« 2009年11月 | トップページ | 2010年1月 »

2009年12月

2009年12月31日 (木)

雨のハイド・パーク

まつこです。

とても短いイギリス旅行もいよいよ終わりに近づいています。昨晩はロンドンの劇場街ウェスト・エンドでシェイクスピアの『十二夜』を観ました。今のアルバニア、昔のオスマン・トルコのエキゾチックな設定にした演出でした。報われぬ恋に悩むオーシーノやオリヴィアをコミカルな戯画風の演技で演じたため、酔っ払いや道化の登場する副筋のおもしさが引き立たず、少し退屈な上演でした。

昨晩はwomby, cherry夫妻と一緒の観劇。芝居のはねたあとは中華街で中華料理のディナー。芝居の出来は物足りなかったけれど、おいしい食事と楽しいおしゃべりを堪能したロンドンの夜でした。この1年は母の介護と仕事の忙しさの重圧から逃れるように、私は計三度、ロンドンにやってきました。そのたびにロンドン在住のwomby, cherryには観劇や食事をつきあってもらい、すっかりお世話になりました。10年以上前に同僚だったwomby, cherryと一緒に過ごすと、私は30代だった頃の気楽でもっと威勢が良かった頃の気分が戻ってきます。ロンドンで再会するたびに、とても良い気分転換になりました。この場を借りて改めて感謝!

Photo[旅の仕上げは雨の中の散歩]

昨日も今日もロンドンは冬の冷たい雨が降り続いています。旅の最終日、うめぞうは雨のハイド・パークを散歩したいと言い出しました。雨が降ってもウォーキングを楽しむイギリス人のように、傘をさして二人でハイドパークまで出かけました。雨にけむる緑の公園もそれなりにきれいでしたが、体の芯まで冷える寒さです。顔に雨の混じった冷たい風が吹きつけられます。次第に言葉少なくなり、やがて無言で歩く私・・・。その気まずい沈黙に耐えかねてうめぞうが「もう一度Josephに寄っていく?」とおずおずとした調子で聞いてきました。せっかくの旅の終わりを台無しにしないように気を使っているのが手に取るようにわかります。それがおかしくて思わず雨の中で笑いだしてしまいました。冬の寒々としたハイドパークの散歩も、この旅の思い出の一つになることでしょう。

2009年12月29日 (火)

コヴェント・ガーデンの『ラ・ボエーム』

まつこです。

コヴェント・ガーデンのロイヤル・オペラ・ハウスに行ってきました。プッチーニの『ラ・ボエーム』です。クリスマス・イヴの寒い夜に出会って一目で恋に落ちる若者たちの悲恋の物語です。結核で若い命を散らせる悲劇のヒロインミミを演じたのはヒブラ・ゲルズマーワ。ふっくらとした健康的な容姿で、見た目は病弱のはかなさとは連想しにくいのですが、抜群に美しい声でした。つややかで柔らかく、しかも安定感がある歌いぶりです。

Photo[あこがれのロイヤル・オペラ・ハウスでご満悦のまつこ]

指揮はラトビア出身のアンドリス・ネルソンズ。バーミンガム市交響楽団の首席指揮者になった気鋭の若手とのこと。たっぷりと音楽を鳴り響かせていました。

うめぞうと二人、満足しきってオペラ・ハウスを出ようとしたとき、"romanticized poverty"という言葉が耳に入ってきました。背の高いいかにも怜悧そうな若い女性が、とてもきれいな気取った発音の英語で、「要するに貧困をロマンチックに美化した物語よね」と感想を連れに語っています。7月王政下のパリ、カルチェ・ラタンで暮らす若い芸術家たちが、貧しさの中で恋をする・・・。確かに貧困がロマンティックな物語に仕立て上げられています。せっかく甘い涙に感傷的にひたっていたのに、このクールな感想を聞いて思わず苦笑いしてしまいました。イギリス人ってプッチーニを聞いたあとでも冷静なのね・・・。

Photo_3[ロイヤル・オペラ・ハウスに新しく増築された部分からはコヴェント・ガーデンが見おろせます]

コヴェント・ガーデンのオペラ・ハウスは円柱がそびえる堂々たる建物です。近年大改修がなされたと聞いていましたが、今まで一度も入ったことがありませんでした。張り切ってワンピースとハイヒールで出かけたのですが、マチネだったせいか、寒さのせいか、それほど着飾った人は多くなく、1階の平土間でもダウン・ジャケットとジーンズみたいな恰好の人が結構いました。うーん、若干、期待していたゴージャスさはありませんでしたが、存分に楽しんだコヴェント・ガーデンのオペラでした。

うめぞうは出発前、お母さんから「イギリス料理ってどんなものがあるの?」と聞かれて答えに窮したそうです。確かにロンドンではいつもフランス料理、インド料理、中華料理、モロッコ料理・・・など「外国料理」しか食べていなかったかもしれません。そこで今回はイギリスの田舎料理を売り物にしているお店をあえて探してみました。見つけたのは泊っているホテルから徒歩一分のBumpkin。日曜日に大きな肉をゆっくり焼いて楽しむ伝統的な家庭料理サンデー・ローストなどを売り物にしているレストランです。イギリス周辺の海から乱獲をせずに資源確保を考えて獲った魚、肉は放牧して草を食べさせた肉など、いわゆるビオの食材を使っているそうです。

Photo_4[Bumpkinの食事。手前がラムのロースト]

「たまにはステーキ食べたい」とうめぞうが数日前から言っていたのですが、かつての狂牛病騒ぎがあって以来、私はイギリスの牛肉をやや敬遠していました。でも一応、食の安全をうたい文句にしているレストランなら大丈夫だろうと思い、うめぞうには骨付き350グラムステーキを許可。私はこれまた伝統的なイギリス料理のラムのロースト。

Bumpkinはイギリスの田舎料理を都会でおしゃれな人たちが楽しむためのお店といった雰囲気です。経済バブルがはじけて、イギリスの人たちの間で、保守回帰、伝統回帰がちょっと流行しはじめているとか。「ツイードのジャケット着てハンティング」みたいなスタイルがファッショナブルとみなされるようになってきているという記事を先日読みました。このBumpkinもそんな流行に乗りそうな感じのお店です。

Photo_6[デーツとトフィーのプディング。重い!そして甘い。一口食べてからの写真ですみません]

"Country Boy"というロゴの入ったTシャツを着た若くてかっこいいウェイターが勧めてくれたプディングまで食べてしまいました。「すごーく甘いんだけど、お勧めだよ。二人で分けたらいいよ。すごーく甘いんだ、でもお勧め!」と言って、にっこり笑います。その素敵な笑顔は、牧草地が青々と広がるイギリスの田舎のきれいな景色を思い出させるようにさわやか。シナモン入りの温かいMulled Wineを飲んで350グラムのステーキをたいらげたうめぞうも満足そうでした。

2009年12月28日 (月)

ケンブリッジ訪問

まつこです。

雪の残るケンブリッジに友人MクンYちゃん夫妻をたずねました。MクンYちゃんはイギリス人と日本人の国際結婚カップル。古くからの友人です。ロンドン在住のwomby, cherryの夫妻も同行。うめぞうはケンブリッジ訪問は初めてなので、ケンブリッジ大学出身のM君にカレッジを案内してもらおうという計画です。

Photo_2[ケンブリッジはロンドンより寒かったです。雪が残っています]

空気は肌をさすように冷たいのですが、澄んだ青空と、緑鮮やかな芝生と、どっしりとした石造りの古い大学が、まるで絵葉書のようです。クリスマスの休暇中なので、いくつかのカレッジは閉鎖されていましたが、Mクンの案内でペンブルック・カレッジやセント・ジョンズカレッジなど、いくつかのカレッジの中を散策し、ザ・バックス(The Backs)と呼ばれるカム川沿いの美しい緑地では川のカモに餌をあげたりと、美しい景色の中で寒さを忘れる半日の散歩でした。

Photo_3[トリニティ・カレッジは閉まっていましたが・・・]

アイザック・ニュートンやフランシス・ベイコンも学んだトリニティ・カレッジは残念ながら門を閉ざしていました。門の上部にあるヘンリー八世像は右手に王尺ではなく、椅子の脚を握っています。大昔の学生がいたずらで王尺と椅子の脚を取り換えてしまったのだそうです。その後、大学当局が王尺に戻しても、夜中にまたこっそり椅子の脚に取り換えられてしまうということが何回か繰り返されたあと、大学も諦めて、以後、このヘンリー八世はずっと椅子の脚を握ったまま学生たちを見降ろしているのだそうです。

Photo_4[閉まっているはずのトリニティ・カレッジの中庭で記念撮影?]

トリニティ・カレッジは、ロンドンのセント・ポール大寺院を設計したクリストファー・レンが作った図書館など、堂々たる建物が美しいカレッジです。中が見れずに残念と諦めていたのですが、裏側に開いている入口があり、こっそり入り込んでしまいました。トリニティ・カレッジに「裏口入学」です。人の気配のない静まりかえったカレッジの中庭で、オートシャッターで記念写真・・・と、そこで大学の関係者に見つかってしまい出ていくように言われてしまいました。それでも隠れてカレッジのチャペルの中をのぞいてみようとしていたら、守衛さんに見つかってしまいました。「はいはい、今、出て行きまーす」という感じでスゴスゴ退散する私たち。学寮の規則を破る不良学生の気分までちょっぴり味わってしまいました。

Photo_5[川でパントと呼ばれるボート遊びをする人たち。ちょっと寒そうです]

ケンブリッジ大学は13世紀にオックスフォードで町の住人ともめてしまった神学者が新天地をもとめ、このカム川沿いに移動してきたことから始まっているそうです。竿で操作する平べったい船のパントがゆっくりと川を行き来するのも、いかにもケンブリッジらしい光景です。うめぞうはちょっと乗ってみたかったようなのですが、この季節のパントはいかにも寒そう。次の機会にということで、舟遊びはうめぞうもあきらめました。

Photo_6 [カレッジめぐりのあとはアフタヌーン・ティー]

さて歩き回っておなかもすいてきました。冷えた体を温めるためにアフタヌーン・ティーをいただくことにしました。イギリスらしい伝統的クリーム・ティーをもらいました。大きなスコーンに濃厚なクリームとジャムを山盛りにしていただきます。最近、ロンドンではこんなふうに伝統的なスコーンはホテルのティータイムででもなければ目にする機会はないと思います。ケンブリッジのスコーンはそんな高級ホテルのスコーンみたいに気取ったものではなく、ゴツゴツした無骨な姿と、握りこぶしくらいある豪快な大きさ、そしてほのぼのとした素朴な味です。ロンドンを離れて、昔と変わらないイギリスの雰囲気をたっぷりと堪能した一日でした。

2009年12月27日 (日)

ロンドンのクリスマス

まつこです。

12月25日、クリスマスにロンドンに到着しました。ヒースローに到着すると、地下鉄もヒースロー・エクスプレスもクリスマスで運休していました。お店やレストランなどが閉まっていることは予測していましたが、空港から市内への公共交通機関まですべて休んでいるとは思いませんでした。やむなくタクシー。運転手さんから、クリスマス・デーだからチップを余分にしてくれと求められてしまいました。

Photo[サウス・ケンジントンの駅も閉まっています。夕方7時くらいですが、街は真っ暗]

夕刻、外に出てみると、中華やインディアンも含めレストランもすべて閉まっていました。街は暗く静まり返っています。うめぞうはにぎやかで華やいだクリスマスを期待していたらしく、がっかりしていました。ホテルのあるサウス・ケンジントンからナイツブリッジまで歩いて、1,2軒のイタリアンのカフェが開いているだけ。でもこんなに静かなロンドンは12月25日くらいしか経験できません。

一夜明けて26日はイギリスではボクシング・デーと呼ばれています。もともとは召使や使用人にクリスマス・ボックスと呼ばれるプレゼントをあげた日だそうです。このボクシング・デーも以前はほとんどのお店が閉まっていたようですが、今ではデパートやお店がいっせいにセールを始める日になっているようです。今朝のBBCのニュースでは「今日は1年で一番買い物客が多い日です」と言っていました。

確かに、昨日はひっそりと過ごしたロンドン市民や世界各地からの観光客が、今日は一斉にどっとショッピング・ストリートに繰り出したようでした。どこに行っても大きなショッピング・バッグをいくつも手にした人が見受けられました。

Photo_3[リージェント・ストリートもショッピングを楽しむ人であふれています]

私たちは午前中はロンドン大学のあるブルームズベリーの本屋でブック・ハンティング。午後はミュージカル『レ・ミゼラブル』を観に行きました。スーザン・ボイルがタレント発掘番組で"I Dreamed a Dream"を歌って評判になって以来、このロングランのミュージカルの観客が増えているのだそうです。

今回、私たちは全く同じ演出(Trevor Nunn)で日本とイギリスの『レ・ミゼラブル』を見比べてみようという企画を立てました。11月に日比谷の帝劇、12月にロンドンと立て続けに2回見たわけです。結果・・・うーん、彼我の差は大きい!歌唱力とか体の表現力の差もあるのですが、それ以上に感じたのは、役者の「職業意識の差」というようなものです。日本では「がんばっている私の演技を見てください」という雰囲気が濃厚に感じられるのにたいし、ロンドンの公演はあくまで役に徹するプロ意識によって作り上げられています。

『レ・ミゼラブル』は四半世紀も続いているロング・ランです。観客もおそらく過半数が観光客でしょう。心地よい感動や涙をさそう通俗性もたっぷり盛り込まれています。そのマンネリズムを完成度の高い「型」として見せるためには、役者たちが役に徹して芸をみせるてだれぶりが必須です。その熟練度が観客を楽しませるのであって、役者のひたむきさや情熱はむしろ素人くさいものとして感興をそいでしまいます。

Photo_4[レスター・スクエアは遊園地みたい。これならクリスマスらしいとうめぞうもニッコリ]

劇場を出るとウェスト・エンドの歓楽街はどっと繰り出した人、人、人でごったがえしていました。レスター・スクエアは遊園地みたいににぎやかです。「これならクリスマスらしい」とうめぞうもご満悦でした。

2009年12月24日 (木)

ご褒美貧乏

まつこです。

久しぶりにムートンのコートを出して着たら、ポケットの中から、金属製のバッジが出てきました。3月末にロンドンに行ったときにWar Horseという芝居を観に行った日に、劇場で配っていたものです。なつかし~。

Photo[War Horseは子供と動物の成長の物語でした]

明日から数日間、ロンドンに行ってきます。最近はインクカートリッジでも台所洗剤でもベーコンでも、何でもかんでも、クリックひとつで注文するインターネット通販で買っています。非常に便利なのですが、時として真夜中にうっかり衝動買いをしてしまうこともあります。

ある晩、ネットサーフィンしていたら暮れにロンドンでロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの『十二夜』をやっていることに気付きました。ああ・・・行きたいなあ。さらにロンドン情報をあれこれ観ていると、コヴェント・ガーデンでプッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』をやっているのも見つけました。『十二夜』と『ラ・ボエーム』なら両方ともクリスマス・シーズンにぴったり・・・あああああ・・・行きたいなあ・・・・。

気がつくとJALのページで空席を探している私。なんでこんな便利な世の中になってしまったのでしょう。マウスを操作するだけで、飛行機もホテルもオペラも観劇も、すべて準備が整ってしまいます。

仕事と遠距離介護でこんなに忙しく過ごしているんだから、たまには自分にご褒美をあげなくちゃ、と適当な理由までつけてしまいました。クリックを繰り返すたびにボーナスはどんどん消えていきます。こういうのを「ご褒美貧乏」というのだと思います。

実は迷わなかったわけでもありません。新潟の母と過ごすのは中10日間ほどあいてしまいますが、行けるときに行った方がよいと言ってくださる人もいますし、ここは思い切って出かけます。認知症の母を一人残して旅行に出るのは、後ろ髪ひかれるものがあり、それを断ち切るのも、ちょっとエネルギーが必要です。でも「迷った時には積極策の方を取る、迷った時には母より自分のことをあえて優先する」というのも、時には必要な決断のように思えます。

ま、老いた母やら、ヨーロッパの大寒波やら、年明けの原稿締め切りやら、あれこれあれこれ不安要素はありますが、行くからには思い切って楽しまないと!

2009年12月21日 (月)

雪かき

まつこです。

師走の日曜日。「すごい雪よ・・・」という母の声に起こされました。昨年までなら母が自分で雪かきをしていたのですが、今年はやる気にならないようです。やむなく私が寝ぼけ眼で出動します。

Photo_3[へびみたいな細い道]

お、重い・・・。気温がそれほど下がらなかったようで、水気を多く含んだ雪はとても重いです。最初は玄関から道路までの敷石してある部分の雪をどけてしまおうと思ったのですが、すぐさまあきらめ、ヘビみたいに細い通路を一本作りました。

Photo_4[ちょっとがんばって道幅を広げました]

しかしこれではいかにも老婆と老嬢の住む侘び住まいへ続く細い道・・・という感じなので、がんばって道幅広げました。かなりな重労働でした。

庭の木は重い雪のために折れたり、たわんだりしています。やはり冬囲いを依頼すべきであったか・・・。と荒れ果てた雪景色の庭を眺めていると、厚い雲が切れて青空がのぞきました。

Photo_5[雪国の冬、つかのまの青空です]

雪景色の上の青空はほんとうに美しいものです。太陽の光があたってあたりがいっせいにきらきらと輝きだします。体を動かしたあと、冷たくおいしい空気を吸い込むと、ほんとうにすがすがしい気分になります。雪の上で大きく深呼吸しました。

2009年12月20日 (日)

雪景色

まつこです。

寒い!新潟は雪です。昨日、朝7時に母からの電話で起こされました。「金曜日に来るって言っていたけれど、暴風で雪だから来ないように」という命令でした。多少の雪でも上越新幹線はちゃんと動くから大丈夫と言ったのですが、その30分後にまた電話。「やっぱりひどい天気だから来ないようにっ!」

認知症の人はいったん思いこむと、その考え方を修正するのがたいへんむずかしくなるようです。いわゆる「ガンコ」になります。この日の母も「暴風雪→列車が止まるかもしれない→娘が途中で立ち往生するかもしれない」という回路ができてしまいました。おかげで昨日は思いがけず一日オフになり、あれこれ自分の用事を済ますことができました。

Photo[今日、帰省してみるとすっかり雪景色]

今日、早めに帰省してみると、庭はすっぽりと雪に覆われていました。実は今年は暖冬と長期予報で言っていたので、庭の冬囲いを省略してしまったのです。以前は庭師さんにやってもらっていたのですが、経費節減のため、一昨年からシルバー人材センターにお願いしていました。母はその人たちにお茶を出したりするのも少し面倒に感じ始めているようです。「折れて困るような木はない」と、これまたガンコにきっぱり言うので、冬囲いはやめちゃおうということになりました。

しかしこうして雪に覆われてみると、寒々しい景色です。今週の寒波が遠ざかったら、長期予報通り暖冬になってくれるといいのですが。

母はこの数日は、私が印刷しておいた年賀状に一言ずつ添え書きをしていました。ちょっと心もとない文字のもありましたが、ざっと見たところ、見当はずれなことは書いてないようです。うめぞうの実家には「おいしいリンゴをありがとうございました」、ル・レクチェを送ってくれた友人には「食べごろを逃さないようにします。ありがとうございました」など、それなりに最近の出来事に応じた内容になっています。

よしよし・・・と安心したのもつかの間。「ねえ、この『村山さん』って『中村さん』じゃなかった?」と言いだしました。宛名も印刷してあげたのですが、「村山/中村」については回路が混線しているようです。「この一枚、宛名の印刷間違えてないかしら?」とガンコに繰り返すのを適当に聞き流しながら、雪景色を眺めて過ごす週末です。

Photo_2[炭火焼鳥屋さんのシュトレン]

木曜日に買ってきたemmaのシュトレンを母と二人で食べてみました。洋酒の香りがふんわりとする洗練された味でした。そう思って眺めれば外の雪景色は、子供のころ読んだ『飛ぶ教室』の挿絵に似ているような気もします。クリスマスの話だったと思いますが、こんな雪景色の挿絵がついていたような記憶があります。赤い箱に入っていた小学館の「少年少女世界の文学」30巻の中の一冊でした。シュトレンの香りでそんな記憶を呼び起こしました。

2009年12月18日 (金)

焼き鳥屋のシュトレン

まつこです。

昨晩は神楽坂の上の小さなスタジオにドラマ・リーディングを聞きにいきました。セルビアのミレナ・マルコヴィッチという作家が書いた『足跡』という短いドラマです。翻訳は香西史子さん。紛争のさなか、偽札、ドラッグ、レイプ、暴力などが日常となっているすさんだ日々の中を生きる4人の若者たちの足跡を描いた劇でした。

荒れた社会と荒れた心というテーマなのだと思いますが、ごく自然な若者言葉の日本語で訳されているため、バルカン半島という紛争地域ではなく、日本で起きている出来事のようにも聞こえてきました。たとえ平和な国でも希望が感じられない社会であれば、若者の気持ちはささくれだち、うっ屈するということなのでしょう。目をそむけてしまいがちな世界と社会の暗い部分を乾いた調子で描いた戯曲でした。

Photo[芝居の後は自宅近所の炭火焼き鳥のお店で遅い夕食。本郷界隈ではこういうおしゃれな雰囲気のお店は希少です]

芝居が終わったら9時過ぎ。神楽坂を下る途中、忘年会とおぼしきグループをたくさん見かけました。どこかで一人で食事でもしようと思ったのですが、ちょっと重たい芝居を見た後、酔客の多い街で過ごす気持ちになれなかったので、うめぞうを電話で誘い、自宅の近所のお気に入りの炭火焼とりの店emmaで食事をとることにしました。

こちらのお店、開店してから1年ほど。小さいお店ですが、この1年ほどでずいぶんお客が増えたようです。とくに大げさな宣伝はしていないようですが、おいしい食事がいただけて、値段が妥当で、雰囲気の良いお店は、着実に固定客が増えます。ふっくらと弾力のあるつくねや、炭の香りがふわりとする焼き鳥、クリームチーズのみそ漬けなどが、コート・デュ・ローヌの赤ワインとよくあいました。

Photo_2[焼き鳥屋で買ったシュトレン]

このお店の魅力の一つはご主人の奥様が焼くスイーツです。昨晩は焼き鳥とワインのあと、〆はシュークリーム。皮がパリンとしてクリームのバニラの香りが柔らかくておいしかったです。クリスマスのケーキも予約できるとのこと。すでにシュトレンができているというので、お店にあったものをぜーんぶ買い占めてきてしまいました。

うめぞうはドイツにいた時期があるので、クリスマスといえばシュトレンなのです。毎年、上野桜木のイナムラショウゾウのシュトレンを買ってきて、お世話になった方にお送ったり、自宅で食べたりしていました。イナムラショウゾウのシュトレンは文句なくおいしいです。クリスマス以外の時期でも売っていますし、シュトレンは電話で予約しておけば、並ばなくても買えます。

でも今年はこちらemmaさんのシュトレンを試してみることにしました。私もこの一番小さいのを明日、新潟に持って行って母と二人でいただくことにします。焼き鳥屋さんのシュトレン、どんな味なのか楽しみです。

2009年12月13日 (日)

ローズマリーの効果

まつこです。

新潟、昨日までの雨がやみ、今日は曇り空です。この週末はケア・マネージャーさんとの面談以外に、母の防寒着を用意し、母の年賀状を作成し、母の関係のお歳暮の配送を手配し・・・と、ひたすら母の用事をして過ごしています。

Photo[新潟、雪はありませんが、北国らしい荒涼とした風景です]

昨年は、母の年賀状は誰に出して、誰に出さないか混乱してごちゃごちゃになり、苦労したので、今年は私がパソコンで住所も印刷してしまいました。母は年末の心労がひとつなくなり、喜んでいます。(私自身の年賀状はまだ何の準備もしていません。年内に年賀状作る時間なんてあるかしら・・・?)

Photo_2[母にはごくシンプルな年賀状を作りました。茶色いビンは今週のお土産のアロマオイルです]

先日、アロマオイルのお店の前を通ったとき、医療や介護にもアロマセラピーが導入されているということを思い出し、ちょっと立ち寄ってみました。頭がすっきりするのは「ローズマリー」、心が穏やかになるのは「ラベンダー」。だったら母にはこの二つを混ぜたのが良いのではと思い、2種類のエッセンシャルを小さなビーカーでミックスし茶色いビンに入れました。

まずは自分で試してみようと、昨晩、枕に2,3滴たらして寝ようとしてみました。しかしローズマリーの香りに覚醒作用があるのか目が冴えてしまい、ついつい夜中にインターネットで囲碁などやってしまいました。

2時過ぎにようやく眠ったものの、準備不足の講義であわてる夢とか、優秀な研究者仲間との読書会で一人落ちこぼれて焦っている夢とか、日頃の勉強不足に対する自責の念が睡眠中に噴出してきてしまいました。いや~、ローズマリーの効果絶大です。

集中力や記憶力を高める効果は昔から知られていたそうで、古代ローマでも学者が集中力を高めるときに使っていたとか。忙しさを口実に、最近、いささか準備不足の授業が多かった私。夢の中で大いに反省し、今朝はローズマリーの香りを部屋に漂わせながら、明日の講義の準備をしました。ローズマリー、自分用にも一本用意しようと思いました。

2009年12月12日 (土)

ケア・マネージャーさん決定

まつこです。

先週末、東京に戻ると、母の介護認定の通知が来ていました。初認定は「要介護1」。面接をした市職員の方が、あまり介護度は高くならないと思うとおっしゃっていたのですが、予想よりも手厚く認定してもらいました。

母の介護関係の書類はすべて東京の私の自宅に送ってもらうようにしています。介護認定の通知とともに、ケア・マネージャーを依頼するための事業所一覧が同封されていました。こういうシステムは実際に経験してみないとなかなか理解できません。介護認定は公的機関(市役所)、ケア・マネージャーは民間事業所という区分になっていることも初めて知りました。

認知症の専門外来、訪問看護ステーション、グループホームなどを併設した病院に付設されている事業所に連絡してみると、もう手いっぱいでこれ以上引き受けられないと言われてしまいました。「今朝も一人お断りしたばかりなんですよ」という申し訳なさそうな声に、ひどく落胆してしまいました。その私の声があまりに情けなかったためか、電話を受けたケア・マネージャーの方が、そのまま電話を切らずに、母の状態や家庭状況などの事情を聞いてくださいました。

「毎週、帰省してすでに2年を経過した」ということを話したら、そのケア・マネージャーさんが「家族がそうやって支えているのであれば、定員を超えて自分が引き受ける」、と言ってくださいました。安堵のあまりお礼を言うとき思わず涙声になってしまいました。

高齢化が著しい地方都市では、老人夫婦や独居老人が多く介護サービスを受けています。若い世代が離れて暮らしていると、家族に連絡を取ることが容易でない、あるいは連絡が全然取れないというケースも少なくないそうです。我が家の場合、私が定期的帰省しているため、そういう心配がないので、少し無理をしてでも引き受けてくださったとのことでした。

さっそく、昨日、そのケア・マネージャーさんがケア・プラン作成のための面接に来てくれました。最初は警戒心の塊のように身を固くしていた母も、ゆっくり時間をかけて話をしてくださるうちに安心したようです。とりあえず当初は、週1回30分の訪問看護をしていただくことになりました。

ケア・マネージャーさんのことを母は気に入ったようで、お名前をいつもテーブルの上に置いておくダイアリーに書き込んでいました。ここまではスムーズに進展してほっと一安心。

Photo[今週はこの2本を飲んでいます。新潟に来たらやはり新潟の地酒です]

というわけで、今週はうめぞうも新潟に一緒に来ているので、夜はお酒飲んでくつろぎました。きりきりに冷やした大吟醸ではなくて、ごく普通のをぬるめのお燗で、というのがこの寒い季節にはあっています。

Photo_2[母の友人の農家の方から大量の大根をいただきました。みずみずしくておいしいです。大根おろしも甘くておいしかったです]

ブリ大根も作っちゃいました。眉間にしわ寄せていろいろ悩んでいても、一口飲むと楽天的になるのが私の性格です。人生、あれこれ苦労もあるけど、なんとかなるさ~、とうめぞうと酒盃をかわしています。

2009年12月10日 (木)

冬の光

まつこです。

毎週、東京と新潟を往復するようになり、新幹線の中においてある広報誌『トランヴェール』を読む機会が増えました。JR東日本の月刊広報誌で、JR東日本管区内の観光地やその歴史などが掲載されています。

Photo_2[毎月、充実した内容の雑誌です。食べる、遊ぶ、みたいな記事は少なく、歴史的背景を深く掘り下げた硬派の記事が多いです]

この『トランヴェール』、毎月、なかなか読みごたえのある内容が組まれています。今月号の特集記事は青森でした。ル・コルビュジエの影響を強く受けた近代建築家、前川國男氏が手がけた建築物が弘前にはたくさん残っているのだそうです。すっきりとした合理的なデザインの建物は、何年たってもモダンな印象を与えます。その建築物をたどりながら、前川氏の建築に対する理念などが紹介されていました。

青森出身の写真家、小島一郎氏については、私はこの特集で初めて知りました。厚い灰色の雲の切れ目から光が差し込む北国の空を撮ったモノクロの写真が掲載されていたのですが、その力強さに思わず見入ってしまいました。雲の下には、厳しい冬の寒さの中で、黙々と日々の暮らしを営む人々の姿が写し撮られています。稲を刈る人々を写した一枚は、解説にもありましたが、ミレーの絵に似ています。あるいはどこまでも続く雪原を歩く人々の姿。自然の荒々しさと、人々の誠実な忍耐力。この写真家は39歳で夭逝したのだそうです。

Photo_3[窓の外も北国の冬の景色です]

ふと車窓に目を転じると、冬枯れした山々の景色が見えました。灰色の雲と雪の積もった山、雲の端にわずかにのぞく冬の陽光。その景色を眺めていると、北の地で老いを迎えている母のことに、自然に思いはいきます。がらんとした大きな家で、一人で暮らす母。今頃はリビングのコタツで背中を丸めて編み物をしているはずです。

その冬の日々にも一筋の光が差し込みますように・・・と車窓から山を眺め祈りました。

2009年12月 5日 (土)

編み物再開

まつこです。

新潟は今日も厚い灰色の雲に覆われた一日でした。ときおり、雲の切れ目からきれいな日差しが見えたかと思うと、次の瞬間には大粒の雨が落ちてきます。これから2月くらいまで、裏日本は基本的に毎日こんなお天気が続きます。

Photo_2[色は奇麗なのですが、編みにくい毛糸です。選択を間違えました]

庭の掃除もお洗濯も家庭菜園もできず、母は手持ち無沙汰です。そこで昨年やっていたように編み物の道具を用意してあげたら、やる気になりました。しかしあわてて選んできた毛糸は、太さがわざと不揃いになっていて、細い部分と太い部分が不規則につながっています。ちょっと編みにくい毛糸でした。

それに昨年より、やはり認知症も進んでいるので、母はしょっちゅう編み目を間違えています。今年はもう少し簡単に編める単純な色の毛糸を選んであげないとダメだと認識しました。

編み物がなかなかはかどらず、母の気分はやや低調。「私、なんでこんなにボケちゃったのかしら・・・。気力がわかないわ。以前はあんなにテキパキしていたのに・・・」と、ネガティブな発言が増えます。寒くて暗いお天気のせいもあるでしょう。

こういう気分は伝染しがち。ついつい私も同じ話を繰り返されて、うんざりした表情になってしまいます。悪循環です。

この悪循環を断ち切るために、ちょっとだけ笑える話題を書くことにしましょう。

私たちの使っているココログは、検索サイトでどんなキーワードを入れた人が、このブログへたどり着いたかを知ることができます。先日、そのアクセス解析を見てみたら、「世界市民的状態 カント」というキーワードでこのブログにやってきた人がいました。同じキーワードで複数のアクセスがありました。

Photo[カントってこんな顔らしいです(画像はEncyclopedia Britannicaより)。正直に告白しますが、私はちゃんと読んだことありません。うめぞうがカントについて演説するたび、聞いている顔して聞き流しています]

そういえばうめぞうが以前、カントについて何か書いたな・・・と思いながら、再度、そのアクセス解析を見ると、それらはすべてうめぞうの働いている大学からのアクセスでした。

うめぞうは学生に、カントの世界市民という考え方について調べるよう課題を出したのだそうです。最近の大学生は課題が出たら、まずインターネットで調べ物をします。どうやらうめぞうの学生は、うめぞうの書いたブログ記事(カントの平和論)を見て、まさか担当教師本人のブログとは思わずにレポートのネタを探したようです。

学生たちには日頃から、ネット上の情報については安易に利用しないようにと言っています。wikipediaには誤った情報も入っているから気をつけなさい、ましてや匿名のブログ記事などは信頼できないものもあります、ネットの情報をそのまま貼りつけたようなレポートはもってのほかである…云々。

レポートの採点をしていて自分の書いたブログ記事がコピー&ペーストされていたら、ちょっと焦りますね。でもおっちょこちょいのうめぞうは、自分の書いた記事を写されたと気づかずに、「なかなか良い内容だ、しっかりしている」などとほめて良い点数をあげちゃうかもしれませんが。

ちなみにカントも晩年は認知症だったそうです。世界平和について、同じ話を繰り返し、繰り返し語り、介護者をうんざりさせていたのかもしれません。

2009年12月 3日 (木)

パソコンを買うのに必要な勇気

まつこです。

いよいよ師走です。ご近所の銀杏の木々の葉も、ずいぶん散ってしまいました。

Photo[これが先週の銀杏]

Photo_2[同じ木が今週はこんなに寂しくなりました。1週間でずいぶん変わるものですね]

「税金の無駄遣いはやめろ!」「事業仕分けを厳しくせよ!」と、節約を求める大合唱がいろんなところで聞かれます。文教予算も削減されるとか。

そんなご時世には、末端の教師も数千円の節約に心を砕きます・・・。というのはちょっと大げさなのですが、大学教師が使う研究費や科研費と呼ばれるものには、その使途についてかなり細かい規定があります。予算の出所によっても少し違うのですが、「十万円以下の物品は消耗品とする」というルールが適用される場合があります。

Sonyの新しい超軽量モバイル・パソコンがほしかったので、なんとか十万円以下、少しでも安く売っているところはないかと、インターネットで探してみました。アプリケーション・ソフトがついていないタイプで、85,000円程度で売っているお店を発見。秋葉原駅からそれほど遠くありません。電話で在庫を確認し、取り置きしておいてもらって、さっそく出かけました。

Photo_3[えっ?! ここ? ビルの前でしばらく立ち尽くしてしまいました・・・]

しかし・・・表通から一本裏に入った細い道。殺風景な古い雑居ビルが立ち並ぶ通りです。地図を片手に探し、ようやく見つけた目当てのお店は、フリルつきの白いエプロンをかけたメイド姿の若い女の子たちの写真が目立つ看板が並んだビルの中でした。

メイド喫茶なるものについては、そんなものがあると聞いたことはありましたが、本物に近づいたのは初めてです。ふと気がつくとあたりには似たようなお店が他にもあります。「天使の扉」と書いてあるピンク色ののぼり旗の横の入口に足を踏み入れるのは、ちょっと(かなり)勇気が要りました。

Photo_4[これが勇気をふるって買ってきたノート・パソコン。持ち運びがラクなので新幹線の中などで使うのに便利ではないか思います]

この雑居ビルの2階の、段ボールが積み重ねられだけの倉庫のようなパソコン・ショップで、お目当ての超薄型のVAIOを購入しました。倉庫の管理人のようなおじさんが一人でお店番をしています。ひどく、どぎまぎした買い物でした。

それにしても「メイド喫茶」って何???あわてて逃げ帰るようにしながら、振り向きざまに携帯電話のカメラで撮った写真を見ると、「耳かき」って書いてあるけれど・・・。おばさんには絶対に理解不能な世界だと写真を見て改めて思うのでした。

« 2009年11月 | トップページ | 2010年1月 »