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2010年8月13日 (金)

七面鳥の焼き方

うめぞうです。

今回はまつこが先にロンドンに行き、うめぞうは東京に残り、たがいに1週間それぞれの仕事をすませてから、今週末にロンドンで落ち合い、それから10日間、二人でヴァカンスを楽しむという計画。

まつこはBL(図書館)に通って勉強するという触れ込みだったが、どうも芝居とショッピングと酒におぼれている様子。

われわれは外国に出かけていくとき、今でも職場に書類を提出することが義務づけられている。しかもその目的を明記しなければならない。正直に「観劇およびショッピング」でもいいはずだが、やはりひとかけらの見栄があり、なぜか今でも多くの人が「資料収集」、「研究打ち合わせ」と書く。遺跡発掘ならいざしらず、今時、資料収集や研究打ち合わせのために飛行機に乗る人はいない。書類を受け取る事務側もそんなことは百も承知だが、正直に書かれても困るのである。

そんな日本の偽善的習慣に反発したあるフランス人教員は、クリスマス休暇に帰国するのに無意味な書類の提出を求められ、こう書いた。「渡航目的:フランスの一地方都市におけるクリスマス・イヴの夕食メニューの国際比較研究ーー七面鳥の焼き方を中心として」。この書類は形式的にせよ、事務局から教授会に提出され、学部長は役職上これを読み上げなければならない。あまりのあほらしさに爆笑の嵐であったことは言うまでもない。ところが学部長は重々しくこう付け加える。「これについて何かご質問、その他、ございますでしょうか。(沈黙)とくにご異議がないようですので、原案の通り、承認といたしたいのですが、よろしいでしょうか。ではそのようにさせていただきます・・・」。

あらゆる文化現象は研究対象になる。学問の自由である。しかも衣食住についての文化比較研究は、これまでインテリの頭ん中にしか興味を持たなかった理性の帝国主義に対する反植民地闘争として大いに栄えている。ポスコロ(ポスト植民地主義)、カルスタ(カルチャル・スタディーズ)などと恰好をつけている以上、七面鳥の焼き方が研究課題としていかがなものか、なんてことはまず言えない。お役所仕事に首をかしげる人々は、ひそかにフランス人のエスプリに拍手を送ったものだ。

だから次の出張の時には、まつこも「ロンドンにおけるファッション・アイテムの記号論的解読の一局面――ジョセフを中心に」とか「ロンドンの劇場周辺パブにおける大衆的劇評の分析――コーヒーハウスからワインバーへの公共性の構造転換」とか、わけのわからないことを書いてだしてみてはどうか。そうすれば、今と同じ生活をしながら、提出した書類に従って研究活動をしているんだ、と自己評価を高められるのではないか。

とはいえ教授会の中には、会議の後でまじめにこんなふうに聞いてくる人も数人はいるだろう。「さすがまつこ先生、最近はこんな事にも切り込んでおられるのですか。これはデリダですか、ハーバーマスですか?それにしてもジョゼフというのは、何ジョゼフ(ファーストネームを尋ねている)ですかね。どんな論文を書いている人なんでしょうか。いやあ、最近はとんと不勉強で・・・」。

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コメント

うめぞうさま

今週末からロンドンでまつこさまに合流なのですね。ぜひ楽しいヴァカンスを!

うちの職場でも同様の書類提出を求められ、毎度私もでっちあげの理由を書いて出しています。ですが、教授会での承認という手続きはなぜか省かれているので、教職員の面前で赤っ恥をかくことは逃れています。某大学では、数年前の日韓主催ワールドカップの時、馬鹿正直に「サッカー観戦」と書いて提出した教授氏の申請が却下されたとか。学期中に「サッカー観戦」で休講にするっていうのもどうかと思いますが、専門によっては立派な研究ですよねぇ。その教授氏も「アジアにおけるワールドカップ実施の実情調査」とかなんとかまことしやかな題目を書いていればよかったのかもしれませんね。

ショウガネコさん
サッカー観戦はちょっとまずかったですね。
日韓共催がもたらした和解効果の検証、とやればよかったですね。

ま、そんなわけで、また珍道中が始まります。
ジャージー島というところに連れて行ってくれるそうですが、ジャージー牛乳というのをかすかに知っているくらい。
なんでもユーゴがしばらくいた島だそうですが、記念館もなさそうなので、あとはぼけっと過ごすことになるでしょう。
ともかく行ってきます!

うめぞう上官殿 私、昨日はロンドンの演劇学校出の日本人と夜遅くから飲んでました。彼の観劇後でないと時間が合わなかったものですから。場所はウェストエンドのクラブ(会員制、という意味です。語尾上がりではないです)。ウェストエンドの俳優なら入れるそうな。パブはこの時間だともう閉まってしまうし、レストランだと何か食べないといけないし、まったくロンドンは観劇後は基本的に「観客はおとなしくスグ帰れ」という具合にできあがっております。
 よって「渡航目的 観劇後の文化・経済資本的意義:同業者クラブにおける閉鎖的コミュニケーションと一般観劇者向けパブの早閉まりとの比較研究」であります。

ははは。なるほどねえ。
たしかにロンドンの夜は東京の不夜城と比べるとかなり見劣りがするね。
明日の晩はひさしぶりにWomby君とロンドンであえますね。
明日の研究課題は「時差ぼけと観劇中睡眠に及ぼす年齢の影響」となりそうです…。

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