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2013年8月30日 (金)

『エドワード二世』

まつこです。

学生だったときに、授業でクリストファー・マーローの『エドワード二世』という戯曲を読まされたことがあります。同性の寵臣に執着するあまり、国政をないがしろにしてしまう王様の時代を扱った歴史劇です。老教授が「材源となった歴史書では、この王が受けた拷問が、もっと生々しく書かれています。とても女子学生のみなさんにお話できるような内容ではありません・・・」と、意味ありげな微笑みを浮かべていました。

授業の直後、わたしはさっそく図書館へ行き、ホリンシェッドの『年代記』から該当する箇所を探してみました。グロテスクで残酷でエロティックな拷問と、石の建物の中に響き渡る王の悲鳴・・・。純真な女子大生だったわたしは度肝を抜かれました。

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[写真はGuardianより]

今晩は、その『エドワード二世』を見ました。ジョー・ヒル=ギビンズという演出家のナショナル・シアターでのデビュー作品。まだプレビューが始まったばかりです。

博物館の倉庫のがらくたをかきあつめてきたような舞台でした。中世の甲冑姿の人物もいれば、革ジャンやハイヒールの人物もいます。過剰に詩的な台詞を語る王様は、チンピラっぽい男とのホモ・エロティックな関係に溺れ、夫から無視されたヒステリックな王妃はマッチョな黒人に身を任せる。残忍で殺伐としていて、観客に一抹の共感も許さない、ハードな演出でした。

退位させられた王に差し向けられた殺し屋は、王の寵臣ギャベストンと同じ役者が演じていました。王をただれた欲望の世界へと引きずり込んだ男が、最後は残虐な拷問で王を苦痛の果てに殺す。なかなか効果的なダブリングです。

ビニールで包んだ反逆者の首を、まだ幼い新王が高く掲げ上げる結末まで、ずっとアグレッシブな場面が続きます。ハンディ・カメラやマイクで拾った映像も使われていて、スプラッター映画か未編集のドキュメンタリー・フィルムを見ているような気分にもなります。一緒に見に行ったショウガネコさんと二人、いささかくたびれた頭をテムズ川の涼しい風でいやしながら帰路につきました。

マーローってハードボイルドだったのね・・・、と改めて思った一夜でした。

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コメント

恥ずかしながら読んだことがないのですが、まつこさまのブログを見て、読みたくなってきました。読むより、観ろよって話ですが(汗)。ビュッシーを読んで、誰一人共感できる人物がいない殺伐とした劇のよさがちょっとわかるようになりました。

まつこさま

昨夜はお疲れさまでした。
なんとも頭の悩む演出でしたが、きれいな英語のおかげで話は分かりました。
告白しますと、シェイクスピア前後の作家の作品は、マーローも含めて読んだことがないのでした。。。くじけない自信はありませんが、興味が湧いたので、読んでみようかしら。

Pukiさん、コメントありがとうございます。

エドワードのギャヴェストンへの惑溺が、もうちょっと退嬰的に描かれるのかと思っていたのですが、耽美的要素ゼロの舞台でした。殺伐とした舞台に、エドワードの台詞の古典的な詩行がとってもミスマッチ。その落差を面白いと思うか、「なんじゃこりゃ?」と思うか、びみょーでした。

ショウガネコさん、コメントありがとうございます。

昔、昔、デレク・ジャーマンの映画『エドワード二世』を観た時も、なにやらよくわからず疲れた記憶があります。イアン・マッケランのデビューも確か『エドワード二世』だったと思います。はっきりとホモ・セクシュアル文学の系譜に属する作品ですが、きっと日本ならボーイズラブ系のもうちょっとソフトな演出にするんじゃないですかね。

はじめまして。実は日本の新国立劇場でもこの10月8日から27日まで「エドワード二世」が上演されるんですよ。その制作を担当しているものです。このプロダクションも観てみたかったのですが、上演期間がまるまるかぶっていて、残念! なので、とても興味深く拝読しました。マーロウの作品を英語で理解できるなんて、素敵ですね。

まりこさん、コメントありがとうございます。制作現場の方からコメントいただいて、うれしい驚きです。

このロンドンのプロダクションに関しては、イギリスで劇評が出そろいましたが、あまり評判は良くないようです。ちょっと演出家があれこれ実験的にやり過ぎたことが一因でしょうね。

新国立劇場の公演では、美しさと残忍さ、悲哀と暴力が共存するマーロウの劇世界が舞台に上に立ち上がってくることを大いに期待しています。がんばってください!

まつこさん、早速のコメントをありがとうございます。ロンドンの劇評では冒頭のギャヴィストンの登場シーンが衝撃的で、みなさん、絶賛されているようです。これからご覧になる方のために具体的には伏せていて、楽しみに・・・ということだとか。実際はいかがでしたか?

まりこさん、コメントありがとうございました。

観客席の後ろから、突如アメリカなまりの台詞が聞こえ始め、度肝を抜く登場でした。観客から見えない場所で演じている場面を画像で映し出したり、マイクを通して台詞を語ったり、劇場という空間を使って大掛かりな実験が次々繰り出される演出の、インパクトの大きい幕開きでした。

まつこさん、早速ありがとうございます。
おかげさまで、その衝撃の冒頭を想像することができます。英国の演出家、さすがですね。今後も楽しみです!

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