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2012年1月13日 (金)

金は天下の回りもの

うめぞうです。

前回の続きをもう少し。

昔から、金は天下の回りものという。働いて金を得た人は、それで物を買い、金は次の人の手に渡る。売り手がいてはじめて買い手はものを手に入れることができる。しかしまったく同様に、買い手がいるからこそ、売り手もまた金を手にいれることができる。これによって売り手は買い手になることができ、また買い手も売り手になることができる。

ところがこの世には、もう一つ別に、「節約は善、浪費は悪」、あるいは「貯蓄は善、借金は悪」という倫理観がある。

Keynes_2 

[ケインズ(John Maynard Kaynes)はこんな顔。ちなみにケインズにも弟がいました。軍医でダーウィンの孫と結婚し、イギリス文学研究もした人です]

今ここに、自分の稼ぎを自分で使わずにせっせと貯め込んでいる兄と、その兄から借金をしながら収入以上の消費生活を楽しんでいる弟がいるとしよう。どこの親でも兄を褒め、弟を叱るだろう。だれも兄と弟が互いにもちつもたれつの関係にあるとは思わない。早い話、親は弟に向かって「お前がそうやって消費できるのは、兄さんが働いてお金をためてくれているからだぞ」と説教することはできる。ところが兄に向かって「お前がそうやって働いていられるのは、弟がせっせと消費してくれているからだぞ」とは言えない。だから個人のレベルで見れば、兄と弟は交換不可能で、非対称な存在だ。

ところが経済学の目で見ると、ちょっと話は違ってくる。「弟が収入以上に消費し、つまりは借金ができるのは、兄が収入を使い切ることなく貯蓄をしてくれるおかげだ」という事実と、ちょうどそれを逆にした「兄が収入を使い切ることなく貯蓄することができるのは、弟が収入以上に消費し、つまりは借金をしてくれるおかげだ」という事実はマクロ的にはコインの両面にすぎず、兄弟は相互補完的な依存関係にある。ところがやっかいなことに、弟が兄に依存しているという事実はミクロからの類推ですぐに理解してもらえるが、兄が弟に依存しているという事実はミクロからすぐには類推できないために、なかなか分かってもらえない。

しかし、兄と同様、弟もまた働くばかりで金を貯め、一向に消費をしないと、マクロ的には何が起こるか。たしかにミクロ的には、その一家は資産を増やし、大いに栄えるだろう。父親も自慢の息子を得て幸福だ。ではそういう一族がどんどん増えて一国がすべてそのような家族によって占められたらどうだろう。総所得のたとえば半分が貯蓄に回れば、残りの半分しか消費に回らず、単純に言えば総生産物の半分が売れ残ってしまうだろう。これを売ろうとすれば外国に輸出するほかない。しかしもし外国もまたそんな国ばかりになればどうだろう。多分、兄の会社は物が売れなくなり、兄の給料を下げる。場合によって兄は失業者になるかもしれない。その時になってはじめて、弟が兄の貯金を下ろしてせっせと兄の会社の製品を買ってくれていたことのありがたさが分かる。

うめぞうは経済学者じゃないから、あるいは誤解している点もあるかもしれないが、こうした物の見方を、うめぞうはケインズから学んだ。マルクスとケインズは経済がトータルな循環過程であり、複雑極まる相互依存関係の網の目からなりたっていることをわからせてくれた。こうした観点から見れば、危機のたびに節約と緊縮を一方的に迫り、需要の掘り起しに無策であったIMFや今回のドイツ政府のユーロ救済策は、非常に問題が多い。墓の中のケインズはきっと嘆いているはずだ。「金は天下の回りもの」、「江戸っ子は宵越しの金を持たない」なんて日本のことわざを耳にしたら、ケインズは江戸時代の日本人こそは、経済学の本質をもっともよく理解していた人々だったと膝を叩いて喜んだことだろう。

まつこの解説

私がお買い物をするとミクロ経済(我が家の家計)では貯金が減るが、マクロ経済のレベルでは需要拡大、経済活性化という貢献をしたということになる。フフフ、今日買ったのはSee by Chloeのセーターです。

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コメント

なるほど! 目からウロコでした。

しょうさん、おひさしぶりです。お元気ですか。
コメントありがとうございます。
難しい世の中になってきましたが、それぞれのところで小さな楽しみを見つけながら、少しでも良い年にしたいですね。

うめぞうさんのお蔭で、「ユーロ危機」の理解が深まりました。兄と弟のたとえ話がとてもわかりやすいです。まつこさんと同じく、しっかり者の長女だけど、こと消費活動にかけては弟気質の私。今度お買い物を咎められた時には、ユーロの話をして煙に巻きたいと思います。

Pukiさん
コメントをありがとうございます。
日本人が消費にもう少し貪欲になるのは人類への貢献!
使えるお金がある人は、貯金してマネーゲームのショバ台に消えるくらいなら、自分と家族のために大いに使いましょう。

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