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2011年10月15日 (土)

やわらかな人

まつこです。

大阪の老人ホームに住む母を、2週ぶりに訪ねました。

Photo

[今日の大阪は雨でした。母の住む老人ホームです]

職員の方が「(病状が)少し進みましたね。でも穏やかに暮らしていらっしゃいますよ」と言ってくださいました。病気の進行については、ある程度覚悟はしていましたが、もの盗られ幻想も帰宅願望も徘徊もないまま、何をしてもらっても職員の方にひとつひとつ丁重にお礼を言い、静かに日々を過ごしているようです。

でも確かに病状は進んでいて、もうテレビを見ることもなく、本や新聞を読むこともできなくなりました。

夏のトスカーナ滞在中に、うめぞうが母に絵ハガキを送ろうと言い出しました。私は「どうせ文字を読まなくなったし、イギリスとイタリアの区別もついていないから、送ってもムダだよ」と言ったのですが、それでもうめぞうはフィレンツェの絵ハガキに何か書いていました。

Photo_2

[整理ダンスの上に今日も飾られていたフィレンツェの絵ハガキ]

帰国して母を訪ねたら、その絵ハガキが目立つ位置に飾られていました。母は今日もうれしそうにそれを眺めながら、「いかにも外国って感じね。遠いところに行ったのね。私も返事を書こうかとも思ったんだけど、なんだか、どう書いたらいいのかよくわからなくて・・・」と言っていました。

あの夏の日、「絵ハガキなんて書いたってムダだよ」と言ったわたしに、うめぞうは「いいんだよ。文字なんか読めなくたって。自分のことを思っていてくれる人がいるってことが分かるだけでいいんだよ。ハガキが届いた時うれしい気持ちになればそれでいいんだよ」と言っていました。うめぞうの言葉通りでした。

今日の夕刻、私が東京に帰ろうとすると、母が「一人で帰るのはかわいそうね」と心配そうに言うので、「大丈夫だよ、帰ればうめぞうもいるし」と言うと、母は「そうね、うめぞうさんいるものね。お夕飯作っていてくれるかしらね?」と急に明るい表情になりました。そして冗談っぽく「うめぞうさんはご飯作っていてくれるかしら、と私が気にしてたと言ってみてちょうだい」と言ってコロコロと笑っていました。

そして「あの人は『やわらかな人』ね・・・。そう、本当に『やわらかな人』だと思うわ」と、しみじみとした口調で言うのです。

今日の大阪は雨でした。多くのことを忘れ、いろいろなことが認識できなくなりながらも、人の優しさに心から感謝する母と、そんな母を柔らかな心で見守り続けていてくれるうめぞう。母の病気は悲しいけれど、良い家族に恵まれて、私は幸せだと思ったら、なんだか泣けてきてました。秋の雨の中、涙でぬれた顔を傘で隠しながら帰路につきました。

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コメント

私もなんだか泣けてきました。。。「やわらかな人」、心に沁みる美しい言葉です。

Pukiさん、コメントありがとうございます。

母の言う「やわらかな人」とは、より一般的には「軟弱な男」にあたるかと思います(笑)。ものは言いようですね。

まつこさま こんにちは

お母様の病状が進行されて、さぞご心配でしょう。
人への感謝を決して忘れないお母様だからこそ、老人ホームの職員の方々をはじめとする周りの方々からも大事にされるのでしょうね。心って行き来するものなんですよね。

うめぞうさまの「やわらなか人」ぶり、お母様の観察通りですよね。ロンドンでのお二人を思い出しつつ、思わず顔がほころぶ私でした。仲良し夫婦万歳。

ショウガネコさま、コメントありがとうございます。

母が落ち着いて暮らしてくれて、老人ホームの職員の方にもよくしていただいて、家族としては本当に安堵しています。

我が家はうめぞうが「柔」、私が「剛」。柔よく剛を制す・・・とはならず、ひたすら柔が剛に従っています。それが円満の秘訣でしょうね。

こんにちは、ご無沙汰しておりました。
お母様、症状は進んでも落ち着いてらっしゃるようで何よりです。
とても環境の良い状態にあるのでしょうね。
認知症が進んでも、必ずしも徘徊や被害妄想が出るわけではないと言います。
それは、良い介護のおかげなんでしょうね。
うちも、いつかその日が来たら、そういった施設に巡り会いたいです。

絵莉さん、コメントありがとうございます。

ほんとうに、落ち着いているというのが何よりです。

老人ホームの選択は、いろいろな本を読んでみたりしましたが、結局は「家族の近く」か「住み慣れたところ」の二者択一でした。いざとなるとあまり選んでいる余地はない、という感じがしました。

でも家族が頻繁に顔を出せる、というのがいちばん重要な条件のように思います。介護はプロにおまかせし、家族は愛情を注ぐ、というのがいいように思っています。

こんばんは。
お母様、うめぞうさん、まつこさん、皆さんの思いがうまくかみ合っていてとてもいいなーと思います。
若い時はちょっと物足りなさを感じますが、年をとって来たら男は「やわらかな人」がいいですね。
私も自分の夫と父のやりとりを見ていて、つくづくそう思います。
夫が間に入ってクッションになってくれているなーと。
まつこさんとうめぞうさんの関係は、とてもウチの夫婦と似ているように思います。(すみません、一緒にしちゃって)

介護はプロにお任せし、家族は愛情を注ぐ。
本当にそれが理想ですね。
今のところまだウチは介護の必要はなさそうですが、いつかそんな日が来たら、そうしたいと思います。
とはいえ、現在も父の世話はほとんどお手伝いの人に任せていて、週に二回だけ父の好物を作ってあげるだけの娘ですが。

hiyokoさん、コメントありがとうございます。

うめぞうも以前からFukunosukeさんに同志としての連帯を感じているようですよ。両家とも『婦唱夫随』ですから。

Fukunosukeさんの水墨画を拝見しました。あの深い峡谷の光が射しこんだところに描かれたhiyokoさんの姿に妻への愛情を感じますね~。(我が家ではうめぞうのお手製お弁当に、腐敗防止の保冷剤が輪ゴムで添えられているところに愛情が感じられます。)

親の老後も、我々自身の老後も、婦唱夫随でのりきっていきましょう!

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