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2011年3月21日 (月)

世界の中の一人

まつこです。

「世界が変わってしまった」――母は今回の地震をそう表現しました。

母の住む地域も計画停電の対象になりました。冬の厳しい寒さが残る今年の3月、暖房も照明も消えた家で、母が一人で過ごすのは無理。もはや一人暮らしは限界と判断しました。

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[人のいなくなった家は、写真で見ても寂しげです。小雪のちらつく寒い朝、母はこの家を後にしました]

介護認定更新の調査にいらっしゃる市の職員の方とケア・マネージャーさんにあらかじめ連絡をし、「地震、停電、原発事故という非常事態なので、独居の高齢者は遠隔地の家族、親戚のところに退避する」という「行政指導」を演じていただきました。

「世界が変わってしまったのだものね。私も世界の中の一人だから、変わらなくてはいけないわね。」母はこう言って、長年住み暮らした新潟の家を出て行くことを受け入れました。

その日のうちに大阪の弟夫婦にきてもらい、あわただしく荷物をまとめ、翌朝、雪のちらつく中を出発。

母をしばしば訪ねてくれていた母の幼なじみのお二人に、電話でその旨を伝えると、二人とも電話で号泣してしまいました。75歳を超えた高齢者にとって、突然、友人と別れることになり、再会の機会はもうないかもしれないという事実は、あまりに冷酷です。ですが、ゆっくり顔を合わせて、別れの言葉を交わし合う余裕を作れば、「行政指導」のウソがほころびたり、母の気持ちが変わってしまうかもしれません。母は、友人やご近所の方たちへの挨拶なしで、長年住み慣れた家を離れました。

母は今、弟夫婦の家にいますが、なれない環境に戸惑い、疲労の色を強めています。その母の面倒を見るのは、弟一家にとっても大きな負担です。一日も早く老人ホームに入居できるよう今、手続きを進めているところです。

私も明日から大阪に行き、母の精神的サポートと老人ホーム入居の準備をします。新しい環境という大きなストレスで母の症状はここで一気に進んでしまうかもしれません。母の記憶を、私たちのもとに一日でも長くとどめ置くために、私たちの幼かったころのアルバムなど持っていくつもりです。やがて薄れていく記憶のかなたに母は去っていこうとしています。その歩みが少しでも緩やかで、なだらかな道のりとなるようにと祈っています。

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[幼い日のまつこの姿を見て、母は記憶を手繰り寄せてくれるでしょうか・・・]

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コメント

まつこ様。

 お母様もまつこ様もご無事そうでホッとしました。

 お母様にとって大きな転機になってしましましたね。

 新しい場所でも、穏やか過ごせるようお祈りします。


 

しょうさま、コメントありがとうございます。

新潟から大阪に向かう車の中で、母が「本当は一人はイヤだなと思っていたの。新しい生活、楽しみだわ」と言ってくれたのが、救いでした。ホームに入ってからも家族との絆を感じ続けてもらいたいと思っています。

いよいよなのですね。
計画停電がきっかけでしたか。。。
胸が締め付けられる思いで読みました。
というのは、今回の計画停電、父の住む町は同じ丁目でさえグループが分断されていて、わけもわからない内に突然の停電があったそうです。しかも、夜7時から9時まで。
突然真っ暗になった部屋の中で、テレビも観られず、本も読めず、碁も打てず、パソコンも出来ず、話す相手もなく、お風呂も入れず、停電後のもろもろを考えると寝るわけにもいかず、孤独で不安な二時間を過ごしたそうです。
結局、考えた挙句、頭の中で碁を打っていたとか。
そんな話を父から聞き、ちょっとへこんでいたところでのこちらの記事だったので、涙が出てしまいました。
でも、お母様、すんなりと受け入れてくださったみたいで良かったですね。
古いお付き合いのお友達との別れの辛さを考えると、本当にかわいそうですが、幸いと言っては失礼ですが、認知症が多少は良い方に手伝ってくれるかもしれませんね。そうあってくれる事を願います。
お母様は元々学校の先生でしっかりされている方なので、ホームに入られてもリーダーシップを発揮されて、むしろ一人でいる時よりずっと張り切って生活されるかもしません。(私の友人のお母様がそうでした!)
これからのお母様の成り行きがとても気になります。

hiyokoさん、コメントありがとうございます。

ご高齢でお一人暮らしのお父様のこと、ご心配ですよね。それにしても暗闇の中で碁のことをお考えになるとは、あっぱれです!

あの(無)計画停電は、母にとっても痛手でした。計画停電の可能性が報道されて以来、何度も何度も電力会社のHPを見てハラハラし、さらに天気予報で雪だるまが見えたとき、「もうダメだ、大阪に移そう!」と決意しました。

先ほど大阪に来て、数日ぶりの母の姿を見ましたが、やはり元気がありません。明日から体験入居をして、週末に正式入居をする予定なのですが、私も付き添って、居室に簡易ベッドを入れてもらうことにしました。数日間は私も老人ホーム暮らしで、毎日、老人食を食べる事になります。なんとか新生活ソフト・ランディングさせたいので、ここは踏ん張りどころです!

まつこさま、

ののです。今彼の地におります。平穏無事な生活のありがたさを改めて感じておりまする。

お母様をとうとう大阪にお連れしたのですね。慣れない土地で慣れない言葉でお母様のストレスを考えると心が痛いですね。まつこさんもどうぞお疲れがでませぬように・・・。

ののさま、コメントありがとうございます。

今日から母は大阪の老人ホームに体験入居。母が大阪弁になじめるか心配だったのですが、ひとなつっこい感じがして、母も抵抗感はないようです。ちょっとホッとしています。

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