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2012年2月10日 (金)

インフレ目標

またまたまた、うめぞうです。スミマセン…

今日の新聞によれば、FRBは長期的な物価上昇率の目標を「2%」とする事実上のインフレ目標を導入したそうだ。米国の物価上昇率は、景気低迷で2014年まで2%以下になる見通しのため、2%になるまで金融緩和を続ける姿勢を鮮明にしたという。そして何事につけアメリカの真似をしたがる日本でも、これに追随しようとする動きがあるようだ。

これを読んだ時、うめぞうの頭には「ん?」という疑問符が浮かんだ。たしかに経済が2%弱のインフレ状態を保持できれば、望ましいだろうとうめぞうも思う。問題はそのための手段だ。いまだに経済政策を担当する人々は金融緩和によってインフレが誘導できると考えているらしい。しかし、過去20年間の日本の経済停滞は、まったく別のことを教えている。現在の先進国のインフレ率は、中央銀行が市中に供給する通貨量、いわゆるマネタリーベースにはあまり敏感に反応してくれない。むしろインフレ率と強い相関性をもつのは賃金の動きだ。

国連UNCTADのチーフエコノミストであるフラスベックは欧州12カ国(ベルギー、ドイツ、フィンランド、フランス、ギリシャ、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、オーストリア、ポルトガル、スペイン)の賃金と物価の変動率を過去50年間にわたってグラフにしている。これを見ると、両者の動きは見事なまでに一致している。

他方、労働生産性と名目賃金の変化を見ると、1995年から2007年まで日米欧いずれにおいても労働生産性は右肩上がりで向上している。1995年を100とすると、2007年は日本120、米国125、欧州110といったところだ。かたや賃金はというと、日本95、米国165、欧州130で、とてつもなく大きな差が付いている。日本だけが労働生産性の向上に逆行して、賃金が下がり続けてきたのだ。こんな賃下げが続いていれば、いくらゼロ金利で市場にマネーを供給してもインフレなどは生じようがない。欧米のように労働生産性の伸びが賃金に反映する仕組みがあってこそ、初めて利下げがインフレ誘導力を持ちうるのだ。日本の「インフレターゲット論者」たちは「一段の金融緩和」などではなく、「最低賃金の引き上げ」や「不安定雇用の解消」をこそ強く要求すべきなのだ。

最低賃金を上げるなどというと、企業はきまって、こんな不景気に賃上げなどされたら、ますます企業経営が苦しくなり、それによって結果的に失業者も増えるだろう、と警告する。しかし、イギリスでは1999年に最低賃金制度が導入された後、年率平均6%のペースで最低賃金が引き上げられ、今では当時より6割くらい高くなっている。しかし、それによってむしろ景気は良くなり、失業も増えなかった。酷な言い方になるが、最低賃金をあげることで持たなくなる会社は、むしろ、より付加価値の高い分野に再編される方が良い。

ついでに言うと、この10年、EUの中で賃金の伸びがもっとも抑制されてきたのがドイツだ。国内の賃金抑制による競争力向上は、それだけ見ると立派に見えるし、ドイツもそのことに胸をはる。しかし、ドイツの生産物が南欧諸国に比べて25%、フランスと比べても20%も安く作れるようになると、国際収支にアンバランスが生じるのは避けられない。通常ならそのアンバランスは、日本の場合と同様にドイツの通貨が切り上げられることによって調整される。しかし、共通通貨を使っていると、これができない。このアンバランスが今回の危機の大きな原因の一つだ。だから、ドイツは日本と同様に、自国の賃金を上げ、競争力の差を縮める努力をすべきなのだ。

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コメント

賃下げではなくむしろ賃上げ、大賛成です。まさに貧すれば鈍する、の負のスパイラルに陥っているような気がします。公務員給与カットも心配ですし、安易な犯人探しにますます拍車のかかる大阪市制も心配です。。。

pukiさん、コメント有難うございます。
まつこが忙しくしていて、なかなかブログに手が回らないので、駄文を書いています。でも、このままでは視聴率低下に拍車がかかる…と心配していたら、オー、pukiさんが読んでくれていましたか。感謝感激です。少ない読者を大切にしていくのが、うめぞう商店の基本方針ですので、今後ともどうぞよろしくお願いします。
競争力の強い国や個人が複雑な社会の全体像を描けなくなるのは困ったものですね。そのうち、奴隷の弁証法が彼らを罰することになるでしょう。大阪市から若い先生たちが逃げ出すのは当然ですね。

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