う場所でリハビリ代わりの散歩をする老夫婦を見かけました。不自由な身体で懸命に歩く夫と、それをさりげなくエスコートする妻。ちょっとほのぼのした一場面でした]

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コメント

なんと、なんと、あのビュッシーですか!デュマのロマンスは、チャップマンのおどろおどろしい悲劇とは随分趣が違うのでしょうね。それにしても、直感で決めた旅ならではの粋な巡り合わせに、私までお裾分けを頂いた気分です。

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