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2009年3月27日 (金)

ハーベイ・ニコルズの5階

まつこです。

ロンドン、相変わらず寒いです。私より1週間前にロンドンに来ていたぽにょからは、「ロンドン暖かだった」と聞いていました。しかし以前2度ほど3月末のロンドンに来て、二度とも雪に降られたことがあったので、今回も念のために用心してムートンのコートを持ってきたのですが、正解でした。和戦両様にそなえ薄いコットンのコートも持ってきたけれど、こちらはロンドンに来てからはずっとクローゼットにかかったままです。

パリにいようと、ロンドンにいようと、新潟にいる母には東京にいるときと同様に、1日2回ずつ電話をしています。朝の8時半と夜の9時過ぎが定刻のテレフォンタイムです。おかげでNHKの朝のドラマ『だんだん』がいかに安易なストーリー展開をしているかも、不調だったイチローが土壇場でヒーローになったことも、時差なしで報告を受けています。

Photo[携帯電話はローミングで、母からはいつもと同じ番号でかけられます。こちらからかけるときは通話料の安いフォーン・カードを使うようにしています]

しかし8時間あるいは9時間の時差を計算しながら、同じ時間に日本に電話するのは、若干の苦労もあります。日本の朝はこちらの夜中なので、ホテルに戻って寝る前に電話すればいいので、そちらは問題ないのですが、母の就寝前の時間というのがこちらのまさに活動中の時間なのです。正午12時から午後1時はホテルの部屋も掃除中のことがありますし、外だとロンドンの場合は静かに電話がかけられるような場所はかなり限られています。

そんな電話スポットの一つがハーベイ・ニコルズというナイツブリッジにあるデパート5階の女性用トイレです。ここ改装され今は少し狭くなりましたが、昔から広くて明るくて静かで、ちゃんと椅子もおいてあるので、電話するのにちょうどよいのです。「あらー、そっちは何時なの・・・天気は?・・・寒いの?・・・風邪をひかないように注意しなさい・・・限られた日数なんだから、しっかりできるだけ多くのものを吸収しなさい。」決まって、この会話が5分から10分の通話で2回か3回繰り返されます。毎回同じパターン。

Photo_3[「えー、こっちは今午後1時少し前よ・・・風が強くて寒いわ・・・うーん、雨、降っている・・・大丈夫、気をつけるから・・・はいはい、ちゃんと勉強します・・・」と適当な返事をしているまつこ]

いやー、なんでハーベイ・ニコルズのトイレで、何回も繰り返し母から教育的指導を受けねばならんのだ、と自分の置かれている状況がかなり滑稽に思えます。しかし、認知症の人は環境の変化を最小限にしておくほうが良いとのことなので、ここはまあ、1日10分の通話を2回するくらいで、多少とも母の精神安定が保たれるのであれば、よしとせねばなりません。あとの23時間40分は介護の心配から解放されて、ロンドン生活を充分に楽しむこととしましょう。

昨日はこの電話のあと外に出ると雨がひどかったので、ハーベイ・ニコルズの5階に戻り、カフェで昼食にしました。ここ値段が高めなのでめったに使わないのですが、今回はポンドも下がったし、雨も降っていて歩き回るのもめんどくさいし、ここでお昼ごはんを食べることにしました。デパートの上という場所柄で、一人で食事をしている女性が比較的多く、また客層の年齢も高めです。私の隣の席では真っ赤なマニキュアと黒い仕立ての良いスーツを着たマダムが『ヴォーグ』の英語版をパラパラ眺めながら食事していました。

Photo_5[写真の奥のほうに見えるのは回転寿司のYO! Sushi。ロンドンはお寿司屋さんが急増しています。スターバックスと同じくらいの数ありそうです」

まつこが食べたのは温かい「スモーク・サーモンのサラダ」。新じゃががたくさん入っていて、ところどこにレーズンの甘味があって、ドレッシングの味もさっぱりめでおいしかったです。量が多いので、サラダ1品で十分なのですが、これで15ポンド。ワインとってコーヒー飲むと、すぐに30ポンドくらいになってしまいます。1ポンドが250円なら7,500円。最近下がって140円くらいになりましたが、それでも4,000円以上。ま、ナイツブリッジだから仕方ないけど、やはりロンドンの物価は高いですね。

昨晩はバービカンというロンドン市の芸術センターみたいなところで、ギルド・ホールというドラマスクールの学生が出演するTwo Shakespearean Actorsを観に行きました。19世紀のアメリカ人とイギリス人のシェイクスピア俳優のライバル関係を描いています。それぞれ酒や女にだらしない虚飾の世界にいる二人。英米の間の文化の違いや差別意識から暴動が生じ、それに巻き込まれた英米を代表する二人の役者がもみくちゃにされるのですが、シェイクスピアのセリフを掛け合いで語り合ううち、二人に共通する役者魂が浮かび上がってくる、という趣向です。

最終学年の学生たちのようですが、やはり名門ドラマ・スクールだけあってうまかったです。若干、演技が過剰で、名優マクリーディのぎょろりと目をむく表情や朗詠調のセリフ回しをしつこく真似したために、コミカルになりすぎた気がしますが、若い役者が演技を大いに楽しんでいる感じが伝わってきました。ライバルのアメリカ人俳優エドウィン・フォレストをやった学生のほうも、声量たっぷりで堂々たる演技でした。

まったく同じ劇場で1991年3月に同じ芝居を見たことがあります。そのときの熟練した役者の出した屈折した味わいとは全く違っていました。もうあれから20年近くがたっているわけで、今回の出演者の中で1991年の上演を観た人はおそらくいないでしょう。でも友人や家族がたくさん集まった学園祭のような客席の雰囲気の中、こうして演劇の伝統は次の世代に伝えられていくのだなと若々しい役者たちの熱演を見て思いました。

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コメント

こんばんは。
介護を離れて久しぶりの海外旅行、たっぷり楽しまれている様子が伝わり、こちらまで楽しい気分になっています。
旅行先でけっこう困るのが、一人暮らしの親との定期的な連絡ですよね。
まつこさまのデパートのトイレからの電話には、可笑しくもありますが、同じ立場の身としては思わず同情してしまいました。

私の場合は、父は耳が遠いため電話は無理なので、毎晩定時に父から「お風呂から出た おやすみ」というPCメールが携帯に来ることになっています。
これは、年寄りはお風呂で亡くなることが多い、ということから、お風呂から出た=無事だった、という連絡なわけで、それを見て私も、「了解 おやすみ」という返事をするわけです。
ところが、旅行中に来るメールには、お風呂から出たの他に、羽目を外さないようにとか、睡眠を十分とることとか、夜間は出歩かないようにとか・・・。(笑)
ウチの場合は勉強云々はありませんが、どこの親も一緒ですよね!
それにしても携帯電話、私達のような立場の者には本当にありがたい存在ですね。

残りの旅程も、たっぷりと楽しんで息抜きをしてきてくださいね!

hiyokoさん、コメントありがとうございます。トイレといってもここのは広くて落ち着くんですよ。あまり人がいなくて静かですし。私が電話をしていたとき、もう1人ブースの中に入ったとたん携帯電話がかかってきた人がいて、その人もなにやら長々と電話していました。
母との電話は、再生マシーンのように同じ内容なので、ふんふんと相槌うちながら、片手で写真を撮っちゃいました。もちろん誰にも見られていません。
旅先へのお父様の心配メール、私も思わず笑っちゃいました。こちらは世話をしているつもりなのですが、親はいつまでも自分が保護者のつもりなんですね。

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