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2011年8月17日 (水)

『背信』

まつこです。

『フォー・ウェディングズ』でヒュー・グラントにふられる役を演じているのを見て以来、クリスティン・スコット・トーマスはお気に入りの映画女優です。もちろん『イングリッシュ・ペイシェント』のヒロイン役も美しく切なかった。

今日はそのスコット・トーマスが出演しているハロルド・ピンターの『背信』を観に行きました。

Photo_2

[若作りの服装は「痛い」という印象を与える危険性があるのでほどほどに・・・]

「結婚→浮気→告白→愛人との別離→結婚生活の破たん」という出来事を、時間をさかのぼって、事の結末から事の発端へという方向で描くのが、ピンターの『背信』です。

二人きりで向いあう男女、あるいは男同士が、心理的優位をめぐって、まるでチェスの駒を動かしあうように、言葉を交わしあう。それぞれの対話の中で、嘘、隠された事実、抑え込まれた感情が浮かび上がってきます。

設定では、ヒロインは30代半ば(あるいは後半)から一場面ごとに少しずつ若返り、最後は20代後半で結末を迎えることになっています。しかしスコット・トーマスは1960年生まれの51歳。十分にきれいなのですが、うーん、やっぱりこの役をやるにはちょっと無理がありました。

なかでも二の腕。若くて太っているのと、50歳過ぎてゆるんできた二の腕は与える印象が違うと、今日は確信しました。優雅な美貌のスコット・トーマスとはいえ、この自然の節理からまぬれてはいません。

愛情の破綻に向かう必然の流れをさかのぼりながら、無機質な印象の舞台に、ひりひりとした心の痛みが描きだされる。そのドラマの内容と、一場面ごとにスコット・トーマスがより若作をしなければならない痛々しさが、妙に重なりあってしまうのです。

「若く美しい新妻が夫の親友から激しい求愛を受ける」という最終場面で、スコット・トーマスの二の腕が新妻にしては熟し過ぎていました。

気がつけば観客席は70代とおぼしきご夫婦が多く目立ちます。このピンターの作品は1978年作。その頃、「同世代のドラマ」として男女の心理の危うさを見た人たちが、老いた今、そのリバイバルを見に来たのかもしれません。

終演後、いたわりあいながら劇場を後にする老夫婦たちを眺めながら、「痛み」も「たるみ」も経験して老いを迎える、その時間の流れには決して逆らえない、時間に逆行することの痛みが『背信』のテーマなのかも・・・、としみじみと一人、ロンドンの夜に嘆息しました。

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コメント

まつこさま

トスカーナでのヴァカンスを満喫され、いよいよロンドンで芝居三昧の日々ですね。
トスカーナとロンドン。180°違う都市を簡単に往来できるのは、ヨーロッパならではの面白さですよね。

二の腕。そういう所に目が行ってしまうの、分かります。
Charlotte Rampling の美貌が大好きなのですが、8年前 NT で久しぶりの英国舞台を踏んだ彼女の姿を拝みに喜び勇んで出かけたことがあります。イヴニングドレスの大きく開いた背中のお肉が、肩甲骨に沿ってだらりと垂れていたのが衝撃でした。嗚呼。

アパートの前(ですか?)のまつこさま、おしゃれではあっても、決して若作りなんかじゃありませんよ。ばっちりです。

ショウガネコさま、コメントありがとうございます。

ストラットフォードに一泊で出かけていて返信が遅れました。すみません。ショウガネコさまもすでにロンドンに向かっておられるころでしょうね。

シャーロット・ランプリングのように「スジとカワだけ」のような肉体でも、背中がたるむのでしょうか・・・OMG。

ストラットフォードでも劇場の観客は、ざっと70%以上が60歳以上でした。イギリス演劇はもはや老人向け文化なのかもしれません。うめぞうは60歳をちょい超えているので、シニア割引適用されて、だいぶチケットが安くなります。私もそれまでがんばって通い続けるのかな・・・と、新しい劇場でふと考え込んでしまいました。

スコット=トーマスは私も大好き!フランスでも人気ですよね。でも「ずっとあなたを愛してる」位から、やはり老いたな、、、という感じでした。(自分は棚上げ。)旅を満喫されたようで嬉しいです。旅先では同行者と普段に増して一緒なので、いろいろと衝突も避けられません(?)が、それも良い旅の思い出かも、、、。

mgmさん、コメントありがとうございます。

夫と別居することを決めた30代後半(半ば?)の妻を演じる劇の冒頭はぴったりでしたよ。スコット・トーマス、やっぱりきれいだわ~、と思って見始めたんですけどね。50代で30代を美しく演じられればあっぱれです。しかし「少しずつ若返る」というピンターの芝居の仕掛けに、やや厳しいものがありました。

ロンドンにはツアーで来ているとおぼしき熟年カップルも目立ちます。「おとーさん、早くして!」と妻に叱咤されている男性諸氏の姿もちらほら。「50歳過ぎの旅はいたわりながら進むべし」が今回の教訓です。

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