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2012年3月 5日 (月)

孤高のアンチ・ヒーロー:『コリオレイナス』

まつこです。

レイフ・ファインズの初監督映画を見に行ってきました。シェイクスピアの最後の悲劇『コリオレイナス』の映画化です。セルビアでロケをし、旧ユーゴ、アフガニスタン、イラク、アフリカなど、不毛な内乱で国土も人心も荒れ果てた現代の歴史を映し出す映画でした。

Coriolanus_poster

[イギリスでのポスター]

レイフ・ファインズが演じるのは冷酷で残忍な軍人コリオレイナス。貧困と飢えに苦しむ市民の不満を武力で抑え込む独裁政権の手先として嫌われていた軍人が、敵対する外国との戦いで戦果をおさめると、一躍国民のヒーローに。けれど大衆を侮蔑する誇り高すぎる軍人は、政治的取引の妥協も、大衆心理への迎合もできず、国を追われ、仇敵の軍隊を率いて祖国に復讐する―。

Photo

[仇敵オーフィディアスを演じるのはジェラルド・バトラー]

いっさいのセンチメンタリズムも許さぬ、暴力と緊張感にあふれた映画でした。主人公レイフ・ファインズの母親を演じるのはヴァネッサ・レッドグレイブ。血に飢えた軍人と、彼を育てた気性の激しい母。誰からも共感されない、誰からも好かれない役を、圧倒的な存在感で二人とも演じていました。

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[名優同士のぶつかり合いの迫力がある母息子の対立場面]

「シェイクピアの登場人物の中で最も愛されない人物だから興味を持った」とレイフ・ファインズはインタービューで語っていました。最後の場面は、トラックの荷台にどさりと放り出される血まみれの主人公の死体。この徹底したアンチ・ヒーローぶりにレイフ・ファインズの役者としての自負がうかがえる・・・

この映画で、唯一不満なのは邦題です。『英雄の証明』なんて一昔前の角川映画みたい。『野生の証明』(1978)と『汚れた英雄』(1982)を足して二で割ったような邦題です。シェイクスピア劇としては『コリオレイナス』では知名度が低すぎるということなのでしょうか。

ま、それ以外は、レイフ・ファインズのファンとしては満足のいく映画でした。しかし、明るくなった客席で隣の席のうめぞうを見たら、青ざめて震えています。生々しい流血場面の連続に貧血を起こしたようです。気の弱いうめぞうを同伴するには不向きな映画でした。蒼白になっているうめぞうを見て、次は何か甘いロマンティックな映画に誘ってあげようと思いました。

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