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2011年8月30日 (火)

The City Madam/ Cardenio

まつこです。

あまりの寒さのせいかちょっと風邪気味だったのですが、ストラットフォードまで出かけて芝居を2本見てきました。The City MadamCardenioというあまり上演されることのない作品です。

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[いかにもストラットフォードらしいホテルに泊まりました]

フィリップ・マッシンジャー作The City Madam(1632年)は17世紀の前半、富を手にした勃興市民階級が、上流階級を真似して豪奢な生活を誇示する様子を風刺した喜劇です。夫はせっせと働く一方、妻は舶来のファッションで着飾り、贅沢なおいしい食事をし、星占い師の予言に夢中。そんな当時のロンドン・マダムが登場します。「奥様、50歳とは思えないスタイルの良さ!」とかお世辞を言われて、「あら~、顔に比べると体形のほうがまだましかしら、ホホホ」というような、21世紀のマダムたちも身につまされそうなセリフも出てきます。

全体としては拝金主義を批判する筋書きになっているのですが、この上演で圧倒的な力強さで演じられたのは「金を増やす喜びに取りつかれた男」のデモーニッシュな欲望です。散財して文無しとなり、卑屈になっていた男が、突如、財産を相続することになると、急に冷酷で不気味な金の亡者に変貌します。友情も信頼も要らない。欲しいのは金だけ。金を増やしたいという欲望が暴走する様に比べたら、マダムたちの物欲なんてかわいいものに見えてきます。

資本を増やすことが自己目的化する危険は、資本主義の黎明期にすでに文学作品の中に書き込まれていたのだと改めて思いました。

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[一瞬晴れても、またすぐに雨。雨傘のほかに、晴れたら空気が透明でまぶしいのでサングラス、劇場でプログラムを読むために老眼鏡、芝居が始まったら乱視矯正用メガネ。年取るとだんだん荷物が増えます]

1日2本観るのはきついかな、と思ったのですが、おもしろい芝居ならへっちゃらです。夜に見たCardenioという作品は、シェイクスピアが共作したのかもしれない作品を、18世紀の人が再構築して、さらにそれを材源の『ドンキホーテ』を参照して新たに再生したとというものです。作品の由来はこのように複雑なのですが、登場する人物は明快なるラテン系男子です。

片や無節操に女好きなラテン男。もう一方は純情過ぎるラテン男。この二人の友情が裏切りによって壊れたとき、濃くて派手なドラマが展開します。レイプあり、狂乱あり、男装あり、スリリングになりそうな道具立てならなんでも使ったというような筋書きです。尼僧を棺桶に入れて修道院から誘拐する場面まであります。これって、本当にシェイクスピアが書いたの? 見ていると、そんなことはどうでもいいじゃん、という気分になってきます。これぞラテン気質。

土臭いスペイン音楽がたっぷり聴けて、娯楽性満載の一夜でした。劇場から出ると、シーンと静かなストラットフォードの田舎町にエイヴォン川を渡る冷たい風が吹いています。しかし熱いラテン男の情熱とスパニッシュギターにのせて響く深い歌声が心の中に残り、気がつくと風邪も治っていたのでした。

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