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2010年5月 3日 (月)

いわさきちひろ美術館

まつこです。

安曇野にはいくつか美術館があります。穂高駅近くの萩原碌山の美術館は教会のような静けさに包まれた小さな美術館です。こちらは以前、訪ねたことがあるので、今回は少し足をのばして松川村のいわさきちひろの美術館に行ってみることにしました。

Photo[山並みを背にした美術館]

アルプスの山並みを背にして、それと呼応するように三角屋根がデザインされた美術館です。建物の内部もすっきりとしたデザインの中に自然光と木のぬくもりが感じられます。開口部が大きくとってあって、外の庭にすぐに出られます。子供たちが遊ぶ空間も用意されていて、歓声や泣き声が響いてもうるさく感じません。

Photo_2[建物の裏にもこんなに広い芝生が広がります。手にしているのは美術館のリーフレット]

いわさきちひろは1974年没。その活躍の中心は1960年代。1960年代に子供時代を過ごした世代にとって、ちひろの絵というのはごく身近なところで、意識しないうちにしばしば接するおなじみの世界だったように思います。じっと考え事をする少女の表情はまるで鏡を見るようでしたし、集って遊ぶ子どもたちは自分たちの仲間で、虫取り網を手にした少年は同級生のように思えました。

小学校の国語の教科書の表紙や挿し絵にもなっていました。なかでも「白いぼうし」という物語は多くの人の心に残っていると思います。タクシーの運転手さんが道で見つけた白いぼうし、そっと取り上げてみると白い蝶が中から飛び立ちます。車に戻ると女の子が一人乗っていて菜の花の町まで連れて行ってと頼みます。町はずれの団地の近くの野原までくると女の子が消えていて、外には白い蝶が飛んでいる・・・。そんな内容だったと思います。

Photo_3[こちらの花畑も美術館の裏庭です。「白いぼうし」を思い出していたら花畑に蝶々が飛んでくるような気がしました]

いわさきちひろさんのすっきりとした挿し絵とともに、タクシーの中を満たしていた夏ミカンのさわやかな匂いや、座席にちょこんと座った女の子のひっそりとしたたたずまい、バックミラーからその姿が消えていたときの空白感、そんなものが心によみがえってきます。

ちひろの描いた昭和の子どもたちの世界を見ると、そのまますぅーっと、その世界の中に同化してしまう気がします。一方、ちょっと上の世代で心やさしいうめぞうは、ちひろが描いたかわいい赤ちゃんの絵を見ると胸が締めつけられるような切ない気分になるそうです。

Photo_4[地元のイチゴがたくさんのったタルトがおいしい。空気もおいしいカフェ]

この美術館の中にはカフェもあり、地元でとれたイチゴをふんだんに使ったタルトときな粉風味のシフォンケーキをいただきました。晴れわたった青空と白く輝く北アルプスを眺めながらのんびりしたティー・タイムを過ごしました。

上記の「白いぼうし」はあまんきみこさんの童話「車の色は空の色」シリーズの一編です。空色タクシーの運転手さん松井さんがいろんな不思議なお客さんを乗せるお話です。今回、私たちが安曇野で乗ったタクシーの運転手さんは、「今度、いわさきちひろさんの息子さん、松本猛さんが県知事選に立候補するんですよ。みんな期待してるんです」と嬉しそうに話してくれました。安曇野市が条例によって建物の高さや看板の制限をして景観を守る努力をしていることも話してくれました。タクシーの運転手さんも北アルプスの麓の安曇野の美しさを誇りしているのがよくわかりました。

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コメント

まつこさま

日本の観光地、こんな素敵な場所もあるんですね。私も行ってみたくなりました。

いわさきちひろ、日本人ならずとも彼女の絵は胸の奥の深いところに届く力を持っていますよね。私も幼い頃に、彼女の挿絵の入った『人魚姫』など、すり切れるほど繰り返し読み、挿絵を食い入るように見つめたものです。

『人魚姫』が悲しい物語だったからかもしれませんが、彼女の絵を見ると今でもやっぱり切なくなります。innocence のはかなさ、とでも言ったら良いでしょうか。安曇野はいわさきちひろにとってどんなゆかりの土地か知りませんが、透明な空気とのびやかな自然、彼女の絵にふさわしい背景かもしれませんね。

ショウガネコさん、コメントありがとうございます。

安曇野はいいですよ。景観を守るというポリシーがはっきりして、住民の人たちにもその意識が浸透しているようです。寒冷な地であるにも関わらず、この自然の美しさにひかれて、移住してくる人も増えているのだそうです。

いわさきちひろのお母様が松本の出身で、戦争中、長野県に疎開していたのだそうです。その後、黒姫にアトリエを持ち、長野県には深い愛着があったようです。

ちひろの絵は輪郭が薄いものも多いけれど、デッサン力がしっかりしていて、輪郭の消えている部分にも肉体の造形が感じられるので、見る人にある種の安心も与える気がします。子どもたちの手足と瞳に確かな命が宿っていると感じられる。切なくて、でも癒されますね。

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