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2010年12月30日 (木)

老後生活のリハーサル

まつこです。

今年もいよいよ残りあとわずか・・・というところで、うめぞうが膝が痛いと言い出しました。整形外科で診てもらったところ「変形性膝関節症」。筋力低下など加齢がひきおこす、きわめてありふれた疾患だそうです。下り坂や階段を下りる時に、特に痛むそうです。我が家は坂の上にあるので、こうなるとどちらの方向にも出かけにくく、映画見に行こうとか、レストランに行こうという計画はすべてキャンセル。

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[うめ爺さんとご近所ランチその1。Fire Houseのハンバーガー]

やむなく、うめぞうは翻訳に精を出し、私はずっと読みたかった小説や視たかったDVDを家で楽しんでいます。合間にご近所を散歩し、途中でお昼ご飯を食べて、帰りに和菓子やケーキを買ってきて家で食べる。「ああ、老後はこんな生活になるんだろうなあ・・・」という予行練習みたいな日々です。

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[うめ爺さんとご近所ランチその2。田奈部で年越しそば。うめぞうはごまだれそば、私はニシンそば]

そんな地味な年末に観て、グッときたのが『ケンブリッジ・スパイズ』(Cambridge Spies)という、2003年BBCのドラマシリーズです。1930年代、台頭するヨーロッパのファシズムに対する反感から共産主義に傾倒した名門ケンブリッジ大学の学生たち。その4人が卒業後はエリート中のエリートとして、外務省、情報部、BBC、王室とイギリスの権力の中枢で働きながら、ひそかにソ連に機密情報を流していた・・・。

英国情報部の歴史的汚点とされる二重スパイ事件をもとに作られています。キム・フィルビーら「ケンブリッジ5人組」と呼ばれるスパイが、若者らしい純粋な理想主義や、裏切りへの不安、歴史の皮肉、冷酷な政治といった様々な要素が複雑に絡み合う中で、成長し、過ちを犯し、恐れ、泣き、怯え、不安の中で生き延びていく数十年を追いかけます。

魅力は重厚な映像美とイギリス俳優たちの底力を見せる演技です。石造りのケンブリッジ大学から始まり、イギリスの権力と権威を、若きスパイたちは切り崩そうとするわけですが、彼らの手法はその中核に入りこんで、内側からそれを崩壊させること。宮殿、外務省、大使館、紳士クラブなどの内部で繰り広げられる権謀術数。大英帝国の威光を見せつけるような場面の連続です。

キム・フィルビー(トービー・スティーブンズ)、アントニー・ブラント(サミュエル・ウェスト)、ドナルド・マクリーン(ルーパート・ペンリー・ジョーンズ)ら、正統派二枚目俳優らにまじって、異彩を放っていたのがガイ・バージェスを演じたトム・ホランダー。イートンからトリニティ・カレッジに進学したガイ・バージェスは『アナザー・カントリー』の主人公のモデルでもあります。ホモでアル中。エキセントリックな言動は、危険と背中合わせのスパイ活動をするにはあまりにも目立ち過ぎる。けれど、いざという時に、その言動に抜群の知性と育ちの良さがあふれ出てきます。

ソ連の対独参戦が伝えられた時には上機嫌で、紳士用品店の立ち並ぶジャーミン・ストリートの老舗ターンブル&アサーにふらりと入店。イートンのネクタイとトリニティ・カレッジのネクタイと、コミュニストの印である赤いネクタイを買い、3本を同時に締めて店を出る―。ヒトラーとの対戦という共通目標でイギリスとソ連が結び付いたとき、祖国イギリスへの否定しがたい愛情と、共産主義国ソ連への共感の間の矛盾が解消する。その喜びを表現する場面です。

イギリスのエリートたちは、イギリスを愛しながら、イギリスを裏切った。これが『ケンブリッジ・スパイズ』のテーマのひとつのようです。「裏切り者をロマンティックなヒーローに仕立てた」「クール・ブリタニア世代が軽やかに単純化した歴史」というような批判もありますが、イギリスのハンサム俳優たちの懊悩する表情と、イギリスの美しい景観をたっぷりと堪能できるドラマです。英国好きならリージョン・フリーのプレーヤーを買ってでもぜひ観ていただきたいDVDです。

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コメント

まつこさま

老後生活の予行演習だなんて。。。まだまだ若いモンには負けられません!

Cambridge Spies ご覧になったんですねっ! 私は去年見ました。これがお好きなら、Spooks、もしまだご覧になってないようでしたら是非お勧めです。MI5という邦題で日本でもBS11で放映しています(現在シリーズ6放映中)。英国ではシリーズ9が終わったところ。私は大ファンで、何度も見直しているほどです。大昔の Equus の舞台版と映画版主役(若者のほう)を演じた Peter Firth がすっかり老成して主役を張っています。Cambridge Spies の Rupert Penry-Jones も途中から参加します。(私は彼のファン!) 英国国内情報局のMI5が、英国を舞台に起きる様々なテロに立ち向かうのですが、ヨーロッパ情勢を知りたければこれを見て!と思うほど実にリアルでで、時々背筋が寒くなるほどです。スパイものの小説、芝居、映画、、、数多くありますが、私は Spooks が最高峰です(鼻息荒らし)。

実はこれから Spooks のシリーズ8最終話を見るところでした。思わず興奮して書き散らしてしまいました。スミマセン。

今年一年、ブログを通してしかお話していませんが、なぜかとても親しくお付き合いさせていただいたような気がしています。どうか来年もよろしくお願いいたします。良いお年を!

ショウガネコさま、コメントありがとうございます。

おお、やはりショウガネコさま、すでにご覧になっていましたか、Cambridge Spies! James BondといいJohn le Carreといい、諜報活動はイギリス文化の重要な一部ですね。Spooks、見ていないので、年明けにでもさっそく見てみます。うーん、はまりそうで怖い!

Rupert Penry-Jonesのファンということは、もしかしてショウガネコさん、美形好き? わたくし、イギリスの美形男優熱はとうに卒業したつもりでおりましたが、今回、Samuel Westにけっこうやられました。昔、舞台でHamlet見たときにあのお坊ちゃん顔はあまり好みでないと思っておりましたが、毛並みの良いゲイの美術史家という役どころはドンビシャ、グラリッときています。これから彼の演じるインテリ系中年男性の役をどんどん見てみたい(私も鼻息荒し)。

来年もアングロファイル・ミーハー系・ガールズ・トークにぜひぜひお付き合いください。

まつこさま

あけましておめでとうございます。今年はもっと良い年になりますように。

はい〜、わたくし、きっぱり美形好きです。一向に卒業する気配もありませぬ。もっとも、私の好きな美形トップは俳優ではなくて Led Zeppelin の Robert Plant (ロックの美神と言われた若かりし頃の)なんですが。
Samuel West も舞台、映画、テレビとあちこちで活躍してますね。残念ながら舞台を見たことはないのですが。BBC ドラマのDesperate Romantics にもちょっと顔を出してますよ。(ちなみに、Pre-Raphaelite Brotherhoodの話です。なかなか興味深かったです)

Spooks ご覧になったら是非感想を聞かせてくださいね。シリーズ最初の方は少々クサいところもありますが、Howard Brenton の脚本はさすがです。

またまた興奮してしまいました。新年早々。。。
どうぞ今年もよろしくお付き合いくださいませ。

ショウガネコさま、あけましておめでとうございます。

ショウガネコさんの美形好きは70年代からの筋金入りなんですね。

そういえば美形俳優の一人とされていた『アナザー・カントリー』のルーパート・エヴェレットは最近、大胆な美容整形をしたそうですね。コリン・ファースは『シングル・マン』出演のために、ダイエットしてモデル体型となり、トム・フォードのデザインの衣装を着こなしていました。80年代、90年代のヘリテッジ・フィルムの貴公子たちも、それぞれしわ・たるみ・くすみと戦わなければならない年齢になっています。これからが勝負です。「美しい老人」めざしがんばってほしいものです!

おくれまして、あけましておめでとうございます。

おお、トム・ホランダー。チーク・バイ・ジャウルのオールメール版「お気に召すまま」でシーリアをやってどんと有名になり、サム・メンデス演出の「三文オペラ」では主役をつとめてましたね・・・なんて、なんて昔の話だ・・・。

本年もよろしくお願いします。

wombyさん、あけましておめでとうございます。

そうですか、あの時のシーリアがトム・ホランダーだったのですか!今も舞台に出ているんですかね? 先日、『プロヴァンスの贈り物』という軽い映画をほろ酔い加減で観ていたら、一癖二癖ある不動産屋の役で出ていました。

こちらこそ今年もよろしくお願いします。

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