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2008年11月27日 (木)

びっくりぎょうてん目がテンテン

まつこです。

四六時中ぴったり一緒にいる仲の良い女同士二人。その片方だけが恋に落ちたら、女の子二人の友情には微妙な変化が起きる・・・。シェイクスピアの『お気に召すまま』(As You Like It)にはそんな状況が出てきます。

オーランドーに恋をしたロザリンドは、アーデンの森の中で自分を称える詩が木々の枝にかけられているのを見つけます。木の幹にも誰かが"Rosalind"という名前を彫りこんでいます。「もしかしたらあの人がこの恋の詩を書いたのかしら・・・」と内心は期待しながらも、確証の持てないロザリンドは「いったい誰かしら?」と親友シーリアに問いかけます。

Photo[アーデンの森(実は信州霧ヶ峰の写真です)」

恋する女の子は欲張りで、なおかつ慎重です。うすうす気がついていても、自分の口から「オーランドー」という名前は口に出せません。こんなときこそ親友に、恋の証人として「オーランドはあなたのことが好きなのよ」とはっきり言ってほしいのです。

「男の人よ」「あなたがあげたネックレスを首にしているあの人よ」と、そこまで言っても、それでも「誰かしら、教えて」とロザリンドはしつこく聞き続けます。じらすシーリア、せがむロザリンド。ロザリンドは頬を赤らめ、わかっているくせにどうしてもオーランドという名前を自分からは口にしようとしません。いささか呆れはてたシーリアは、次のように言ってからかいます。

O wonderful, wonderful, and most wonderful wonderful, and yet again wonderful, and after that out of all hooping!(第3幕第2場)

自分のほうから決定的な名前を言い出そうとはしない女心。よくもまあそんなにシラを切り続けられるわねえと、シーリアはなかば感心し、なかば憮然とするわけです。

さてこの"wonderful"の連発はどう訳したらいいでしょう?授業中に学生から出てきた名(迷)訳のひとつは「びっくりぎょうてん目がテンテン。」なかなかうまいですね。同じ言葉を繰り返す原文の面白さを、「テン」という音の繰り返しで表現しています。

聞いてみたら年の離れた小学生の妹がいて、その子の通う小学校ではやっている言葉だそうです。子供は言語感覚とユーモアのセンスの鋭さで、ときどきとても面白い言葉を生みだします。

この表現、我が家でもしばしば使えそうです。洗濯機から出てきた6足のうめぞうの靴下のうち、どれ一つとして正しい組み合わせのペアがなかった時など、まさに「びっくりぎょうてん目がテンテン」です。

追記:松岡和子さんの翻訳お気に召すまま−シェイクスピア全集 15 (15) では、上記のセリフはこんなふうに訳されています。

「ああ、驚いた、驚いた、驚きすぎるくらい驚いた、それでもまだ足りないくらい驚いて、開いた口がふさがらない。」

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