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2010年2月11日 (木)

海舟と最中

まつこです。

文京区が観光振興のために「食の文京ブランド100選」というキャンペーンを始めました。区内在住の料理ジャーナリストの岸朝子さんが選考委員の一人で、選ばれたお店には「おいしゅうございます」印が与えられるのだそうです。

その100店のリストを見てみたら、行ったことのあるお店は40軒弱でした。すぐご近所なのに知らないお店もあります。さっそく地元商店街の振興のために、そのうちの一軒、和菓子の「壺屋總本店」に行ってみました。

Photo_2[こちらが壺屋の名物、壺の形をした最中です]

春日通りに面した小さなお店、がたつく引き戸がレトロな風情です。事前に調べておかなかったので、とりあえずお店の名前そのままの最中などいくつか選んで、お会計をしていたら、ふと店内に飾ってある額に目が行きました。

「神?気旺」-「神」という字の縦線が長く動きがあっておもしろく、「自由だけれどバランスが良い」といった印象の書です。「神」の次の文字は何かな・・・と側に貼ってある釈文を見ると、「神逸気旺」、そして「海舟」という号がありました。え?思わず千円札を握ったまま「海舟とはあの勝海舟でしょうか」とお店の方に聞いてしまいました。

寛永年間の創業で、幕末には神谷町のあたりに店を構えており、勝海舟がごひいきにしてくれたというこの店の歴史を、お店の人が丁寧に説明してくれました。この目立たぬ店構えの小さな和菓子屋がそんな老舗とは知りませんでした。

Photo[こちらは「湯島の白梅」。中に甘みをおさえたきめの細かい白あんが入っています]

勝海舟と山岡鉄舟の字は素晴らしいと聞いたことがありましたが、勝海舟の書の実物を見たのは、今回が初めてでした。ただ、佐々木譲の『武揚伝』を読んで以来、私はすっかり榎本武揚ファンです。『武揚伝』で描かれていた勝海舟というのは口先だけの日和見主義者で、幕臣同士でも武揚とは決定的に対立します。

「書は人なり」―さてこの「神逸気旺」から読み取れる人柄はと、改めて額を見直しました。素人筆跡鑑定家まつこの見るところ、ちょっと面白みがあってバランスが取れた人物といったところ。

時代の転換期にあたり、現実的な妥協を受け入れた勝海舟に対して、榎本武揚は幕臣としての忠誠心を持ちながら、西洋近代の合理主義を受容した志高き知性派。確かに書を見ても、勝海舟の書は曲線の味があり、一方の榎本武揚の書は直線的です。(早稲田大学の古典籍のデータベースで勝海舟、榎本武揚の遺墨をいろいろ見ることができます。)

食の文京ブランド・キャンペーンのおかげで、あんこのぎっしり入った壺形最中を食べながら、しばし幕末の歴史に思いをはせることになりました。

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コメント

まつこさま

壷屋さん、東京散歩ガイドブックにも載ってます! 行ったことありませんが、文京区散歩の時には是非行ってみたいです(行ってみたいところ、増加中)。

お茶にお花、書画骨董、私のこれまでの人生にはあまりにも貧困だった日本文化です。勝海舟にも、榎本武揚にも、日本人としてバツを付けられそうです。。。

ショウガネコさん、コメントありがとうございます。

文京100選には「和菓子」は8軒。その他「たいやき」2軒、「せんべい」4軒、「甘味」2軒、「かりんとう」「飴」「いりまめ」など、和のスイーツがたくさん入っています。

勝海舟も榎本武揚も開国派で西洋志向が強かったと思いますが、書とか漢詩はこの人たちの基礎教養ですね。佐々木譲の『武揚伝』、青春文学として抜群に面白いですよ。私は読後、にわか歴女になって本駒込の吉祥寺に墓参りに行ってしまいました。

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