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2012年8月31日 (金)

ミュージカル『マチルダ』

まつこです。

短いロンドン滞在、最後の夜は話題のミュージカル『マチルダ』を見ました。ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)のミュージカルと言えば、25年以上のロングランになっている『レ・ミゼラブル』が有名ですが、2010年にストラットフォードで初演されたこの『マチルダ』もマシュー・ウォーカス演出のRSCのミュージカルです。来年の春にはニューヨークでの上演が決まっており、おそらくロンドンのウェスト・エンドでもロングランになるだろうと言われている大ヒット作です。

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[ロンドンで今話題のミュージカル『マチルダ』]

子供たちの躍動感あふれる達者な歌や踊り、体育会系女校長の猛女ぶり、勧善懲悪でありながらホロリとさせる展開などなど、ヒットする条件は十分にそろっています。大人も子供も必ず楽しめる娯楽性満載です。

ただ、それだけではなく『マチルダ』は、今日の子供たちをとりまく社会が抱えている問題も浮き彫りにする作品です。豊かになった社会では、「うちの子はプリンセスよ」「王子さまよ」「奇跡のようにすばらしい子だわ」と親が子供をアイドル扱いしがちな傾向があります。一方で自分の欲望ばかりにとらわれて、子育てを放棄してしまう自己中心的な親も少なくありません。子供の教育が難しくなっている時代に、「しつけ」などという古めかしい言葉は、『マチルダ』の女校長の暴力のように、パロディになってしまいがちです。

子供を育てづらい、子供が育ちにくい時代に、天才少女マチルダは自分の力で道を切り開いていきます。身勝手な両親に愛情をかけてもらうことなく育ったマチルダは、書物を読み豊かな想像力の世界に生きています。やがてマチルダが夢想したその物語の世界は、マチルダの超人的能力によって現実のものとなり、めでたしめでたしのハッピー・エンディング。でも、もしマチルダに超能力を持つ天才少女ではなくて普通の女の子だったら・・・?

『マチルダ』の原作者ロアルド・ダールの娘テッサ・ダールが、最近、赤裸裸な告白記事をデイリー・メイル紙に発表しました("Daddy gave joy to millions of children. But I was dying inside")。名声と富に恵まれながらも、ダール家がいかに不幸な家庭で、自分が父親の愛情を求めていかに苦しんだか、生々しく綴られています。父から「愛している」という言葉を初めて聞けたのは、父の死の前日だったと。

カラフルでにぎやかな楽しいミュージカル『マチルダ』ですが、テーマの一つは子供の孤独です。そうした辛い陰の部分も抱え込んでいるからこそ、より多くの観客をひきつけるのかもしれません。


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コメント

今度イギリスに行ったら、ぜひこのミュージカルを観てみたいです。そう言えば、ミルンの息子も父親との不和を告白していましたね。お父さんにはお父さんの言い分もあるのでしょうが、何ともせつない話です。

Pukiさん、コメントありがとうございます。

ミルンも親子不和ですか。すぐれた児童文学が幸せな家庭から生まれるとは限らないのですね。そういえばジェイムズ・バリーやルイス・キャロルも幸福な結婚はしていませんね。

『マチルダ』、楽しいですよ。会場内に子供が多いので、若干の辛抱は必要ですが・・・。

まつこさま

ミュージカルのことは全然わからないのですが、マティルダは見応えがありますね。どうやら来年も学生連れで行くことになりそうなので、次回はもう少し真面目に見ることにします。そういえば、イメルダ・ストーントンの『スウィーニー・トッド』を見忘れました。。。

ショウガネコさま、コメントありがとうございます。

私もちょっと気になっていたんですよね、『スウィニー・トッド』。マイケル・ボールが出ているし。でもちょっと暗い話で、うめぞうが恐がりそうなのでやめときました。

PodcastでTom Stoppardのインタビューを聞きました。Parade's End、見たいです〜。DVD化を楽しみにしたいと思います。

バーミンガム、いかがでしたか?

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