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2012年2月 7日 (火)

ポピュリズムの罠

またまたうめぞうです…

まつこは仕事に追われて、なかなかブログに手が回らない。あまり、うめぞうの記事ばかりが続くと、ただでさえ少ない読者が離れていってしまいそうだが、まつこ復帰までもう少しなので、今しばらくご容赦願いたい。

民主党政権は公務員給与を平均 7.8% 引き下げる特例法案を国会に提出した。人事院勧告がそもそもマイナスなので、これが通れば8% を超えるカットだ。400万円の収入から32万円減れば相当な緊縮効果が生じる。うめぞうの目には見当はずれの愚策に映るが、国民はこの国が役人天国だと信じこまされているため、反対運動はあまり盛り上がっていない。

そこでちょっとデータを覗いてみよう。OECDのI-Libraryというネット図書館に行くとGovernment at a Glance 2011という国際比較データが簡単に見られる。ひと目でわかる各国政府といったところか。

これを見ると2008年の公的部門の雇用者数(労働力人口に占める割合)は以下のとおり(最初の数が公務員general government、あとの数が公的部門public corporations。日本の国立大学法人の職員などはこちらに入る)。

ノルウェー   34.5% (29.6+4.9)

デンマーク   31.5% (28.7+2.8)

フランス       24.4% (21.9+2.5)

オランダ      21.4% (12.6+8.8)

カナダ         18.8% (16.5+2.3)

イギリス    18.6% (17.4+1.2)

アメリカ       14.6% (区別なし)

イタリア       14.3% (区別なし)

ドイツ     13.6% ( 9.6+4.0)

スペイン      13.0% (12.3+0.7)

日本      7.9% ( 6.7+1.2)

この一覧表には計30カ国がリストアップされているが、日本がダントツの最下位だ。

国・地方の総支出に占める公務員の人件費の割合はOECDのデータにはないが、国公労連の計算によると、2009年については日本が15.0%で、これも最下位となるそうだ。「英米は小さな政府」と思っている人が少なくないが、アメリカは26.2%、イギリスは23.5%で、日本とは比べものにならない。

ちょっと面白いのが公務員の年齢構成だ。中央官庁の公務員のうち50歳以上が占める割合は、上に挙げた各国では以下のようになっている(2009年、ただしスペインのみ2005年)。カッコ内は、全労働人口にしめる50歳以上の労働者の割合だ。

イタリア       49.2% (40.8)

ドイツ     42.2%  (28.0)

アメリカ       41.6%  (30.1)

デンマーク   38.0% (27.1)

スペイン      36.5% (?)

ノルウェー   36.4% (28.6)

オランダ      34.7% (25.6)

カナダ         34.0% (27.8)

イギリス    31.2% (26.6)

フランス       30.5% (24.3)

日本     25.0% (37.9)

このデータから言えることは

第一に、日本の総労働人口に占める50歳以上の労働者の割合は、イタリアと並んでダントツに高いということ、

第二に、日本の中央官庁に占める50歳以上の公務員の割合は、他のOECD諸国に比べてダントツに低いということだ。

日本では天下り役人への風当たりが強い。うめぞうも、現状のままで良いとは思わないが、50歳少し過ぎた所で同期の入省組から次官が出ると、同級生たちがいっせいに外に出ていくという雇用慣行は、公務員の高齢化による人件費圧迫に一定の歯止めをかけている側面もある。天下りを禁止するなら、公務員が定年まで働く権利を保証する必要があり、そのためには他国と同様に役人の高齢化を覚悟しなければならないだろう。

日本の公務員は、労働基本権の柱である団体交渉権が一部制限されている。ILOは繰り返し勧告を発しているが、日本政府は無視してきた。その代償措置として設けられているのが人事院の給与勧告だ。したがってそれに上乗せして特例法案で給与カットを行なうのは憲法違反の匂いさえする。

私立学校などで人事院勧告に準拠して給与を定めているところも多くあり、国家公務員給与の引き下げは地方公務員のみならず、やがて民間への賃下げ圧力として顕在化するだろう。フランスでも、イギリスでも、そのことがわかっているから、公務員のストに対しては広い国民が支持をする。ロンドン在住の親友Oさんによると、昨年11月30日のイギリス公務員ストには200万人が参加したそうだ。比較的地位が安定している労働者こそ、賃上げ闘争の先頭に立つべきで、その労働分配率が上がることによって消費が回復し、多くの民間企業も景気回復の恩恵をこうむることになる。今、早急になさねばならないことは、民の懐を暖め、消費マインドを煽ることであり、給与を下げるなどというのはまったく方向違いだ。

ユーロが不安定化し、ソブリン危機が深刻化している中で、公務員給与を下げて消費税を上げれば、97年の橋本行財政改革の二の舞になるのではないか、とうめぞうは危惧している。橋本改革も長期的政策としては正しかった。消費税もいずれ上げるべきだ。しかし、そのタイミングと手順と説明の仕方が決定的に重要だ。安易な賃下げは、消費マインドを冷え込ませることで、給与を節約した以上に税収減をもたらし、結果として財政赤字を拡大してしまう。税金を取るなら、まずは金融部門でしこたま儲けた人たちに白羽の矢が立つべきだろう。

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