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2010年8月11日 (水)

復活した宗教

久々にうめぞうです。

長らくご無沙汰してすみません。なにしろ忙しい。といって勤勉に過ごしているわけでもない。仕事Aに取りかかると、いけね、仕事Bの方が先に頼まれていたんだっけと、申し訳ない気持ちになる。かといってBをやり出すと、Aのことがやはり気になる。たとえていえばA君とB君の求愛を受けて迷っている女性が、A君とデートをするとB君に悪いと思い、B君とつきあえばA君に申し訳ないと思う。そんなとき、とくに好きでもない、いたっていい加減なC男にさそわれて、とりあえず軽く遊んでしまう。すると不思議なことにA君にもB君にもそれほど申し訳ないと思わないですむ…

まあそんなふしだらな心の習慣で、うめぞうも、とりあえずは目先の逃避行動に走ってしまう。普通の人ならこれを「誘惑に負ける」というところだが、わが家ではあえて「克己心に勝つ」と表現する。同じことならポジティヴに表現した方がよいだろうというウメマツ流の処世術である。というわけで、克己心にはこのところ連戦連勝。勝ちすぎて破綻寸前の生活をつなぎあわせながら、ようやくなんとか夏休みにゴールインしたのが、ついこの月曜日である。せいぜい数人の読者とはいえ、まずはお詫びし、その間にうめぞうがつらつら考えたことなどを、またぼちぼちと語っていきたい。

ここ数カ月、なんとなく考えていたのは宗教のことである。だいたい1980年代はじめころまで、近代社会が成熟すると宗教の役割は次第に縮小していくだろうと多くの人が考えていた。啓蒙主義は人間を神から解放し、あらゆる分野で人間の自律を手助けするだろう――これがほぼ300年間、ヨーロッパ知識人の大方の予想だった。政治では政教分離がすすみ、既成宗教は信者数の減少に苦しみ、それまで宗教が担ってきた役割は、たとえば自然現象の説明なら科学に、社会現象の解明なら社会科学に、心のケアなら心理カウンセラーに、倫理教育なら非宗教的な道徳理論にといった具合に、近代社会が提供する専門化された制度にとって代わられるだろう、と予測されてきた。

ところがこの予測は当たらなかった。当たったのは、せいぜいヨーロッパ諸国で、日曜礼拝に来る人の数が減ったことくらいだ。ヨーロッパで過半数の国民が定期的に教会に通っているのはアイルランド、ポーランド、スイスの三国だけ。大半のヨーロッパ諸国では二〇%に満たず、旧東ドイツとスカンジナヴィア諸国では一ケタ台にとどまる。フランス、イギリス、オランダ、旧東ドイツでは、教会にまったく行かない人が五〇%を超えている。つまりたいていの西欧諸国では教会堂は日曜日になっても不気味なほどがらんとしているというわけだ。

ところが世界に目をやると、それとは正反対の像が浮かび上がってくる。キリスト教信者の数がこれほど集中的な拡大局面を迎えているのは、歴史始まって以来のことだ。

現在アフリカでは、一日につき二万三千人のペースでキリスト教信者が増加している。主に子供の誕生によるものだが、六分の一以上は改宗によるものだ。アフリカの人口に占めるキリスト教徒の割合は、1965年から2001年までの間に25%から46%に上昇した。アジアでも韓国はキリスト教国だ。ラテンアメリカではペンテコステ派とプロテスタント系諸派が勝利行進を続けている。イスラムももちろん負けてはいない。サハラ以南のアフリカ諸国のイスラム教は、ラテンアメリカの福音派と同様に原理主義的な傾向を強めながら幅広いネットワークを築いている。あきらかに21世紀は宗教復活の世紀なのだ。

そんなわけで、ウメゾウは目下、この現象と近代社会が掲げた理想とが、どんなふうにつながり、どんなふうにつながっていないのかをつらつらと、いや正確に言うと、うつらうつらと考えているのだ。

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コメント

うめぞうさま

お久しぶりです。

「克己心に勝つ」! なんという名言でしょう! 常習者である私にも、ぜひご使用許可お願いします。

ヨーロッパではキリスト教が落ち目になっていることは知っておりました。日本のミッション系の学校などもそのあおりで、ずいぶんな変革を迫られているようですし。ですが、他の地域でそれほど大々的な拡大が起きているとは、不勉強にて存知ませんでした。日本のミッション系学校がアジアに目を向け始めざるをえなくなっているのは、実はそういった世界的傾向の影響なのでしょうね。ですが、日本人に多い西洋へのあこがれが邪魔をして、変革は遅々として進んでいない、という噂も耳にします。

たとえ頻度は少なくとも、うめぞう様のブログは、たるみきった私の脳への大きな刺激です。また楽しみにしております。

ショーガネコさん
コメントありがとうございます。克己心に勝つ、大いに使って下さい。かなり気が楽になります。
たしかに日本のキリスト教会、とくにプロテスタント諸派はじり貧ですねえ。牧師の給料さえも厳しくなっているようです。
市民革命とネーションステイトに結びついてきたプロテスタントに比べると、カトリックの方が数段、グローバル化には適応しています。もともと各国政府を越えて、アルプスの向こう側ばかり見ていたので、ウルトラモンタンなんていわれてますね。一人でも読者がいるのなら、これからはできるだけ書くようにしたいと思います。

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