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2009年2月 2日 (月)

4つの原因

引き続きうめぞうです。

まつこは今晩帰京し、夫婦、ひさしぶりの再会となる。まつこは出張中も携帯でブログを読んだとのこと。声の調子から判断して、徐々に上向きになっているようで、まずはひと安心。

さて、以前、アリストテレスのことを書きかけて中途半端に終わった。なにしろ万学の祖。知の巨人としては圧倒的存在。どんなことでもたいていはアリストテレスがすでに考えてしまっていて、しかもまっとうな答えを出しているといわれるくらいだから、浅学非才の徒としては、ほんの聞きかじり程度のことである。テーマはアリストテレスの4原因。

たとえばわれわれが家を建てるとき、その家がたつ原因となるものにはどんなものがあるだろうか。ここで「原因」という言葉がすでに問題だが、とりあえずここでは「理由」や「条件」といったものも含む広い意味で理解しておこう。

まずは家が建つためには家を必要とする人がいて、家を建てるという目的を設定していることが必要だ。誰かが目的を設定しないまま突如として家が出現することはないだろう。そこでこれを目的因という。「目的」を「原因」と混同するというのはちょっと不思議な感じもするが、これはわれわれの日常言語でもよく見られる現象だ。たとえば「彼は風邪のため欠勤した」という「ため」は原因を、「彼は葬儀のため欠勤した」の「ため」は目的を表現している。でも、われわれはその違いにほとんど気付かないのが普通だ。

次には家が家であるためのもっとも本質的な設計図が必要だ。家が出来る前に、まず家とは何であるか、家はどうあらねばならないかという形(形相)が、家を建てる人の脳裏に浮かんでいなければならない。そこでこれを形相因という。この漢字はギョウソウではなく、ケイソウと読む。

さて次には家を作るための材料がなければ始まらない。そこでこれを質量因という。

そして最後にこの素材を加工し組み立てていく労働が必要で、これを動力因という。この4つの原因が協働してはじめて家ができあがる。

興味深いことに、アリストテレスは、この4つの原因を、ある程度独立した要素と見ていた。しかし人間の理性は悲しいことに、どうしても究極原因を求めたがる。たとえば中世のキリスト教神学は、このうちの目的因を究極原因と見なした。もちろん目的を設定するのは神である。創造主の目的こそがあらゆるものの第一原因で、その他のものはそこから派生したという説明だ。これに反旗を翻した近代科学は、今度は動力因を第一原因と見た。ニュートンの運動方程式が第一原因で、あらゆるものは自然法則を出発点にしているという考え方だ。原理主義的神学も自然科学主義も、単一の原因からすべてを説明しようとする理論戦略では軌を一にしているわけだ。

この対立は現代にまで及んでいて、いまだに自然科学にも哲学にも、この究極原因についての共通理解があるわけではない。それでも近頃は、自然を記述する因果論と、自由意志をもつ人間の相互行為を律する目的論は、領分の異なる、相互補完な理性のルールであり、どちらか一方を他の原因とみなす考え方は好ましくないと多くの人が考えるようになっている。アリストテレスの復権である。頭の中でつい単一の究極なるものを求めて、極端に突っ走る人間の弱さを見抜き、何事につけ中庸の徳とバランスを重視したアリストテレスの偉大さを、現代哲学はあらためて見直しているというわけだ。

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コメント

うめぞうさま
代役おつかれさまでした。
非常に興味深いエントリーだったと思います。

話しは変りますが、
今日妻と昼ごはんを食べながら、
うめまつのブログの話しになりました。妻が突然、

「うめまつさんは、いつも”あのお面”を持ち歩いているのかしら。」と・・・。

おわかりかと思いますが、ブログ上でうめまつの顔に張り付いたブタさんのことをいっているようです。こみ上げる笑いを抑えながら、なんらかのソフトでそうやっていること、つまり写真を加工している旨をつたえました。

あいかわらず夫婦天然ボケです。
ちなみに妻は今日、私のわすれたケイタイをとりにいってくれました。

Keijiクン
なんとか代役が果たせてほっとしています。
お面を持ち歩いている、というのはたしかに、うめぞうとどっこいどっこいの発想ですね。笑えました。
ところであのお面、やっぱり「ブタ」さんに見えましたか。
そうだよねえ。僕も何度もブタクンといっては、まつこにあれは「うしだよー」と注意されました。なんでも我々二人がウシ年であることにちなんで選んだそうで。
でもやっぱり豚だよね、あれは。

私も「うめまつさんは、いつも”あのお面”を持ち歩いているのか」と思っていました!
またひとつ勉強になりました。

はじめまして^^大変勉強になりました。ありがとうございます。多極的にモノを思考する事が楽しくて、あっちこっちで天邪鬼みたいな存在になりがちです^^;

答えが例え「無い」であっても、思考する事でより答えに近づけると思い、日々勉強しています。

4つの原因・・・難しいですが、心がけてみます^^

なかなか、複数の原因をバランスよく考えるというのは、人間にとって難しいことですね。ついつい、これさえやれば安心、とか、諸悪の根源は何々、といった単純な考え方にひかれてしまいますよね。

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