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2009年2月 1日 (日)

国民性って本当にあるの

うめぞうです。

前回のブログに読者のしょうさんからコメントとご質問をいただいた。

そこで今日は、はたして国民性などというものが実際に存在するかどうか、という問題を考えてみたい。われわれは他国についても、自国についても、いろいろなイメージを持っている。スペインと聞けば、フラメンコ、闘牛士、カルメン。さぞ熱血漢、情熱的女性たちの国なんだろうと想像する。ブラジルと聞くだけで、うめぞうの胸は騒ぐ。サッカー、サンバ、ボッサ・ノーヴァ、リオのカーニヴァル、黒いオルフェ、底抜けの明るさと、健康な肉体。昼下がりの海岸のけだるさ、真っ青な海と空が広がるイパネパ海岸の砂の上を黒い瞳のすらりとした美少女が歩いていく・・・。うー、いいね、いいね。やっぱりラテン系言語を勉強しておくんだった。ところがこれがドイツとなると、勤勉、努力、几帳面、台所を磨き、書類を整理して、議論の後で森を歩く。ひぇー、つまんないー。まつこの関係で言えば同じ英語圏でも、イギリス人とくれば、一風変わった、とっつきにくい皮肉屋、でもアメリカ人は信仰深くて超フレンドリー。ロシア人となるとやっぱりチャイコフスキー、あのメランコリックな叙情性。そしてアジア人はといえば、しょうさんのコメントにもあったように、ともかくよく働く。シエスタ(午睡の時間)なんてとんでもない。5時に帰宅なんて人はめったにいない。大型連休もせいぜい10日。ウサギ小屋に住む働き蜂。

さて、こんなイメージが本当に現実を反映したものなのか。バルチモアに国立エージング研究所というのがあって、そこのアントニオ・テラツィアーノさんをリーダーとする研究チームがこの問題にとりくんだ。49カ国、4000人の男女を対象に、①あなたは、色々な国の国民がどんな性格特性を持っていると思うか、②あなた自身はどういう性格特性を持っていると思うか、という2点を尋ねた。ただし、②については自己記述をそのまま信用するわけにはいかないので、中立的な観察者の判断によって修正を加えた。

すると①については、世界中でほぼ似たようなイメージが定着していることが分かった。しかも、そのイメージは自国でも共有されていた。つまり、日本人は勤勉だ、というイメージは、外国が日本に対して持っているイメージであるだけではなく、日本人自身もそう思っているということだ。いいかえれば、国民性のステレオタイプは、かならずしも他国に対する無知や偏見によってだけ作られているわけではないということだ。しかし、面白いことに、②の結果は、①とはまるで一致しなかったそうだ。アメリカ人にアメリカ人ってどんな性格?と尋ねると、攻撃的で、いらいらしやすい国民という返事が多く見られ、カナダ人にカナダ人ってどんな性格?と尋ねると、心優しい、ゆったり、のんびりした性格という返事が多く見られた。ところが、あなたはどんな性格?という返事(第三者による補正を経た結果)は、両者ともその正反対だったそうだ。

あるいはイリノイ州のブラッドリー大学のシュミット教授の研究では、56カ国、17837人を対象とした調査が行われたが、そこでも同じような結果を得た。超勤勉で努力家だと、他国からも自国からも思われていた日本人と韓国人は、むしろ相対的に規範意識が弱く、気まぐれな性格と出たそうだ。逆に、誠実性や規範意識はエチオピアとコンゴの住民がトップレベルだったという。

内気なラテンアメリカ人、仕事嫌いのアジア人、規律正しいアフリカ人。これはわれわれだけではなく、調査に当たった研究者にとっても直感に反する結果だったようだ。ことほどさように、国民性のステレオタイプはひとつの幻想である可能性が高い。少なくとも現在までの経験的研究では、あまり根拠がないようである。

では、しょうさんのご質問の日独の労働時間の違いはどう説明すべきか。これはまたの機会にしよう。まつこから「スクロールしないと読めないような長文はだめ」となんども言われているので・・・。みなさん、よい日曜日を!

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コメント

うめぞう様

ご丁寧に考察いただき感激です!

「幸福は伝染する」「心が寒くならないように」の記事でも思いましたが、世界ではいろいろな研究調査がおこなわれているのですね。とても興味深いです。
また続きを楽しみにしています。

コメント有難うございます。
しばらく、まつこがごぶさたしていますが、今後ともどうぞ宜しくお願いします。

突然失礼致します。
通りすがりのものですが、上記に述べられているバルチモアの国立エージング研究所が行った実験とシュミット教授が行った実験の記事などが書いてある参考文献を教えてもらいたいです。。
よろしくおねがいします!

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