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2010年6月

2010年6月29日 (火)

ほんのり辛口の児童文学

まつこです。

オフィスで使っているお気に入りのマグカップを紹介します。

Photo[ロンドンからのおみやげ]

ロンドン在住だった友人のcherryさんが、ある日、このマグカップをお店で見つけたとたん「まつこさんに似ている!」と思ったそうです。昨年、一時帰国の時におみやげに持ってきてくれました。包みを開けた瞬間、自分でも「似てる!」と思いました。

Photo_2[49歳のバースデーにもらったカード]

それから数カ月後の私の誕生日に、夫うめぞうがバースデー・カードをくれました。カード売り場でこれを見たとたん、「まつこに似ている!」と思ったそうです。

このイラストはあのマグカップと同じ人が書いたものではなかろうか・・・

と思いながら、カードを開いてみると、自分でも笑っちゃうくらい私に似ているイラストが目に入りました。

Photo_3[カードの内側のイラスト]

無理に若づくりして、小さめのTシャツを着て、おへそが出てしまっているところが非常によく似ています。

調べてみるとマグカップもカードもローレン・チャイルド(Lauren Child)というイラストレータの描いた絵でした。

ローレン・チャイルドは絵だけではなく、物語も書きます。『チャーリーとローラ』という兄妹を主人公にした絵本のシリーズが英米で大ヒットし、イギリスではテレビ番組化もされているそうです。マグカップの絵はそのローラです。

バースデー・カードの方はクラリス・ビーンという女の子を主人公にした児童文学のシリーズの絵です。

そのクラリス・ビーンのシリーズの一冊を読んでみました。読んだらますます似ている気がしました。

Photo_4[大人たちにクールな視線を向けるクラリス]

読んだのは『ぜったいわたしよ、クラリス・ビーンよ』(Utterly Me, Clarice Bean)。クラリスは探偵小説に夢中になり物語の世界にすっかり自己同化してしまう夢想癖と、学校や家庭での出来事をきわめてシニカルに分析する批判眼を併せ持っています。子供らしい無邪気さやかわいらしさはあまりありません。

たとえばクリスマス・・・。

「わたし、サンタクロースなんか信じていないんだけど、パパとママは私にサンタさんがいると思っていてほしいらしいの。だからとにかくサンタあての手紙は書くことにしているわ。こう書いたのよ。『サンタさんへ、もし本物のサンタクロースであれば、どうぞ懐中電灯をください。もし本物のサンタさんでないのなら、私に懐中電灯をプレゼントするよう他の誰かに伝えてください』」

こうして手に入れた懐中電灯を手に、クラリスはクローゼットの中にこもって探偵小説を読みふけるのです。

子供は純真無垢なものという古めかしい固定観念を取り払って、子供の自己主張や意外と冷静な分析力をリアルに描いているところが、きっと英米で受けている要因でしょう。中身のイラストや活字のデザインもウィットが効いています。

ほんのり辛口の児童文学です。愛と正義の物語ハリー・ポッターより、私はこっちの方が好みかもしれません。

2010年6月27日 (日)

涙腺刺激

まつこです。

このところあれこれ用事が入り、実家への帰省は毎週1泊だけという週が続いていました。母は家の中に花を飾り、いつも通りの生活を続けています。

Photo[これは先々週の玄関の花]

それでもやはり徐々に記憶障害が進んでいるのは明らかです。先週、うめぞうの実家に新潟名物の笹団子を送りたいというので、手配をしてあげました。その数日後、うめぞうのお母さんからお礼の電話があったのですが、とっさに誰からの電話かわからず、「どなた? お団子? なんのことでしょう?」という感じだったそうです。

気になることを、何回も何回も繰り返し話すという傾向もさらにはっきりしています。今週末の気になることは参議院選挙。「私、行かないでいいかしら?」「私、行きたくないわ」「私、どう投票したらいいかわからないわ」――。そのたびに「いいよ、いいよ、参議院だから。芸能人みたいな人が立候補しているしね。行かなくていいよ。」一泊二日の間にこのやり取りが何十回も繰り返されます。

正直、辟易し、ほうほうの体で逃げ出すような気分で実家を後にします。帰路の新幹線の車中では、どうしても気分が落ち込みがち・・・。

いかん、いかん、と気分を変えるために、iPodに入っている一番ノーテンキな音楽でも聞こうと選んだのは映画『マンマ・ミーア』のサウンドトラック。「ダンシング・クィーン」など明るくポップなヒット・メドレーを聞けば、気分は70年代。

・・・と思ったのですが、意外な盲点がありました。メリル・ストリープが情感たっぷりに歌い上げるSlipping Through My Fingersを聞いている間にポロポロ涙が出てきてしまいました。成長した娘が自分の手元から離れていく、母親の感じる子離れの寂しさを歌っています。

さりげない日常の中で、一緒に笑いあう母娘。けれど娘は成長し、別の世界を持ち、やがて自分の元から去っていく。この幸せな日々をとどめ置こうとしても、時は指の間をすり抜けるように流れていく・・・。

聞いている間に、若くて元気だった頃の母の表情が次々と脳裏に浮かんできました。笑顔ではつらつとしていて、背が高くて、スーツ着て、いつもスタスタ歩くのが早かった母。

Photo_2[今夜は新幹線の車窓の景色がにじんで見えました]

幸い新幹線は空いていたので、一人で音楽を聞いて泣いている変なおばさんに気付いた人はいなかったと思います。しかしSlipping Through My Fingersは涙腺刺激が強すぎるので、介護帰省の新幹線で聞くのは危険です。次回からは車中では別の音楽にします。

Schoolbag in hand, she leaves home in the early morning
Waving goodbye with an absent-minded smile
I watch her go with a surge of that well known sadness
And I have to sit down for a while
The feeling that I'm losing her forever
And without really entering her world
I'm glad whenever I can share her laughter
That funny little girl

Slipping through my fingers all the time
I try to capture every minute
The feeling in it
Slipping through my fingers all the time
Do I really see what's in her mind
Each time I think I'm close to knowing
She keeps on growing
Slipping through my fingers all the time

通学鞄を抱えて朝早く出かける娘
いつも通りの笑顔で手を振りながら
お馴染みの寂しさが胸にあふれてくる
しばらく座って心を落ち着ける
私の手元から離れていく娘
あの子の世界は私とは別
一緒に笑うことが喜び
明るくて可愛い私の娘

時は指の間をすり抜けていく
心の中にとどめおこうとしても
時は指の間をすり抜けていく
娘の心には追いつけない
分かりかけたと思っても
娘はどんどん成長していく
時は指の間をすり抜けていく

2010年6月21日 (月)

初めての・・・

まつこです。

子供の頃は初めての経験をするとわくわくしたものですが、大人になるとそもそも「初めての経験」をしなくなる・・・と思っていたのですが、年を取ってもあるんですね、「初めて」のことが。

Photo[これが私の初めての老眼鏡。黒と赤のツートンカラー]

最近、本を読むとすぐにくたびれていました。介護や雑務で忙しいために目がかすむのかな・・・と思っていました。しかしある日3歳年下の友人P君に会ったところ、書類を読むためにおもむろに眼鏡を取り出すのです。「もしかしてそれは・・・」と聞いてみるとやはり老眼鏡でした。

私はまだ使っていないわよ、と勝ち誇ったように言ったところ、ちょっと使ってごらんよと貸してくれました。どれどれ・・・とかけてみたら、目の前の書類の活字がくっきり鮮やか!「うわー、きれいに見える」と驚きの声を上げたら、「ね、まつこさんだって始まっているんだよ、老眼が」と言い返されてしまいました。これは悔しいけど認めざるをえません。

というわけで初めての老眼鏡。どうせならうんとおしゃれなのがいい!そこで出かけたのはアラン・ミクリのショップ。おしゃれでモダンなデザインで知られるフランスのブランドです。

Photo_2[こちらは乱視矯正のみの眼鏡。つるの部分は白いアセテートです]

デザイン豊富で選ぶのに迷ってしまったのですが、結局、二つ一度に作ることになりました。乱視がひどくなっていたのです。

私はこれまで免許の更新でもずっと裸眼で大丈夫だったのですが、芝居や映画を見るときに、どうも細部がはっきりしないという実感はありました。近眼の症状はないのですが、乱視だけで視力が落ちていたのだそうです。

これまでサングラス以外のメガネとは無縁の人生だったのですが、一度に二つ持つことになりました。でも世界がはっきり見えると頭の中もすっきりした気分です。仕事もはかどるような気がします。

Photo_3[これがケース。アラン・ミクリは最近、黒いソフトケースにデザイン変更したので、このハードケースは残り少なくなっているそうです。ほしい人は急いでください]

世のアラフォー女子のみなさんに先達としてお伝えしたい。老眼鏡は見せびらかしたくなるほどおしゃれなものを選ぶべし!堂々と老眼鏡をかけてバリバリ仕事をするぞ、という前向きな気持ちになりますよ。

2010年6月 4日 (金)

サンドイッチ・ウーマン

まつこです。

出張、締め切り、飲み会、会議、締め切り、買い物、会議、パーティ・・・このほかに通常の授業と家事と介護、ああ、時間が足りない!

Photo[時間が足りない!と思う女性のための小説です]

似たような悲鳴をあげているワーキング・ウーマンは世界中にわんさかいます。そんな忙しいワーキング・ウーマンの生態と本音を、おしゃべりな文体で滑稽に書きあげて英米でベスト・セラーになった小説がアリソン・ピアソン(Allison Pearson)のI Don't Know How She Does it(2002年)です。

30代半ばのケイトはロンドンのシティで働く有能なヘッジ・ファンド・マネージャー。ジェット機で大西洋の向こうとこっちを行ったり来たりの出張続き。9つの通貨の為替の動向を24時間注視しながら、5歳の娘と1歳の息子からも目が離せない。建築家の夫は優しいけれど、稼ぎが低い。ビジネス仲間のアメリカ人男性との間にほのかな恋が芽生えそうな気配もある・・・。そんなあれもこれもの生活は、まるでたくさんのボールを落とすことなく巧みに空中であやつる曲芸のよう。「なんでそんなことができるの?」(I don't know how she does it)と、周りの人は感心し、驚嘆している。けれど、自分でも気づいている。「こんなジェット・コースターみたいな生活はこれ以上はムリ・・・でも止められない」

「働くママたちへの国民的讃歌」とまで言われたこの本の筆者アリソン・ピアソンは、イギリスのタブロイド紙デイリー・メイルのコラムニストもしていました。ケンブリッジ大学出身で、ジャーナリストとして活躍するベスト・セラー作家の書くコラムは、女性読者に人気がありました。

ところが4月末でこのコラムは休止。最後のコラムは「ウツ病世代の女たち」(Depression's the curse of my generation and I'm struggling in its grasp)と題した休業宣言でした。ピアソンは1960年生まれ。ピアソンは同世代の女性を「サンドイッチ・ウーマン」と呼んでいます。キャリアのために最初の出産が30代以降となり、バブル期に夫ひとりの収入では家は買えず子育てしながら働かざるを得ない。子育てで忙しい真っ最中に、親の介護が始まって、あっちもこっちも手間がかかる両方の世代にはさまれてサンドイッチ状態というわけです。

アイルランドのベストセラー作家マリアン・キーズ(1963年生)、イギリス女優エマ・トンプソン(1959年生)、イギリスの人気テレビ・キャスターのフィオナ・フィリップス(1961年生)らが続々と「私もウツ状態です」と宣言し始めているとか。フィオナ・フィリップスは母親がアルツハイマーになり、その介護と二人の息子との家庭を両立させようと努力するうちに、ウツ状態となり番組を降りざるを得なかったそうです。フィオナ・フィリップは私と同じ年。母親も同じ病気。ちょっと身につまされる話です。私には子どもがいないので、サンドイッチ・ウーマンといっても、オープン・サンドですが・・・。

親が元気でも、子どもがいなくても、この高ストレス社会では忙しさにあえぐウツ病予備軍は男女を問わずたくさんいます。ウツ病の予防あるいは治療には、「笑い」と「手抜き」が欠かせません。仕事や家事や介護に疲れ果てて、追いつめられた気分になったら、「笑って手を抜けその仕事」を合言葉にして、心身の健康を保ちたいものです。

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