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2012年1月24日 (火)

格付け会社とはなにか?

うめぞうです。

金融や国債の危機が表面化すると、一躍注目を浴びるのが債券などの信用度をランクづけして公表する格付け(レーティング)機関だ。アメリカのSEC(証券取引委員会)は現在9つの機関を公認組織(Nationally Recognized Statistical Rating Organizations)に指定しているようだが、じっさいにはS&P、ムーディーズ、フィッチという3つの会社がほぼ市場を独占している。

Buffett460

[ウォーレン・バフェットはムーディーズ(Moody's Investors Service)の筆頭株主。世界一のお金持ちだけれど、倹約家としても有名。財産の99%を慈善活動に寄付すると公言している]

そのS&Pが先日、フランス国債その他の格下げを発表したことはすでに書いた。フィッチは今年中のフランス国債の格下げはないと言っており、今回の格下げは今のところそれほど大きな影響を与えていないようだ。しかし、おりしもEUの改革案が軌道に乗るかに見えたタイミングでの格下げだ。ドイツでは政治家や経済学者から批判の声が上がった。

昨年12月のEU首脳会議では、英国が拒否権を発動して新条約への合意は得られなかったものの、財政赤字ルール違反国への自動制裁規定、常設の安全網となるESM創設の前倒し、各国中央銀行からIMFへの融資など、とりあえずユーロ圏17か国で改革が動き出した。その矢先のS&Pの発表だった。

S&P側の言い分はこうだ。自分たちは事実に基づき信用リスクの分析を行い、投資家たちの判断材料となる意見を表明しているにすぎない。政治的影響力を行使する意図などまったくない。われわれに過度な影響力を持たせている責任はむしろ政治にある。なぜなら、銀行や投資家を監督するために、資金運用に一定のレーティング条件を課しているのは、われわれではなく政治家だからだ(S&P責任者モーリッツ・クレーマー)。

たしかに年金基金なども、これこれの投資はAA+以上の債券で運用しなければならない、といった規則を設けている。格付けが下がると皆が一斉に反応せざるをえない理由がそこにある。とはいえ、ヨーロッパの政治家や経済学者で、3大機関に根強い不信感を表明する人は少なくない。

理由の第一はその分析能力が低いことだ。現在の危機の源をたどっていくと2007-8年のアメリカのサブプライム・ローン破綻と、リーマンショックにいきつく。しかしS&Pは、事実上のジャンク債にAAAを付けたり、破たん直前のリーマンに投資適格級の格付けを与えたりしていた。これはそれ以前のエンロンやワールドコムなどの巨額破綻企業についても同様だ。今回のEU危機でも、信用度の低いギリシャ国債に彼らは実体以上の格付けを与えていた。いずれの場合も、遅くとも数年前に警告してこそ、プロといえるだろう。皆が浮かれているときにあおり、逃げごしのときに危険を知らせるというのでは素人判断と変わりない。

しかも、「事実」に基づく分析と豪語する割には、格付けの根拠となる事実と分析手法については企業秘密として公表していない。それでも、彼らはそれを「事実の記述」「意見の公表」だと言い張り、けっして「投資の推奨」だとは認めない。それによって責任が回避できるからだ。「この仕組債はトリプルAだとは言ったが、投資しろとは言っていない。投資判断はあくまで自己責任」という論理だ。

理由の第二はそれが寡占状態にある営利企業で、背後に巨大な資本が控えていることだ。S&Pはメディア企業マグロウヒルの子会社だし、ムーディーズにはウォーレン・バフェットが、フィッチにはフランスの大企業フィマラックがついている。はたしてこれが公平な事実を客観的に分析する公共的機関に相応しいステータスだろうか。

しかし、こうした批判とは別に、考えておかねばならないことがある。それは、経済において「事実」とは何か、という経済哲学的問題だ。実体から見ればいつかは破綻するジャンク債であっても、全員が実体に反してそれをトリプルAだと信じれば、そのジャンク債は収益をもたらす有望な債券になりうる。このことは「事実」なのか、「虚妄」なのか。皆が事実だと信じている間は事実で、皆が虚妄だと見抜いた時点で虚妄になるのか。もしそうだとすれば、事実はいつから虚妄になるのか。今日の事実が、明日には虚妄になるとしても、なぜ格付け会社が「今日のところは事実です」と言ってはいけないのか。経済学は、はたして、またどのようして、事実と虚妄を区別できるのか。

格付け会社の功罪は、うめぞうにそんな疑問を次々と投げかける。

まつこの解説

なんだか妻の機嫌が悪い。理由はよくわからないけれど、自分が悪いような気もするので、とりあえず下手に出ておこう。(夫の格下げ)

なんだか妻の機嫌が良い。お夕飯のおかずの種類も多くてうれしいし、自分も良い夫みたいな気がする。(夫の格上げ)

家庭における独占的かつ強力な格付け機関は妻である。妻の機嫌の良し悪しに客観的根拠を求めても、答えのない世界に迷いこむだけである。とりあえずトリプルAの夫になることを目指して生きよう!

ちなみに本物のMoody's Investors Serviceはムードで格付けを決める「気分屋さん」という意味ではありません。創始者がたまたまJohn Moodyという名前だったそうです。

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